これまでの放送

2015年2月17日(火)

スマホゲームを手に 街に出る人たち

鈴木
「スマートフォンを使ったゲームがもたらす新たな変化について、黒田アナウンサーです。」

黒田
「ゲームといいますと、家にこもって遊ぶというイメージがありますけれども、今回紹介するのは、『外に出て遊ぶ』オンラインゲームなんです。」

阿部
「外に出て遊ぶというのがポイントですね。」

黒田
「そうなんです。
この特長を生かして、街に出た人たちを呼び込もうと自治体が動き出しています。」

スマホゲームを手に 街に出る人たち

去年(2014年)12月、日比谷公園に集まった5,000人の人たち。
みなさん、スマホを手にしています。





グーグルの社内ベンチャーが開発した無料のゲーム、「Ingress(イングレス)」です。
全世界で1,000万回以上ダウンロードされています。




ゲームの仕組みです。
NHKがある渋谷でゲームを起動してみると…。
GPSによって、自分がいる地図上に「ポータル」と呼ばれる光の柱のようなポイントが表示されます。



それをタッチすると、ポイントの名称と写真が出てきます。





黒田
「くすの木…あれですかね。」

実際にその場所に移動してみます。



その場所に近づくと、初めて「ハック」というボタンが押せるようになります。
ポイントを攻略したことになり、ゲームに役立つアイテムが手に入ります。




こうして、街なかにあるポイントを3点つなぐと、そのエリアが自分の陣地になります。
街の史跡や銅像など、回れば回るほどアイテムが増え、陣地がたくさん手に入るという、達成感が味わえるのです。




ゲームによって、思いがけずにぎわっている場所があります。
神奈川県横須賀市にある無人島、猿島です。
観光客が減る冬にもかかわらず、訪れる人が増えているんです。
東京から来た大学生のグループです。


大学生
「これ(ゲーム)がなかったら、たぶんここには来なかった。」

大学生
「ポータル(ポイント)まで移動して、そこをハックしようと思ってます。」


最初のポイントが見つかりました。

大学生
「このハックっていうボタンが押せるようになった。」

ボタンを押して、ポイント攻略です。


島内にある15か所のポイントをめぐるうちに、この島が、戦時中の要塞として使われていたことがわかってきました。

大学生
「スマホゲームをやることで、おでかけの幅が広がった。」

大学生
「ゲームやることで、ガイドブックをみながらやっているような。
たどるだけですこい楽しかった。」

ゲームをきっかけに、先月(1月)だけで200人以上がこの島を訪れるようになりました。
この猿島のブームに一役買ったのが、横須賀市の商業観光課です。

ゲームのプレーヤーに配るステッカーです。
市のホームページでは市内のポイントをまわることで、効率よく観光できることをPRしています。
市の呼びかけで、ゲームのプレーヤーは、無人島の連絡船の運賃が半額に。
さらに、横須賀名物・海軍カレーの店では…。


カレー店 店長
「携帯ゲームのイングレスをされている方に、やっていますということで携帯を見せていただくと、カレーコロッケのトッピングのサービスをしております。」



横須賀市 商業観光課 古崎絵里子さん
「1人でも2人でも来てくれたらいいなと始めたことだったので、正直驚いています。」

スマホゲームを手に 街に出る人たち

阿部
「ゲームのために外に出た人たちを、観光などに生かしちゃおうという発想ですね。
出てきたゲームのポイントというのは、誰が決めているんですか?」

黒田
「プレーヤーが、見つけた街のシンボルのようなものをゲーム会社に申請して設定されてきたんですね。
日本では47すべての都道府県にポイントがありまして、今も増え続けているんです。」

鈴木
「そうなんですね。
とすると、全国どこでも、横須賀市のような取り組みができそうですよね。」

黒田
「そうなんです。
地方にもチャンスがあるということで、こちら。
ゲームの活用に熱心なのが、岩手県なんですね。
岩手県庁の有志の職員グループが、こんなイベントを企画しました。
全国のプレーヤーに『盛岡に集まっていっしょに楽しもう』と呼びかけました。
果たして人は集まるのでしょうか。」

スマホゲームで 地方に人を呼べるか

冬の間、観光客が伸び悩む盛岡市です。
岩手県庁の有志による「ゲームを活用する研究会」では、少しでも多くの人に来てもらおうと立ち上がりました。

岩手県庁 イングレス活用研究会 保和衛さん
「ゲームをしている最中に…いま白鳥が鳴いています。
ゲームだけじゃなくて、画面もいいんですけど、ちょっと目を移すといいところありますので、そういうところも見てほしいと思います。」



先週、土曜日。
イベントには、朝から次々とプレーヤーが集まりました。
こちらの女性は…。



女性
「千葉から来ました。
ネットで見てすごい楽しそうだったので。
レベルを上げるだけではゲームとしてつまらない、いろんなところに行きたい。
これ(イベント)がきっかけで来ました。」

当初は遠くから盛岡まで来るのか心配されましたが、青森や宮城といった近県、首都圏からも集まりました。
ゲームが始まると、プレーヤーが街に繰り出しました。
その数160人以上。
同じゲームを楽しむ人たちと会えるのも、このイベントの魅力です。


男性
「会って数時間。
初めてあいさつして、協力してます。」



この時期、公園では雪のオブジェが展示されていました。
せっかくの、盛岡ならではの魅力の見せどころなんですが…。
みなさん、ゲームに夢中のようです。



そこで、歩き回っておなかがすいたプレーヤーに用意したのは、盛岡名物の「わんこそば」です。

女性
「100杯食べました!」



店ではゲームの参加者のために、わんこそばの割り引きと、手作りの記念バッジを配ることにしました。





男性
「そばも食べられるし、観光もできるし、一石二鳥か三鳥という感じ。
楽しみながら参加しています。」

女性
「白鳥みたいなのがいたり。
大満足しました。」

みなさん、盛岡を堪能したようです。

岩手県庁 イングレス活用研究会 保和衛さん
「今日はまず第一歩、グー!
盛岡、岩手のこと、寒いんですけど好きになってもらいたい。
ああ楽しかったなといい思い出ができれば、次につながるんじゃないかと思っています。」

スマホゲームで 地方に人を呼べるか

鈴木
「参加した人たちも楽しそうでしたし、主催した人たちも手応えを感じているようでしたね。」

黒田
「当初の予想を大幅に超える参加者が集まったということです。
さらに、イベントに参加した人たちがネット上でイベントを紹介しているんですね。
これが話題になって、また岩手に足を運んでもらえればということなんです。」

阿部
「参加した人たちも、さまざまな年齢層でしたよね。
このようにネット上の世界と現実の世界が結びついて、新たなアイデアが次々と生まれそうで、可能性を感じますね。」