愛する妻との間に出来た子供。
その小ささとは相反する大きい産声から、命の力強さと父になった喜びを実感した。
「守るべき者が増えた。妻子の為にもしっかり働いて幸せに暮らせるよう頑張らねば。」
そう心に決め、仕事の忙しい時期ではあったが毎日帰りに病院に通い、帰宅後にまた仕事を続けるという日々を何とかこなして乗り切った。
子供が出来た。嬉しい。早く3人で暮らしたい。その想いが働く原動力だった。
ちょっと長めな入院と実家療養を経て妻子が帰ってきた。初めての3人暮らし。
「仕事も家庭も両立するぞ!!」張り切っていた。ただ、張り切り過ぎていたのかもしれない。
夜泣きが続く、泣き止まない。
育児のことは任せろとは言ったものの明日も仕事がある。少しは寝ないと。
産後に高熱が出た。どの病院で検査をしても診断結果は原因不明ばかり。通院と入院が続く。
会社を休んで何度か病院に行ったが、仕事の納期は変わらない。休んだ分は夜や土日に働いた。
突然の退職者のフォローもあり、普通に業務をこなす分にももうキャパシティを超えていた。
当時自分よりも忙しい人が居たことや、業務を任された後でやっぱり無理ですとなると今後に影響が出るのではとの恐れがあり、これ以上強くは言えなかった。
家族が増えたため、月々の出費は増える。
産後は会社を抜けたり休んだりすることが多かったので仕事はこれ以上休めない。
妻子は近くに住んでいる義両親が預かってくれている。
周りに相談したら、大変な時期だろうとは思うけど将来のことも見据えて仕事に勤しむべき。
そんな時、再度妻が体調を崩した為休んで欲しいとの話があったがもう休むことは出来なかった。
・家庭は大事だが、家庭の為にも仕事もこなさないといけないと主張する夫
・家庭の為に仕事を休んで欲しいと主張する妻
当然口論になったが、体調が良くなるまでは実家に居てもらうことにした。
本来であれば一番時間を掛けて家族で過ごしたい時期だが、感情を殺して今すべきことを頑張ろう。
「守るべき者の為に、今は頑張って働かねば。」そう思って働いた。
やっと仕事が落ち着いた時のことだ。
妻も少しずつではあるが体調が良くなってきたようだ。
そろそろ3人で暮らせるんじゃないか?
お互い余裕が無く、ストレスが溜まっていた時期は衝突が多かったけど、今は余裕が出来た。今なら何とかやっていけるんじゃないか?
そんな時だ、妻から別居の話が伝えられた。
理由は、
「一番守って欲しい時に守ってもらえなかったから。」
ショックだった。
守る為、来月以降の費用を稼ぐ為に働いていたつもりだった。
しかし、不確定な未来より、今、この場で困っている妻を助けなかったことは、妻にとっては耐え難いことだったのだと思う。
修復が難しいことを悟ったことから早々に離婚することとなった。
私の考えていた「守るべきものの為に〜」との考えは、すべて自己正当化や自己都合による理由付けであって、家族にとっては虚像以外の何物でもなかったのだ。
結婚生活に不満がなかったわけではない。
確かに妻とは衝突が多かった。
しかし、不満があっても、それでも、家族のことは一番大切だった。
しかし、その家族の為には家を空けて仕事をしなければならない。
休めるものだったら休んでるが、それが叶う状況ではなかった。
どうすればよかったんだろうか?
無理に休んでクビになったりしたら、家族が露頭に迷う恐れがあった。
無理に働いた結果はこの様だ。
ただ、この結末を知っていれば当時は会社を辞めてでも家族と向き合うべきだったと思う。
先週離婚が成立した。
守りたかった者は、もう居ない。
だから、最初から結婚などするべきではなかったのだ。すでに、結婚というのは、一部の天才にだけ許された特権なのだよ。凡人は結婚などするべきではないのだ。
無理に休んでクビになったりしたら、家族が露頭に迷う恐れがあった。 この何気ない一文に日本社会の闇を感じたね。 家族のために会社を休むのは当然のことだし、それが原因でクビ...