発信箱:平和は作るもの=古本陽荘(政治部)
毎日新聞 2015年02月18日 02時30分
イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)の人質となっていた米国人女性、ケイラ・ミュラーさんの死亡が確認された。26歳の若さだった。激しい内戦の続くシリアで住民の支援活動を行っていて拘束された。
死亡確認後、家族らが記者会見した。幼なじみのエリン・ストリートさんが、ミュラーさんの生前の言葉を泣きながら読み上げた。「平和は祈るものではありません。平和は作るものです」
ISによる日本人人質事件ではシリアに入ったことが問題となった。米国でもミュラーさんがシリアに渡ったことを「自殺行為だ」などと批判する声が出た。しかし、命の保証のない無政府状態に置かれるシリア人の惨状を何とかしたいというミュラーさんの思いに偽りはなかっただろう。
拘束中に家族に宛てた手紙では、「監獄の中でも人は自由になれる。どんな状況でも何か良いことが見つけられる」と記していた。その精神力の強さの裏側に、人道支援への揺るがぬ信念がうかがえた。
リビアでコプト教徒(キリスト教の一派)21人を処刑した映像を公開するなどISによる殺りく行為はとどまるところを知らない。祈るだけではISの蛮行を食い止めることはできない。だが、どうしたら平和を作ることができるか考えても、なかなか答えは見つからない。
ISが日本人2人の殺害を予告する映像を公開してから間もなく1カ月がたつ。日本にいると、平和は空気や水のようなものに感じてしまうが、地球全体はそんなに平和ではない。まず、そのことをよく理解することが平和作りの第一歩になると感じている。