社説:岡田氏代表質問 「格差」議論もっと深めよ

毎日新聞 2015年02月17日 02時31分

 安倍晋三首相の施政方針演説に対する各会派の代表質問が始まった。民主党の岡田克也代表は格差問題に重点を置き、再配分の強化を掲げながら首相の見解をただした。

 今国会の主要テーマのひとつと目される格差問題をめぐり、岡田氏が対案を意識しながら議論を提起したことは評価できる。成長戦略や安全保障法制について踏み込んだ議論をするためにも、岡田氏は党の政策の意見集約を急ぐべきだ。

 代表就任後の初質問で岡田氏は日本で相対的貧困率が過去最悪の16%に上昇しているなどのデータを挙げ「格差が近年拡大し、国民の許容範囲を超しているか」と首相の認識を聞いた。税による再分配で格差を縮小すべきだとして、所得税で最高税率を適用する範囲の拡大や、相続税の強化も主張した。

 首相は所得と再分配後の差はおおむね横ばいで推移していると主張した。国民の中流意識はなお強いとする世論調査結果も引き合いに「格差が許容範囲を超している」との見解には同調しなかった。

 さきの施政方針演説で首相は子どもの貧困対策に取り組む方針を強調したが「格差」との表現は用いなかった。格差問題を安倍政権との対立軸にしようとするのが民主党の狙いだろう。一定のスタンスの差は浮かんだが、安倍内閣との見解や政策の差をさらに具体的に示し、議論を深める必要がある。

 岡田氏はさらに経済的に余裕のある高齢者の年金削減や負担増を提起し、首相も低所得者への配慮に向け経済力のある高齢者が相応の負担をするよう取り組んでいると説明した。野党が国民の「痛み」に踏み込めば、実態に即した議論が進めやすくなる。

 一方で物足りなさもあった。安倍内閣の進める成長戦略について岡田氏は法人税減税などを批判したが「民間投資を喚起する」方向性には同調した。それでは同党としてどんな成長ビジョンを描くのか。格差を突くだけでは不十分だ。

 安全保障法制について首相は集団的自衛権行使で想定されるケースとして、中東からの原油輸送路にあたるホルムズ海峡の機雷掃海など2例を挙げ、法整備の実現に意欲を示した。今後の審議で具体的テーマに即して議論を進めるためにも、民主党は意見集約を急がねばなるまい。

 施政方針で「単なる批判の応酬」に自制を求めた首相は岡田氏への答弁の末尾で「それぞれが異なる政策の選択肢を国民に提示することが不可欠だ」と応じた。党首討論という機会もある。国会を建設的議論の場とする責任をとりわけ首相と岡田氏には共有してもらいたい。

最新写真特集