西川農水相が代表を務める自民党支部への寄付が、疑惑を招いている。

 寄付をしたのは、環太平洋経済連携協定(TPP)で焦点になっている砂糖の業界団体の関連企業だ。西川氏は「違法性はないが、農水大臣の職責に鑑み、いささかも疑問を持たれないよう返金した」という。

 この説明は素直にうなずけるものではない。違法性がないならばあわてて返金する必要はないし、返金しなければならない献金なら、そもそも受け取るべきではなかった。

 野党はきょうからの衆院予算委員会でこの問題を取り上げるという。納得いく説明をしてもらわなければならない。

 問題になっているのは、「精糖工業会」の関連会社「精糖工業会館」から自民党栃木県第2選挙区支部への100万円の寄付。政府がTPP交渉に初めて参加する直前の、2013年7月のことだ。

 砂糖の原料は、政府がTPPで関税撤廃の例外とする「重要5項目」に含まれている。問題の寄付と同月にあった参院選前に発表された党の総合政策集には、5項目を聖域とし、それが確保されなければ「脱退も辞さない」と明記されている。

 当時、自民党のTPP対策委員長だった西川氏は農業団体などに「聖域は守る」と訴え、政府交渉団の「監視役」として海外にも同行していた。こうした立場の政治家への寄付である。交渉に圧力をかける意図を疑われても仕方がない。

 精糖工業会はまた、13年3月に農水省所管の事業で13億円の補助金を受けることが決まっていた。政治資金規正法は、国の補助金の決定通知から1年間の政治献金を禁じている。

 西川氏が「違法性はない」とするのは「工業会と会館は別法人」という理由からだが、双方の役員は重なり、事務所も同じビルにある。法の抜け穴をくぐったということではないのか。

 腐敗を招きやすい企業・団体献金をなくしていこうとの狙いで設けられたのが年間約320億円の政党助成制度だ。だが、20年たっても企業・団体献金の見直しは進んでいない。

 政治家が資金管理団体や政党支部など複数の「財布」を持ち、資金の流れが見えにくい仕組みも温存されている。

 問題が発覚するたびに政治家が理屈にあわぬ釈明を繰り返す。こんなことを続けていては、政治は信頼を失うばかりだ。「改革」を志向する政権ならば、こちらにも本腰を入れてみたらどうか。