今月の頭にRaspberry Pi 2の発売が開始しました。この新モデルの大きな特徴の1つが,ARMv7世代のCortex-A7を搭載していることです。つまりこれまでのRaspberry Piと異なり,Ubuntuが動くということでもあります。そこで今回はRaspberry Pi 2にXubuntu 14.04をインストールしてみます。
Raspberry Pi 2について
Raspberry Pi 2の発売開始から2週間ほど経過し,周囲でも入手された方が増えてきたようです。Ubuntu Weekly Topicsでも既にお伝えしているように,お値段ほぼ据え置きで,CPUがCortex-A7の900MHz(クアッドコア),メインメモリーが1Gバイトと大幅なスペックアップを成し遂げたおかげで,Linuxのサーバーはおろかデスクトップ環境ですら,そこそこ動く性能になってきました。
従来のRaspberry PiはARMv6世代であるARM11ファミリーのCPUを搭載していました。しかしながらUbuntuの公式リポジトリで提供しているバイナリパッケージはARMv7世代以降をターゲットにしているため,旧Raspberry Piでは動かすことができませんでした(注1)。それに対して今回採用されたSoCのCPUはCortex-A7というARMv7の命令セットであり,Ubuntuのバイナリパッケージがそのまま動くというわけなのです。
- 注1)
- Debianは古いARMもサポートしたバイナリパッケージを生成しているため,Raspberry Piが出た当初はDebianのarmel移植版を使う方法が紹介されていました。今はDebianのソースパッケージをRaspberry Pi用に最適化してビルドし直したRaspbianがよく使われているようです。
実際既にRaspberry Piの公式サイトでは,Snappy Ubuntu Coreのイメージが公開されています。このSnappyは,昨年12月に公開されたUbuntuの新しい配布形態の1つで,コンテナ型の仮想化やIoTのような組み込み機器向けの利用を想定して作られています。ファイルシステムのレイアウトやパッケージ管理システムは通常のUbuntuと異なるものの,その中身についてはUbuntuとは変わりません(注2)。つまり既に,Ubuntuが動くイメージが公開されているということです。Snappyについての詳しいことは,Software Designの2015年3月号にも掲載していますので,そちらも参照してください。
- 注2)
- 現在は開発中のvivid版のパッケージが使われています。
Snappyイメージが公開されているとはいうものの,Snappyそのものは開発中のアルファ版とでも言うべきものであり,日常の利用にはまだ向いていません。そもそも,従来のAPTコマンドも使えませんので,どうせ使うならSnappyではなく「普通のUbuntu」を使いたいと思うのが人情でしょう。
そこで今回は,Raspberry Pi 2に普通のUbuntuをインストールする手順を紹介します(注3)。
- 注3)
- 人情に背きたがる人に向けたRaspberry Pi 2でSnappyを使う方法については,次々回以降に紹介する予定です。
Ubuntuを動かすために必要なもの
最初にUbuntuを動かすために必要になりそうなものをリストアップしていきましょう。必ずしもすべて用意する必要はありません。用途に合わせて,用意してください。
- Raspberry Pi 2本体
- これがなくては始まりません。ただしなくても「Raspberry Pi 2用のイメージを作る」ことは可能です。
- 片方がMicro-BオスのUSBケーブル
- 給電用です。Micro-Bオス側をRaspberry Pi 2側に接続します。もう片方は,5V2AのACアダプターなどに接続しましょう。
- 8GバイトのmicroSDHCカード
- Ubuntuをインストールします。サーバー用途なら4Gバイトでもかまいませんが,デスクトップ環境を動かすとなると最低でも8Gバイトはないと心許ないです。またデスクトップ環境を動かすならClass 10にしておいたほうが良いでしょう。
- LANケーブル
- Raspberry Pi 2で使用します。ネットワークにつながずにスタンドアローンで起動するなら不要です。
- HDMIケーブル
- Raspberry Pi 2をディスプレイに接続するために使います。Raspberry Pi 2側はタイプAの(一般的なサイズの)コネクタを使用しています。サーバー用途であれば不要ですが,最初のうちはカーネルの起動ログを確認するを確認するために,用意しておいたほうが便利です。
- HDMIディスプレイ
- 上記HDMIケーブルをつなぐために使います。
- USBキーボード・マウス
- 直接,デスクトップ環境を利用したい場合は必要です。サーバー用途やリモートデスクトップにするなら不要です。
- LinuxがインストールされたPC
- イメージを作成するために使います。zipファイルとtar.gzファイルが展開できてchrootできてカーネルがLinuxならUbuntuでなくてもかまいません。
- microSDHCカードリーダー
- PCで作成したイメージをmicroSDHCカードに書き込むために必要です。
- USBシリアルケーブル
- シリアルコンソールを取得したい場合は必要になります。FTDI製のチップが載っているものがよく使われているようです。基本的に不要です。