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韓国をなめるなよ

「上から目線」はその頃から始まったということですか?

鈴置:ええ、そうです。まず、21世紀に入った頃から、韓国人は自己肯定的になりました。あの、自己への憐憫と卑下が日常的だった韓国人が、がらりと変わったのです。以下は、この時期にソウルに留学していた日本人の話です。

 ある日突然、韓国の友人から前後の脈絡とは関係なしに「もう、日本など怖くないからな」と言われたのだそうです。「韓国は強い国になった。なめるなよ」というわけです。

 1997年の通貨危機を乗り切ったうえ、サムスン電子や現代自動車の快進撃が始まった。日韓が共催した2002年のワールドカップで4位になったこともあったのでしょう。

 2010年前後から、こうした自信が「日本に対する上から目線」に昇華しました。同年の尖閣諸島での中国漁船衝突事件で、当時の菅直人政権は狼狽したあげく、中国の圧力に屈したのです。

 2010年は中国のGDPが日本のそれを追い抜いた年でもあります。韓国人は「日の出の中国」と対比して「経済的にも政治的にも没落する日本」を見限ったのです。

 2011年に東日本大震災が起きました。被災者救済にしろ、原発事故にしろ、またまた菅直人政権は無能ぶりを見せつけました。韓国人でなくとも「日本は大丈夫かな」と思ったことでしょう。

 印象的だったのは、中央日報が震災翌日の3月12日の1面トップに付けた見出し――「日本沈没」です。「やった! 日本がついに落ちていく」と快哉を叫ぶ韓国人の心境を、見事に言い表していました。

我が国を「兄」と呼ぶ日本人

韓国人は上下の意識が強いと言われますが……。

鈴置:韓国人は上下意識が強力なだけではなく、それを露わにするのです。象徴的な記事がありました。国民日報の「鄭総理『日本が我が国を兄の国』と呼ぶのはなぜか」(2015年1月10日、韓国語)です。要約します。

  • 鄭烘原(チョン・ホンウォン)国務総理は「日本人は法制度に関し我々を学ぼうとやってきては『兄の国』と呼ぶ。これほどに多方面で我々が日本よりも先を行っている」と担当記者らを前に述べた。
  • さらに「日本の反韓は、こうした日本の心理的な問題から起因してもいるだろう」と解釈してみせた。

 「韓国が日本よりも優れている」例証として、こともあろうに法制度があげられたのは、鄭烘原首相(当時)が検事出身だからです。

 「兄の国」とは儒教国家である韓国独特の表現です。韓国人を持ちあげるためにこの言葉を使う日本人がいます。少し前までは韓国人も「おだてられているな」と思いながらも相好を崩していた。

 それが今や本気にして「日本人がついに自分を劣った存在と認めたぞ」と韓国人同士でそっくり返るようになったのです。


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