謝罪するほどに日本を糾弾
「卑日」の動機が「反日」とは大きく異なることは分かりました。では、日本にとってはどう違うのでしょう。
鈴置:まず「卑日」は「反日」以上に執拗になります。なぜなら「反日」をやっている時は、どこかに「目上の日本」への恐れがあった。だから日本が謝れば一時的には収まった。
しかし「卑日」は日本が力を失ったとの認識が前提です。韓国では弱い者いじめには限界がありません。日本が謝ればますます「卑日」に力を入れるでしょう。
もちろん「セウォル号」事件のように「反日」時代なら日本に八つ当たりしたものが、「卑日」時代にはそうならないケースもあります。
しかし、総体的には「卑日」の方がネタの数が多いのです。「反日」は教科書の改定とか、日本の大臣の発言とか何かしらのニュースが必要でした。しかし、「卑日」は日本の存在そのものを否定するものです。何でもネタにできるのです。
次に「反日」はある程度コントロールできましたが、「卑日」はそうはいかないことに留意すべきです。「反日」は日本政府に何かを修正させるのが目的でした。だから韓国政府が表に出てきて、政府同士で話し合えたのです。
一方、「卑日」は修正要求ではなく糾弾です。韓国政府とは関係なしに――裏では関係しているのでしょうが、建前は――普通の韓国人が世界で繰り広げるものです。日本政府の対応ははるかに複雑で手間のかかるものになります。
アベの米議会演説を阻止
複雑で手間、ですか。
鈴置:例えば、安倍晋三首相の米議会での演説を阻止する運動が始まりました。以下は、聯合ニュースの「在米韓国人団体、アベの米上下院合同演説にブレーキ」(2月14日、韓国語)の要旨です。
- 4月末から5月初めにかけて安倍首相が訪米し、その際に上下両院で演説する可能性がある。各州の在米韓国人団体は力を合わせ、これに反対する運動を展開する。
- これは初めての試みであるが、米議会の意思決定に少なくない影響を及ぼすと見られる。同団体は「安倍首相の米議会演説は日本の戦犯イメージを和らげ、明確な謝罪や責任を認めない日本に免罪符を与えるものだ」と言っている。
仮にこうした問題について、日本政府が韓国政府に何か協議を申し入れても「韓国政府とは関係ないことだ」と突っぱねられて終わるでしょう。
人民元の傘に入った
日本はどうすればいいのでしょうか。
鈴置:まず、韓国が常に日本の足を引っ張る国になったことを認識すべきです。「困ると日本に泣きついてくる国」からはとっくに卒業しているのです。
国力もついたし、外交的にも日本や米国から離れつつあります。通貨スワップも日本ではなく、中国を頼みにしているではありませんか。韓国は「通貨同盟」の面では人民元の傘下に入ったのです。
これからは中国の力も借りて「なめるなよ」と、さらに強気に出てくるでしょう。「河野談話」のように「とにかく謝っておく」式の対応は効きませんし、これまで以上に問題を大きくします。
韓国は「反日」をやっても時間が経つと戻ってきた国でした。日本には一目置いていたし、海洋勢力側の国だったからです。しかしもう、それは昔の話。韓国人は20世紀までの韓国人ではないのです。