ここから本文です

<消費者庁>ノンアル2飲料に初トクホ 内閣府委答申覆す

毎日新聞 2月18日(水)11時29分配信

 消費者庁は18日、サッポロビールと花王から特定保健用食品(トクホ)として申請があったビール風味清涼飲料水のノンアルコール飲料各1種類について、許可を正式決定した。ノンアル飲料では初の許可。「未成年者の飲酒の引き金になる」として内閣府消費者委員会が昨年8月に不適切と答申していたが、同庁は「安全性と有効性というトクホの条件を満たす」として、未成年者に販売しない酒類業界の自主対策の徹底を条件に答申を覆した。同庁の判断は今後、議論を呼びそうだ。

 許可されたのは、サッポロビールが商品名「サッポロプラス」、花王が同「ヘルシアモルトスタイル」。サッポロビールの表示が「食物繊維の働きで、糖の吸収を穏やかにする」で、花王が「茶カテキンを豊富に含み、脂肪を消費しやすくする」などの内容。いずれも未発売。

 トクホは健康増進法に基づく手続きで、含まれる成分の有効性と安全性について消費者委の意見を聞くなどした後、消費者庁長官が許可するか決める。消費者委の答申通りに判断する必要はないが、同庁が異なる判断をしたのは初めてとなる。

 今回の商品は消費者委に2013年7月、トクホとして適切か諮問された。消費者委は14年8月、成分の安全性と有効性は問題ないとしたものの、「(トクホの有効性とは)食生活の改善に寄与し、健康の維持、増進が図られることで、未成年者の飲酒につながる可能性があれば、成分に問題がなくても食生活の改善に寄与することにはならない」として不適切と結論づけた。

 これに対し消費者庁はこれまで「トクホ対象外の製品」として、「アルコール飲料や糖分などを過剰に摂取する食品など」と示しており、今回のノンアル飲料は「清涼飲料水でトクホの対象」と判断。「成分の安全性と有効性に問題がなく、飲むことで食生活の改善が図られ、条件を満たす」と許可理由を説明した。

 その上で酒類の業界団体などが現在、自主規制として実施している「酒類と同じ場所に置き、年齢確認をする」などの未成年者対策を徹底することを許可の条件に挙げ、「対策が不十分なら取り消しもあり得る」とした。

 サッポロビールは、今回の許可を受け、来月中に商品の発表会を予定している。同社広報は「トクホを取ったのは、独自の価値ある商品を提供するため。他のノンアル飲料と同様に、未成年の手に届きにくいよう配慮する」と話す。一方、花王は現段階での商品化は未定という。

【江口一、山田麻未、池乗有衣、小島正美】

◇認めざるを得ない

 前消費者庁長官で、「消費者市民社会をつくる会」理事長の阿南久(ひさ)さんの話 企業から申請があったとき、消費者庁内では「手続き的には認めざるを得ない」という意見だった。仮に許可しなかった場合、企業から訴訟を起こされれば負けると思った。アルコールに似た飲料にもトクホを認めることに、私は割り切れない気持ちを持った。トクホの本来の趣旨は健康に役立つもののはずだ。できればトクホのノンアルコール飲料を市場に出してほしくない。

 【ことば】特定保健用食品(トクホ)

 体によい特定の成分を含み、動物実験や臨床試験などの科学的データに基づく国の許可を得て、健康の保持・増進に役立つことを表示できる食品。例えば「コレステロール値を下げる」「虫歯になりにくい」などの効果や用途を表示できる。医薬品と誤解される表現は認められない。1991年に導入され、厚生労働省の所管だったが、2009年9月に許可権限が消費者庁に移管された。形態は飲料、菓子などさまざまだ。

最終更新:2月18日(水)12時39分

毎日新聞

 

PR