個人情報保護法:改正案「原案」本人同意なし転用を撤回

毎日新聞 2015年02月18日 21時12分

 政府は18日、今通常国会に提出する予定の個人情報保護法改正案の「原案」を自民党に示した。購買履歴など個人の行動に関する情報(パーソナルデータ)の利用目的を本人同意なしに変更可能とする仕組みの導入を撤回した。この仕組みは昨年12月に示した「骨子」には盛り込んでいたが、消費者団体の批判を考慮した。一方で、個人情報の利用範囲を限定する現行法の規定を緩和するなど経済団体の要望にも一定の配慮をした。

 骨子では、パーソナルデータを契約当初の目的以外に利用することを本人の同意なしにできるようにするため、データの第三者への提供などをホームぺージで示すなどの条件を示していた。

 これに対し消費者団体からは、消費者保護の観点から「本人が気付かないうちにデータを勝手に利用されかねない」などの批判が出ていた。また「海外の個人情報保護規制に基準が適合しておらず、欧米諸国などとのデータのやり取りが難しくなるおそれがある」との問題点も指摘されていた。こうした批判や指摘を踏まえ、原案では、本人同意なしでの目的外利用の仕組みの導入を撤回した。

 一方、現行法では、個人情報を契約当初の目的以外に利用することができる場合について、本人が同意した利用目的と「相当の関連性」がある場合と規定している。原案では、この文言のうち「相当の」を削除することを盛り込んだ。契約当初の利用目的と大きく離れていない範囲内で、本人の同意なしでの目的外利用を容易にすることが狙い。経済界の意向に配慮した。

 このほか、携帯電話番号や旅券番号などを新たに個人情報として明確に定義するという骨子段階の方針も導入を見送り、新たな個人情報の範囲を指紋データなどに絞った。

 政府は、自民党の了承を得たうえで原案を個人情報保護法改正案とし、国会に提出する方針だ。【本多健、岡礼子】

 ◇長田三紀・全国地域婦人団体連絡協議会事務局次長の話

 本人同意なしの利用目的の変更は多くの事業者や消費者にとって望ましくない規定で、撤回に安心した。消費者は自分の情報が透明性をもった仕組みで守られていることがわからなければ、情報を預けることに消極的になる。ルールを明確にし、同意を得なければならないものは、きちんと同意を得ることが必要だ。

 ◇鈴木正朝・新潟大学教授(情報法)の話

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