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 世界でも有名になった韓国の「反日」。だが実は「卑日」と呼ぶべきものに変容している。これを見落とすと、日本は外交を誤る。

セウォル号と反日

前回の「慰安婦を無視されたら打つ手がない」の最後のくだりに「反日」は「卑日」に変わった、との指摘がありました。そこを詳しく聞きたいのです。

鈴置:韓国の日本に対する異様な行動は、表面的には「相も変わらず」に見えます。ただよく見ると、それを突き動かす動機ががらりと変わっているのです。

 いい例が、2014年4月に起きた旅客船「セウォル号」沈没事故です。事故の直後に「また、これをネタに反日をやってきますかねえ」と、周囲の日本人から聞かれました。

ええ、多くの人がそう考えたと思います。

鈴置:「セウォル号」の船体は、日本の海運会社が廃船にしたフェリーを韓国の会社が買って使っていたものでした。

 そこで韓国人が「粗悪な中古船を日本が売りつけた」と責任転嫁してくるだろうな、と日本人は思ったのです。でも、大方の予想に反して、韓国紙にはそんな記事は一切出ませんでした。

日本の中古船ばかり

確かにそうですね。「日本のせいだ」と文句を言う韓国人にはまだ、出会っていません。反日が生きがいだったあの韓国の人々は、いったいどこへ行ったのでしょう。

鈴置:韓国人はもう「自分たちが日本のお古ばかりを使っている」ことを話題にしたくなかったのだと思います。「セウォル号」だけではありません。韓国紙によると、韓国で運航中のフェリーはほぼすべてが日本の中古だそうです。

 「日本を超えた!」とのムードが今の韓国を支配しています。せっかく「韓国は日本よりも目上の国になった」と小躍りしていたのに「目下の国のお古ばかりだった」事実が露見してしまった。この話題にはなるべく触れたくない、というのが韓国の気分なのです。

 もちろん、この船の来歴はほぼすべての新聞で報じられました。ただ、それは「重心が上がる改造をした」と、事故を起こした韓国の海運会社の責任を追及する文脈の中で「日本で運航していた船を輸入した後に」と、さらりと触れられたぐらいでした。

 韓国紙で1本だけ「なぜ、日本からフェリーを輸入するのか」を分析した記事を発見しました。しかしこれも「造船世界1位の我が国は、もっと大きなタンカーや貨物船を作るのに集中しているからだ」と説く内容でした。

 要は「日本から船を買ったからといって、たかがフェリーに過ぎない。『造船王国、韓国』の名に傷が付いたわけではない」との国威発揚記事でした。

 今や何があっても「我が国は日本よりも上」というノリで記事を書かなくてはいけないのだなあ、と同業者として感心したものです。

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