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地球の裏側とセッションできる?

まずは前回の補足から。

前回のエントリ(ネットワークセッションの歴史)を公開した後、
産総研の後藤さんからFaceBookで直接ご連絡いただき、RMCPに関連する論文リストを送って頂きました(ありがとうございます!)ので、ここでご紹介させて頂きます。

以下の論文pdfはすべて公開されていますので、ご興味のある方はご一読を。

  • http://staff.aist.go.jp/m.goto/PAPER/SIGMUS9312goto.pdf
    後藤 真孝, 橋本 裕司: “MIDI制御のための分散協調システム — 遠隔地間の合奏を目指して —”, 情報処理学会 音楽情報科学研究会 研究報告 93-MUS-4-1, Vol.93, No.109, December 1993.
  • http://staff.aist.go.jp/m.goto/PAPER/SIGMUS9707goto2.pdf
    後藤 真孝, 根山 亮, 菊地 淑晃, 村岡 洋一: “RMCP: Remote Media Control Protocol — 時間管理機能の拡張と遅延を考慮した遠隔地間の合奏 —”, 情報処理学会 音楽情報科学研究会 研究報告 97-MUS-21-3, Vol.97, No.67, July 1997.
  • http://staff.aist.go.jp/m.goto/PAPER/TIPSJ199903goto.pdf
    後藤 真孝, 根山 亮, 村岡 洋一: “RMCP: 遠隔音楽制御用プロトコルを中心とした音楽情報処理”, 情報処理学会論文誌, Vol.40, No.3, pp.1335-1345, March 1999.
  • http://staff.aist.go.jp/m.goto/PAPER/TIPSJ200202goto.pdf
    後藤 真孝, 根山 亮: “Open RemoteGIG: 遅延を考慮した不特定多数による遠隔セッションシステム”, 情報処理学会論文誌, Vol.43, No.2, pp.299-309, February 2002.

さて、前回の続きですが、

NETUDETTOが発表された2010年のY2 SPRINGの際、話題になったのが「地球の裏側とセッションできるか」という疑問でした。

ちょっと検証してみましょう。

主な問題は、ネットワークの遅延に起因する演奏の遅れです。諸説ありますが、相手の演奏が30ms(30/1000秒)以上遅れて届くと、セッションが難しくなるといわれています。

現在の技術では、ネットワークの速度は光の速度を超えられません。
その光ですが、よく知られているとおり、1秒間に地球を7周半する速度で地球の裏側に到達します。
1秒間(1000ms)に7周半なので、地球の裏側(半周)まで到達するのにかかる時間は、
1000 / 7.5 * 0.5 = 66.7(ms)
です。
(ここでは、途中の中継装置の遅延とかは無視して、光の速度≒ネットワークの速度、として話を進めます。)

この遅延時間を音速に換算してみましょう。

音速は大体 340m/s ですから、
340 / 1000 * 66.7 = 22.7(m)

つまり、地球の裏側、約2万km離れた人とネットセッションすると、大体23mくらい離れた人と合奏している感覚になるのですね。
地球の裏側って、ネットセッション的には22.7m離れている、と言っても良いかも知れません。
近いような気もしますし、遠いような気もしますが、いずれにしても、これだけ遅延があるとちょっとセッションするのは難しそう。


…で、ここから先は夢の話なのですが、

当時、何らかのブレイクスルーで光速を超えることはできないかと考えたのが以下のtweet。

 
 
例えば、以下のように日本とブラジルでセッションすると、最短でも66.7msの遅延が発生しちゃいますが[※1]、

コピーロボットを作って東京に連れてきてしまえば、実質的にセッションできていると言ってしまって良いのではないかと。

問題は、チューリングテストに合格するレベルのコピーロボットが作れるかどうかですね。

今なら、ビッグデータを分析するツールなんかも充実しているので、できそうな気もするのですが…


Web Music Developers JP Advent Calendar 2012 (17日目)

[※1] 人物像のステンシルは <http://www.graffletopia.com/stencils/462> から頂きました。:-)