【モスクワ=田中孝幸】ロシアのプーチン大統領は17日、停戦発効後もウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力の激戦が続くウクライナ東部の要衝デバリツェボの情勢について、政府軍に武装解除したうえで撤退するよう求めた。政府軍の撤退による事態収拾が望ましいとの認識を示しつつ、親ロ派の軍事行動を事実上是認した格好で欧米が反発するのは必至だ。
外遊先のハンガリーでの記者会見で語った。プーチン氏は「兵士が武器を置くのを(ウクライナの)指導部が妨げないことを望む」と述べた。ロシアを後ろ盾とする親ロ派に対しては、武装解除後のウクライナ軍の撤退を容認するよう求めた。
親ロ派はデバリツェボで17日、包囲した政府軍部隊への攻勢を強めた。ロシアメディアによると親ロ派幹部は同日、市内にいる約5千人の政府軍部隊の降伏に向けた交渉が始まったと明らかにした。
ただ、ウクライナはデバリツェボを死守する姿勢を変えていない。ポロシェンコ大統領は同日、ドイツのメルケル首相との電話協議で、親ロ派の動きを「停戦合意への攻撃だ」と非難。欧州連合(EU)と国際社会に「ロシアの裏切り行為への厳しい対応」を求めた。
ウクライナ東部の他の大半の地域では戦火はやんでいる。停戦監視を担う欧州安保協力機構(OSCE)は同日、政府軍による前線からの重火器の撤去が一部で始まったと発表した。ただ、親ロ派がデバリツェボを奪う事態になれば、ウクライナ側の反発で停戦合意全体が破綻し、欧米とロシアの対立がさらに深まる可能性がある。
米国はウクライナ政府軍のてこ入れのため、殺傷力のある武器の供与を検討している。プーチン氏は「誰が武器供与しようが(兵士の)犠牲者を増やすだけだ」とけん制したが、デバリツェボの情勢が悪化すれば米国がウクライナへのさらなる軍事支援に傾くのは避けられない見通しだ。
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