アニメ・マンガ

作者は現役女子大生!? 一風変わった「あの世」を描くマンガ家の素顔 【『保留荘の奴ら』ココなし。さんインタビュー】

マンガ家を目指したきっかけは高校2年

――ところで、ココなし。さんは何歳くらいからマンガ家になろうと思い始めたのですか?

ココなし。「絵を描くのは幼稚園くらいから好きでした。それで漠然とではありますが、小学生くらいからマンガ家になりたいなぁと。コマ割りのマンガも作ったりして。でも、本当のきっかけは高校二年の時のある出来事でした」

――な、何があったのでしょうか!?

ココなし。「マンガ家を何となく目指していたので、高校はマンガの技術を学べる専門校に行きました。2年生の時にキャンパスの移動があって、そこで初めて同い年のマンガ家を目指す同志たちに出会ったんです。で、すぐに友だちになったのですが、その人たちの描くいたずら書きが“ぬぉぉおおおお! わたしが一生かかっても追いつけないレベルかもぉぉぉおお!”というくらい、化け物並みに上手だったんですよ。それまでは、高校生でこれだけ描ければ上出来でしょ、と思っていたので、自信がガラガラと崩れ去りました。少し落ち込んだりしましたが、こうなったら、友だちから吸収しよう! と前向きに考えて、良い所を吸収していきました。それから、なんだかんだであまり作品を読んでこなかったので、いろいろなマンガを読んで勉強するように心がけました」

――その出会いが、今のココなし。さんにつながるわけですね。

ココなし。「なので、感謝しても感謝しきれないですねぇ。ほんと、大好きですよ。そんなこと、なかなか面と向かっては言えませんけど」

――では、この記事で書いてしまいましょう(笑)

ココなし。「えええええ!?」

より共感を得られる作品に――大学進学のわけ

――さて、ここからが、読者の知りたいところだと思うのですが、大学についてお聞きしたいと思います。専門校にせっかく行かれたのに、なぜ大学進学を決めたのですか。

ココなし。「心理学を学びたいと思って。ちょっと特殊な高校だったため、普通の学校生活の経験がない、人生経験がない、社会人経験もない、のナイナイ尽くしではリアリティのあるマンガを描けません。それでせめて心理学を学んで登場人物の心情を描ければ、と考えたんです。それに、時代背景の描写でも大学生活は役立っています。キャラの『過去編』で描きたい時代について知っている先生をゼミ経由で紹介してもらったりして、お知恵を借りたりしています」

――過去編はかなりシリアスですし、共感できる所も多いですよね。

ココなし。「この作品は“あの世”というリアリティのない場所が舞台ですが、彼らにも生前があったわけで、そこでの営みは“リアル”だったわけです。それぞれが殺人を犯していますが、そこに至るまでの心情はリアルになるように心がけています。もちろん、殺人はどんなことがあっても許されるわけではありません。でもモデルとなった人たちはそうしてしまった、そうせざるを得なかった…そういう心情をリアルに描く必要があると考えました。描く際、周りの人に“これこれのことがあったとしたら、どう感じる?”と意見を聞いたりもしていますが、共感してもらえるとしたら、やはり大学で学んだことが大きいのかな、と思います」

――しかし、大学に通いながら制作するのは大変ではないですか?

ココなし。「正直大変でした。特に、書籍化が決まってからは、ちょっと学業がおろそかになりがちでしたね。打ち合わせのために何度か出版社に足を運んだり、原稿に修正を加えたり、連載の原稿も描いたり…。ちょうどシリアスな“過去編”が始まったところだったので、精神的にやっていけるかどうかが一番不安でした」

――乗り切れましたね。

ココなし。「これも応援してくださった読者の方々や、支えてくれた編集さんや周りの人たちのお陰です」

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