東日本大震災の津波で送迎バスが流されて死亡した宮城県石巻市の私立日和幼稚園の園児4人の遺族が、計約2億6700万円の損害賠償を園側に求めた訴訟は3日、仙台高裁(中西茂裁判長)で和解が成立した。園側が法的責任を認めて謝罪し、計6千万円を支払うなどの内容。
この日の協議後、原告側が公表した。和解内容には「園児らの犠牲を教訓として長く記憶にとどめ、防災対策に生かすべきだ」とする裁判所の考えが明記されたほか、事前の津波対策が不十分だったと園側が認めることも盛り込まれた。
一審・仙台地裁判決は「情報収集義務を怠り、高台の幼稚園から海側にバスを走らせた」などとして園側の過失を認定。計約1億7700万円の支払いを命じ、園側が控訴していた。和解金額は一審判決の賠償額を下回るが、原告側は園側の支払い能力に沿った額だと説明している。
次女の春音ちゃん(当時6)を失った父、西城靖之さん(46)は記者会見し「妥協ではなく、むしろ一審判決より、子供たちをどう守るかということにきちんとした答えが頂けた」と話した。
園側は「それぞれが大きな悲しみと困難を乗り越え、和解に至ったことは貴いことだ」との談話を出した。
原告側の代理人によると、この訴訟は震災の津波犠牲者の遺族が管理者側に損害賠償を求めた訴訟の中で、一審で賠償を命じる判決が出ている唯一のケースとみられる。
一審判決によると、園長は2011年3月11日の震災発生後、園児をバスで帰宅させるよう職員に指示。バスは海沿いに向かい、途中で津波にのまれて園児5人と女性職員1人が犠牲となった。〔共同〕