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卑屈だった人こそ日本を見下す

すべての韓国人が「卑日」行動に出ているわけでもないでしょう。

鈴置:もちろんです。積極的な行動に出るのは一部の人です。また、交流サイト(SNS)での普通の韓国人の会話を見ても「日本に追いついた」「日本を追い越した」といった自らを誇り合う書き込みが溢れる中に「そんなにいい気にならない方がいい」との冷静な意見も時々、見られます。

 現代経済研究院が「2016年には韓国の1人当たりGDPが日本を追い越す」と2014年12月22日に発表しました。「2015年 国内トレンド 10+1」(韓国語)でです。

 このニュースに接し大喜びする人が多かったのですが、SNSに「韓国人は年中そんなことを言っているけれど、実現したためしはない」と昔のノリで書く人も少しですがいました。

 私の取材先でいうと昔、日本に異様に卑屈な姿勢を見せていた人が、今になって日本を見下すケースが多いのです。

 反対に、日本を淡々と見ていた人は――例えば「日本の方が優れた点は多いが、うらやんでも意味はない。近代化を始めた時点が異なるのだから。我々は日本人以上に努力するしかない」と語っていた人は、少子高齢化に日本がもがく姿を見ても馬鹿にしたりはしません。むしろ対策を熱心に聞いてきます。

「卑日」も国教に

そうした冷静な人の意見は韓国の外交に反映されないのですか。

鈴置:されません。「反日」もそう言われたものですが「卑日」も宗教――国家宗教なのです。「調子に乗らない方がいい」なんて意見は大声では語れないのです。韓国人なら、教義通りに日本を卑しめるのが当然の義務と見なされるのです。

 特に今、韓国は「慰安婦」を武器に、国を挙げて日本と外交戦争をしているのです。「アベの日本は誤った道を突き進んでいる」と言わなければ、利敵行為」と批判されてしまうでしょう。

 国教に採用された「卑日」を批判するのに本名は明かせません。趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコム(韓国語)で「韓国の行き過ぎた反日」を毎日のように批判するヴァンダービルド氏も、終わりのない「反日」をきれいな日本語で解き明かす「シンシアリーのブログ」の筆者も皆、匿名なのです。

 ヴァンダービルド氏らはしばしば「お前は日本人か」「韓国から出ていけ」と攻撃を受けています。こんな雰囲気の下では、多数の読者が必要な商業メディアは「卑日をやめよう」などと、とても主張できません。

 趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコム(韓国語)が韓国のメディアでほぼ唯一、「卑日」批判を掲載できるのも、商売抜きで運営しているからです。


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