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本当のことを書けない韓国紙

「まるで、韓国のためのスワップであるかのように発言した」と日本の官房長官を批判していますが「韓国のため」ではなかったのですか。

鈴置:もちろん韓国のためです。外貨不足でデフォルト(債務不履行)を起こしかけるのは、いつも韓国なのですから。

 でも韓国ではもう、本当のことが書けなくなっているのです。新聞は「日本からドルを借りるためにスワップ協定を結ぶ」という記事を載せるわけにはいかない。日本が韓国よりも「目下の国」だからです。

 韓国の通貨当局も国民に対しそうは言えません。だからスワップの目的について「日韓双方のために」とか「アジアのために」と説明するよう日本に要求していた。でも「韓国のため」とはっきり言われてしまった。

 そこで韓銀総裁は大いに不快感を表明したうえ、この30億ドルのスワップ枠の延長も日本に頼まなかった――という図式です。

 ちなみに、最後に残った100億ドルのスワップ枠に関しても2014年10月29日に麻生太郎財務相が国会答弁で「韓国から申し出があれば延長を検討する」と述べていました。

 この枠を続けるよう韓国が日本に求めた際も「韓国が望んで延長するわけではない」形式にこだわりました。しかしそれに失敗したので、日韓スワップは完全に終了することになったのです。

「上国」に命綱を預ける

経済的に韓国は通貨スワップを必要としているのですか。

鈴置:少なくとも韓国の通貨当局はそう考えています。なぜなら中国との間に3600億元・64兆ウォン(約580億ドル相当)のスワップがあります。2014年10月に期限が切れる予定でしたが、3年間延長してもらっています。

 日本とのスワップでは、いざという時にウォンを担保に米ドルを貸してもらえました。しかし韓国が結ぶ日本以外との2国間スワップはすべて相手国の通貨を貸してもらう約束です。今後は緊急時に決済通貨であるドルを即刻入手することが可能かどうか、疑問が持たれています。

 また、中国、豪州やマレーシアなどと韓国が結ぶ2国間スワップの総額は90.5兆ウォン相当。何と70%を中国とのスワップが占めます。韓国は金融の命綱を中国に預けたのです(「日本の無力化狙う韓国の『衛星外交』」参照)。

 中国は「目上の国」なので、身をゆだねても恥ずかしくないということなのでしょう。余談ですが、朝鮮朝の人々は宗主国だった明や清を、文字通り「上国」と呼んでいました。

鈴置さんの近未来小説『朝鮮半島201Z年』みたいになってきましたね。この小説では、韓国が日本とのスワップを拒否したあげく、通貨危機に陥ることになっていますが。

鈴置:2010年に書いた小説です。当時から「上から目線」が始まっていたので、いずれ「日本のスワップなど要らない」と韓国人が言い出すことは容易に予測できたのです。

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