AVで女の子がセックスする理由を撮りたい 第2回
幻冬舎plus 2月17日(火)6時0分配信
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| 写真・図版:幻冬舎 |
カンパニー 松尾
湯山 玲子
カンパニー松尾監督『劇場版テレクラキャノンボール2013』への湯山さんの怒りからスタートした本対談。27年間、AV監督を続けるカンパニー松尾監督は、「女の子が大きく変わった」と言います。それはどういうことなのでしょうか――? (構成:須永貴子)
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| 写真・図版:幻冬舎 |
松尾 『テレキャノ』に限らず、今、AVに出る子や援助交際をする子にはお金の問題がつきまとっています。地方と東京では若干違うんですけど、将来的なリスクよりも、今日の3万円がその場でほしいんです。
湯山 外見からでは、そんなにお金に困っているように思えないんですけどね。しかし、普通の服着て、ちょっとおしゃれして。「見た目社会」だから、逆に人並みにしようと、そこにコストがかかるのか。
松尾 でも、3万円なんて携帯電話代やらなんやらですぐに消えていきますよね。不況ですし、援助交際の相場も下がっています。でも、僕らは出演料を20年間変えていないんですよ。昔は素人さんに「安いわよ!」って言われていたのに、今じゃ「そんなにもらえるんですか? だったら出ます」という人もいる。時代や地域でお金の価値って変わるんですよね。
湯山 AV女優になる女性って、今、普通にいるどころか、相当可愛いですよね。昔は顔バレしたら社会生活が成り立たなくなったのに、なぜ顔を出せるようになったんだろう。リセット感覚が身についちゃって、そのうち忘れられるって思ってるのかな。
松尾 想像力がないんだと思います。もしもバレてしまったときは、昔だったら会社をクビになったし、親に詰められる。今でも想像力を働かせれば、親の顔が浮かんで「出られない」という判断をする人もいるけれど、「バレなきゃいい」って思う子が多いらしいんです。バレた後のことは考えないんですって。
湯山 考えてもしょうがないと思っちゃうのかな? 「今、この瞬間を生きろ」って、たしか岡本太郎が言っていたけどさ(笑)。
松尾 「バレたらどうしよう」という角度の想像力がないんです。そこで親にバレて一度辞めさせられたとしても、今の子たちは親を説得して復活したりするんです。何もなかったかのように。
湯山 親の世代が私たちくらいの年齢だとすると、あるかもしれないですね。性の厳格なモラルはもうあまりない世代だし、「子どもの意志を尊重する」という教育ベースだから。
松尾 女の子はだいぶ変わりました。27年この仕事をしていますけど、昔はAVに出る理由が重かった。しかも、きれいな子ほどそう。相当な額の借金や、家庭の問題とか。でも、今はそこそこちゃんとした家の子が、たいした理由もなくサラッと出演してしまう。友達同士でも、「私はやらないほうがいいと思うけど、あなたがやりたいならやってもいいんじゃない?」と、個人を傷つけないようなことしか言わない。
湯山 飯島愛の出現で、AV女優への認識も変わりましたからね。日活ロマンポルノの中川理恵とか、全共闘世代のマドンナが、文化の衣をまとって反体制の象徴として人気があった時代の次に来たのが、黒木香のような知的でエロというトリックスターで、飯島愛は本格的タレントとしてメジャーな活動をしていた。親の世代がそこを目撃してしまったのが子供たちに大きく影響していると思う。
松尾 AVに関してかつての常識が崩壊した今の状況は、僕らにとってはかわいい女の子が集まるからメリットが大きい。ただ、AVやポルノは恥の要素がなくなるとエロくなくなるのが問題で……。
湯山 「ダメよ〜ダメダメ」が有るか無いか、ですよね。
松尾 「私、頑張ってセックスします!」という女の子が一番苦手なんです。「私、親にも話してるし、現場の人とも男優さんとも楽しくやりたいです」みたいな言葉を聞いているとすごく苦しい。オープンであるほどエロくないんですよね。100人の男たちと制限時間内でセックスしまくるような企画物なら助かりますけど(笑)。
湯山 もはやアスリート。
松尾 セックスマシーンです。
湯山 というと、「ダメよ〜ダメダメ」という恥の思惑プレイ以外になると、とたんに情緒が欠落しちゃうんですね。ダメよ系とアスリート系の二元論。
松尾 心のドアは閉じてるんです。そういうAVが9割9分ですが、僕は苦手。人間てそんなに割り切れるものじゃないと思うので。昔は、「なんでAVをやっているのか?」という問いに対して、自分の言葉を持っている子が多かった。例えば「これしかできない」とか「普通の人生はつまらない」とか。理由はわからなくても、自分の言葉でしゃべる子たちが来た。今は、どんなに問いかけても「楽しいから」程度で、そんなに返りがないんです。
湯山 スタッフや男優さんも仕事ですから「ちやほやしてくれる」でしょうしねぇ。
松尾 そうなんです。黙っててもペットボトルにストローが差されて出てきますからね。だから「頑張ります」とか言えば言うほど、本当のエロスやセックスとはかけ離れてしまう。個人的には、心のどこかで戸惑いや不安、葛藤を抱えながらAVに出てほしい。僕は自分が撮るときは、そういう話ができる子に出てもらっています。余計なお世話かもしれないけれど、男がマスターベーションのために観る商品なので、そこは追求したい。
湯山 松尾さん自身が、女の人の恥や傷、葛藤や弱さに欲情するということ?
松尾 欲情とは違います。カッコ悪い話なんですけど、作品の中で僕がセックスをする相手のトラウマ探しをして、相手がAVに出る理由を飲み込みたいんですよね。そんなことは聞かずに、楽しくセックスをして、気持よかったね、で帰ってもらえばいいんですけど、僕はそれだと「あれ?」となってしまう。
湯山 女性には恋する男性と身も心も結ばれたい、というロマンチックラブ幻想が抜きがたくあります。でもAVでは松尾さんという見知らぬ男性が、そんな事と関係なく、女性を気持ちよくさせてしまう。心と身体の矛盾は、目の前に現れたとき確かに「これこそが人間である」という深い感銘を受けるのだと思います。矛盾が色っぽい。実はモテる人というのはこの部分を多く持っているタイプです。私においても恋愛のトリガーになるし、松尾さんの性愛観もそこだ、ということですかね。
最終更新:2月17日(火)14時35分
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