【小名浜まち開き】影響予測し対策幅広く(1月29日)
いわき市小名浜港周辺で進む新たな交流拠点づくりは、主な施設の完成を意味する「まち開き」を来春に予定している。核となる商業施設「イオンモールいわき小名浜」(仮称)の店舗面積は県内最大規模で、一日当たり3万数千人の集客を見込む。
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で、市内の商業や交通事情は様変わりした。市や県は小名浜地区だけではなく、市内外への波及効果や影響を予測し、交通渋滞の解消や既存の市街地の活性化に努める必要がある。
県商業まちづくり審議会は昨年12月、商業施設の新設届け出の審議結果を踏まえ、県、市、イオンモールの三者に対して、交通対策のほか、出店によるにぎわいを市街地に誘導・回遊させる取り組みなどを要望した。
小名浜地区の会社経営者ら有志が参加する「小名浜まちづくり市民会議」は、イオンモールとの話し合いを始めている。市民会議は地元の商業者との共存共栄、駐車場確保・渋滞緩和対策、商業施設の従業員確保の進め方、港と調和した建物による景観形成への協力などを求めている。
すぐ近くには大規模な集客施設のアクアマリンふくしま、市観光物産センター「いわき・ら・ら・ミュウ」があり、周辺の道路は観光シーズンやイベント開催時に混雑する。港で荷揚げされた荷物を運ぶ大型車両に加え、今後も復興事業や港湾整備の工事車両の増加が予想される。一部の道路で4車線化工事が行われているが、車の流れを円滑に誘導するには、市内の主要道路を含めた総合的な仕組みが欠かせない。
法令手続きは県条例の後、大規模小売店舗立地(大店立地)法に移る。交通や騒音といった生活環境を主な視点に、市や県、警察への出店計画説明会、交通対策会議の開催、住民の意見提出、大店立地審議会からの意見聴取を進める。大規模な商業施設の立地に対し、市内の商店街や商業施設からは売り上げや従業員確保への影響を懸念する声も出ている。手続きや協議の途中経過を市民や商業者に丁寧に説明し、地元の要望や不安に応える努力が大切だ。
市は平成27年度に平地区の中心市街地活性化基本計画をまとめる。国が認定すれば、市街地や都市福利施設の整備などに国の財政支援を受けられる。小名浜地区でも同様の計画認定を目指す動きが出ている。一年後の「まち開き」に併せ、両地区を中心に市内の商業やまちづくりを点検し、新たな方向性を打ち出すべきだ。(安田 信二)
( カテゴリー:論説 )