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【社会】

夫婦別姓 女性再婚6カ月禁止 民法規定 憲法判断へ

2015年2月19日 07時08分

 夫婦別姓を認めず、離婚後の再婚を女性のみ六カ月間禁じる現行の民法の規定が、法の下の平等を定めた憲法に反するかどうかが争われた二件の訴訟について、最高裁第三小法廷は十八日、いずれも十五人の裁判官全員で構成する最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)で審理することを決めた。大法廷は判決で初の憲法判断を示すとみられる。違憲と判断されれば、明治時代から引き継がれてきた民法の規定が見直される可能性が出てきた。

 夫婦別姓をめぐる訴訟は、東京都、富山県、京都府在住の男女五人が計六百万円の国家賠償を求め提訴。原告側は「夫婦は結婚の際に夫か妻のどちらかの姓を名乗る」とした民法七五〇条の規定は、両性の平等や結婚の自由、個人の尊厳を保障する憲法に違反するとして、「国は正当な理由なく長期にわたって法改正を怠った」と主張した。

 一審東京地裁は「結婚後、夫婦が別姓を名乗る権利は憲法上、保障されていない」として、この規定を合憲と判断。夫婦別姓を可能にする法改正をしてこなかった国会の対応についても「直ちに違法とはいえない」とし、原告側の請求を棄却した。二審東京高裁も一審と同様、規定を合憲と認め、原告が敗訴した。

 再婚禁止訴訟は、岡山県総社(そうじゃ)市の女性が国に百六十五万円の損害賠償を求め提訴した。民法は、出産時期が「離婚後三百日以内なら前夫の子」「婚姻後二百日経過していれば現夫の子」と推定すると規定。重複期間が生じないよう、女性に限り離婚後六カ月の再婚禁止期間を設けている。

 女性側は「重複回避のためなら約百日で足り、女性に必要以上の制約を課している」と主張したが、一審岡山地裁は「重複を回避し、紛争の発生を未然に防ぐという立法趣旨には合理性が認められる」と判断し、女性の請求を棄却。二審広島高裁岡山支部も支持した。

◆家族の多様化に対応遅れ

 明治時代の一八九八年、古くからの家制度に根差して成立した民法は、戦後を経て現在に至るまで、当時の規定が多く残る。成立から百十七年経過し、家族関係の多様化に適応できず「時代遅れ」との批判も強いが、保守系議員を中心に「家族の絆が弱まる」という声も強く、国会や裁判所はこれまで真正面から向き合うことを避けてきた。

 女性や子どもの差別規定に対し、国連は勧告を繰り返してきた。これを受け、法相の諮問機関である法制審議会(法制審)は一九九六年、民法改正案を答申。夫婦別姓の導入や再婚禁止期間の短縮、結婚していない男女間に生まれた「婚外子」の相続差別解消などを盛り込んだ。

 このうち婚外子の相続差別規定は、最高裁大法廷が二〇一三年に違憲と判断。子どもの人権に直結する規定はようやく改正されたが、女性の「不平等」規定は放置されてきた。

 法制審の答申がたなざらしとなっている大きな要因は、「伝統的家族観が崩れる」といった自民党など保守系議員の反発だ。自民党は一二年にまとめた憲法改正草案に「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として尊重される」という条文を新設し、「旧来の婚姻や夫婦が前提ではないか」と警戒の声も上がる。

 棚村(たなむら)政行・早稲田大教授(家族法)は「成立から百二十年近くたち、家族関係が変化している中、民法が時代や社会に合わなくなっている」と指摘。「大法廷を開くからには、最高裁は下級審の合憲判断を見直す可能性が高い。国会の法改正を促す判決が望まれる」と話した。 (沢田敦)

(東京新聞)

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