株式会社ジオテックホールディングス

1.事業所の概要、障害者雇用の背景と経緯

(1)事業所の概要

株式会社ジオテックホールディングスは、平成4(1992)年8月に土木建設資材の卸売業として宮崎市内で創業した。主力商品は、コンクリートを使わずに河川や道路等の構造物を構築する特殊な製品である。

例えば、電化製品の保護材に使用されている発泡スチロールで作った道路の路盤材料や土を垂直に積み上げることができる樹脂製のグリッド(網)製品などがある。使用されている場所は、高速道路や国道・地方道であったり、河川、池、沼などの護岸であったりする。土木建設資材の卸売業でありながら、土木構造物の設計技術サービスができる体制を敷いているところが大きな特徴と言える。

平成12(2000)年から戸建住宅の販売、平成20(2008)年から墓石販売に進出し事業を拡大している。住宅と墓石の販売は、価格競争と一線を画した高品質・高規格商品に特化したビジネスを展開しており、「住まいとインフラ整備を中心としたトータルのサービスをお届けする。」をモットーに事業を展開している。

従業員は、20代から60代の各年代層の社員で構成され、平均年齢が30代後半と比較的若く明るくて活気のある社風である。


《経営理念》

経営理念は、「創意と工夫によって、お客様と社会に貢献出来る企業を実現し、社員皆で幸せになろう。」である。

そして、次の3つの基本理念を掲げている。

  安心・安全・豊かさの視点で、お客様と社会に喜ばれるインフラ整備と住まい作りに取り組みます。
  仕入れ先や協力会社を大切にして共に繁栄します。
  社員が幸せを実現出来る経営をします。

《会社経営の考え方》

また、会社経営は次の2つの考えに立って、経営指針を作成し、活動している。

  会社は、生まれも、育った環境も、年齢も、性格も、能力も、夢や、目的や、価値観の違う人たちが集まった集団であり、経営者や社員の立場に関係なく全ての人が、自己実現でき、楽しくて充実した人生を得ることができる環境やチャンスを提供できることに存在価値がある。
  仕事とは、社会や周りの人々のために役立つ行為であり、社会や周りの人々とは社員・経営者、部下・上司・お客様・取引先・会社に出入りする全ての人や地域を指す。

(2)障害者雇用の背景・経緯

以前、自社は社員の楽しそうな笑い声が聞こえる活気のある楽しい会社であると思っていた。ところが数年前のある日、外出先から事務所に帰った折りに、いつもと変わらぬ社員の楽しそうな笑い声がなぜか「異常」に思えた。

会社は地域に根ざし地域と共に発展していかなければいけないと思っており、そんな会社であると自信を持って経営していたのだが、この日はそうでないことに気付いたのである。地域社会には、障害のない人や何らかの障害がある人がいて、優位的立場や弱者的立場の人たちが共に助け合いながら暮らしている。

ところが、自社は若くて元気な障害のない人だけが働いている。障害のない人だけの組織で仕事をしているこの社員が、地域で、お互いの違いを理解し、認め合い、共に生きることができる社会性を身につけることができるだろうか、真の地域貢献ができるだろうかと考えたら背筋がぞっとする思いがした。

そこで、地域と同じように、いろんな違いを持った人が働く職場にしよう。職場を通じてもっと地域との関わりを深めて行こうと考えるようになり、障害者雇用に取り組むことになった。障害者雇用に取り組んで3年、現在は社員35名の中に3名の何らかの障害がある人が一緒に働いている。

では、この3名の雇い入れまでの経緯を紹介する。


①  Aさんの雇用

最初に入社したのは38歳の知的障害者で、社会人になってから初めて会社に勤めることになった女性である(以下「Aさん」という。)。

Aさんを雇用することとなったきっかけは、当社が加盟している事業主団体の事務局から障害者雇用の話を持ちかけられ、市内の障害者福祉施設を紹介されたことからである。それから障害者福祉施設を訪問した後に施設の園外実習として3名の障害者を1週間から2週間受入れ、その3名のうち実際に採用することとなったのがAさんである。Aさんの採用にあたり、ハローワークの指導も受けトライアル雇用制度を活用することとなった。

正式な雇用となってからも、障害者福祉施設と本人との関係は継続され、施設の職員が定期的に訪問し、面談を行い、指導に当たってくれた。また、会社の相談にも応じて頂いたので、トラブルもなく社員の受け入れもスムーズにいった。このことが二人目・三人目の雇用に取り組む自信と安心感につながったように思う。また、Aさんに対しては、細かな状況把握に努め、できる仕事を徐々に増やしていき、本人に過大な負荷がかからないよう仕事の内容と量を調整していった。


②  Bさんの雇用

二人目は、Aさんを雇用してからしばらく経って、知人から採用をお願いされた女性である(以下「Bさん」という)。一人目の雇用の経験もありすぐに採用を決めた。

Bさんは60代の人で、脳梗塞で倒れたが、早期発見、早期治療により一命は取り留めた。しかし足と手に障害が残った。スムーズに歩けないことと、手が麻痺して文字をスムーズに書けなくなった。手足に障害が残った彼女に対し家族は一緒に暮らそうと申し出たが、彼女は「まだ自分一人で生きていきたい」と申し出を断り、働き口を探していた。

彼女の「障害があっても働きたい」という思いが強かったので、その思いに動かされるように採用を決断した。何事にもスローな彼女の言動は、厳しい経済環境の中で働いている社員達の心のオアシスになる役割を果たしてもらっている。


③  Cさんの雇用

三人目の雇用は、宮崎市の自立支援協議会が開催した「障がいのある方の「働きたい」を考え合う会」に参加した時に発達障害がある人に出会ったことがきっかけとなった。

見た目には障害があるように見えない人も、雇用する企業が少なく、働きたくても働けない人がほとんどであると知ったのである。また、発達障害がある人の雇用は難しい選択であるとも聞いた。

そこで、みやざき障害者就業・生活支援センターに発達障害者の採用について相談したところ、宮崎障害者職業センターのジョブコーチ支援を紹介され、職業センターを訪問することなった。そして、職業センターの発達障害者支援カリキュラム受講中のCさんの面接を行い、4日間の職場体験実習を経て採用に至っている。採用後は、職業センターのジョブコーチの細かな支援指導を受けることができた。

Cさんの従事する作業は、新築住宅現場の清掃と整理である。作業場所がその都度変わるが、現場担当者には障害の知識のある者を配置し、ほぼマンツーマンで作業を行うなど、具体的な指示が出しやすい状況をつくりCさんの不安を払拭している。その他、毎日作業日誌を作って、現場担当者だけでなく社長である私もCさんの仕事の状況を確認できるようにしている。また、社員全員にiPadを配付しており、各社員からの状況報告にはiPadを利用している。このことはパソコン操作を得意とするCさんにとってモチベーションを高く持って仕事に取り組む要因となっている。

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