ドワンゴ大改革の鍵は、インフラと女子マネージャー。

「おおっぴらに書くと炎上しそうなことも、ケイクスでなら言える」。ケイクス代表・加藤貞顕とのトークセッションで飛び出した、川上量生さんのこの一言。ということで、ドワンゴ代表取締役会長、スタジオジブリ所属、アニメーション製作のカラー取締役、KADOKAWA取締役と日本のメディア界で幾つもの重要な役割を持つ川上さんが、ここでしかできない貴重なトークを繰り広げます。第1回は、川上さんが今ドワンゴで何をしているのかという、基本の話。ドワンゴのある問題に対して、川上さんが実行した、驚きの施策とは。

CTOとして、組織に大鉈を振るう川上会長

川上量生(以下、川上) この連載はせっかくだから、ケイクスでしか載せられないような内容にしたいんですよね。

— おお、それはうれしいですね。

川上 他では話していないこと……そうだ、僕がちょうど1年前くらいにドワンゴのCTO(最高技術責任者)に就任した話をしましょうか。

— 川上さんはいま、ドワンゴの代表取締役会長であり、CTOでもあるんですか。

川上 そうなんです。僕がCTOにならなきゃ解決できない問題がありまして。

— どんな問題ですか?

川上 大きかったのはインフラの問題ですね。ドワンゴって、基本的にインフラをシステム開発者にさわらせない会社だったんです。さわらせないことで、セキュリティや安定運用性を確保するというポリシーをもっていました。

— インフラというと、ニコニコ動画などのデータを置くサーバーの部分ですか?

川上 はい。そこにシステム開発者はタッチできない。サーバーが何台あるのかも教えてもらえないという状態でした。サーバーを運用している部署が、ガチガチにブロックしてたんですよ。

— 立ち上げからずっとそうだったんですか。それはすごいですね。

川上 会社としては、それがちゃんとした運用だと思ってやっていたんですけど、僕個人としては間違ってると思っていたんですよね。だってうちは、サーバー技術の会社でしょ。ユーザーに動画を快適に観てもらうためには、そこが一番重要です。だから、コードを書く開発者がインフラの設計までできない環境は、本来あるべき姿じゃない。

— これまで、運営とシステム構築が分かれていたんですね。

川上 完全に分かれていました。それはエンジニアの執行部の判断ミスです。でも変えようと思っても、もうそれで組織が成り立っていたし、ヒエラルキーのなかにいる人にはしがらみもあってなかなか変えられない。大鉈を振るう必要があったので、僕がCTOになって全面的に改革することになりました。

— なるほど。

川上 つまり、このインフラ改革は、技術力ではなく権限が必要だったんです。権限と決断と覚悟が必要だった。だから、僕が一時的にCTOになったほうがいいなと思ったんですよね。

— 技術というよりはマネジメントの問題ですもんね。

川上 それと、開発体制でもう一つ、問題が起きてたんです。うちの会社って、ほとんどエンジニアが辞めなかったんですけど、1年半くらい前に、けっこう人が辞めた時期があったんですよ。これまであまりなかったことだから、社内のムードがやっぱり少し悪くなったんですよね。

— 同僚が辞めるというのは、少なからずショックですからね。

川上 本当は大したことないんですけどね(笑)。僕なんかは、むしろ社員が辞めないことに対して不満を持っていたくらいですよ。

— そうなんですか。

川上 だって、何割かは入れ替わっていったほうが、組織としてはいいじゃないですか。

— たしかに。流動性って、大事ですよね。

川上 でもそのときは、さすがに開発部の雰囲気が暗くなってたんです。僕はエンジニアたちを明るくしなきゃいけないと思ったんですよね。それでCTOになるときに、全エンジニアを集めて、みんなの前で公約しました。

就業規則をゆるくしたら、エンジニアが朝来なくなった

— どんな公約ですか?

川上 ひとつは、先に言ったインフラ改革。これには、すでに現状に対してエンジニアから不満が出ていたので、強引にでも改善していくことを約束しました。そしてもう一つが、女子マネ弁当です。

— 女子マネ弁当!(笑)ふたつのギャップがすごいんですけど。女子マネ弁当※1は、ネットでも話題になっていました。毎朝、女子マネージャーが弁当を配ってくれるという、画期的な制度ですよね。
※1 女子マネ弁当:ねとらぼ|ドワンゴ「助けて! エンジニアが朝出社しないの!」→ 女子マネージャーが弁当を手渡してくれる「女子マネ弁当」システム導入で生活習慣改善へ

川上 そういうおもしろい施策が必要だと思ったんです。あの企画、ずっと前からアイデアはあったんですよ。1年に1回くらいは会議で「やりたいね」って浮上するけど、実行されずに消えていくネタだった。それを、今こそやるべきだ! と思って、公約したんです(笑)。

— 女子マネ弁当は昨年の9月からスタートしたんですよね。

川上 その前に、5月から6月にかけて一度テストしています。そのときは、メイド姿で配ってくれたんですけど、プラットフォーム事業本部本部長代行の伴龍一郎くんが、「女子マネージャーなのにメイド服はおかしいだろう」と異を唱えて、体操服になりました。なんか、こだわりがあるらしくて(笑)。制度設計したのは僕ですが、細かいところまで実装したのはその伴くんです。

— 女子マネージャーさんたちは、どこから来てもらってるんですか?

川上 うちの関連会社「MAGES.」の社長に志倉千代丸という男がいて、彼が「王立アフィリア魔法学院」系列のメイドカフェなどをプロデュースしてるんですよ。彼に女子マネを手配してほしいってお願いしたら、メイドカフェのOGが来てくれることになりました。

— 写真を見ると、この子たちすごく慣れてますよね(笑)。

川上 プロですよ。オタクは声を出してコミュニケーションするのが苦手だってわかってるから、昨年のテスト導入の時には「◯◯さんへ」とか書いた手書きのメッセージカードを手渡してくれたんです。もう、すばらしいですよね。

— 気づかいがすごい! これはエンジニア限定でやっているんですか?

川上 エンジニア限定です。だってこれ、CTOとしての企画なので(笑)。エンジニアの士気を上げるためにやっています。うちの会社、エンジニアが朝ちゃんと出社しないんですよ。営業職や企画職の社員はちゃんと来ているのに。

— エンジニアはそんなに朝来ないんですか。

川上 だいたいみんな午後1時とか2時に来て、午前中に来ているのは300人中10人くらいだった(笑)。

ケイクス

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