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女子高生に殺されたい高校教師の犯罪計画

2015年2月18日 10時50分

ライター情報:米光一成

『女子高生に殺されたい』1巻(古屋兎丸/新潮社)
リアルな心理描写×緻密に寝られたプロットで紡ぐ異常なる犯罪計画(帯文より)

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“美しい女子高生に殺されたい。”
とい欲望を持つ東山春人34歳独身、高校教師。
可愛い女の子を見るたび、“この子に殺されたい”と願い妄想する。

変態だ変態だ変態だ。自分の欲望に苦しむ主人公は、図書館で発見してしまう。
【オートアサシノフィリア】
「自分が殺されることに性的興奮を覚える性的嗜好」

女子高生に殺されるという夢を叶えるため高校の先生になり、
「1年3組佐々木真帆16歳」に殺される妄想の果てに計画を実行に移すのだった。

というトンデモない欲望でスタートする『女子高生に殺されたい』1巻(古屋兎丸/新潮社)。
きた!

太宰治『人間失格』や、園子温監督の映画『自殺サークル』、劇団「東京グランギニョル」の舞台『ライチ☆光クラブ』
それらを独自の美学で継承し漫画化した古屋兎丸の画業20周年記念作品!
いや、ちょっと、第一巻の異常心理の暴走っぷりにあてられて、力こぶ入ってしまった。

第一巻は全七話。
第一話が、女子高生に殺されたい東山春人の視点。
第二話、ターゲットにされている1年3組佐々木真帆16歳の視点。
第三話、佐々木真帆に恋心を抱く少年・川原雪生の視点。
第四話、学校に赴任してきた臨床心理士の深川五月の視点。
それぞれの登場人物の視点から状況が描かれ、
第五話で、美少女佐々木真帆が、実は……(か、書けない。読んで!)。
なにしろスペシャルな登場人物は、東山“女子高生に殺されたい”春人だけではない。
第六話、第七話、コメディになるギリギリ一歩手前、とんでもない心理で行動する登場人物たちの錯綜した物語にブーストがかかり、
いよいよ異常な犯罪計画が始動!
ってところで、2巻につづく。

古屋兎丸の絵は、ピタッと止まっているように観える。
動線や効果線をほとんど使わない。
首を絞められて震えているときですら、効果線は控えめ。
アクションではなく、事実を観察のもとに緻密に積み重ねていくかのように。
神の視点から、犯罪計画の設計図を読んでいるような不思議な経験。
そんな読み心地だ。

女子高生に殺されたい高校教師の異常犯罪計画は、どうなるのか。
Kindleで第一話が無料で読める(「女子高生に殺されたい」 第1話試し読み&古屋兎丸×園子温対談 [Kindle版])。ぜひ。(米光一成)

ライター情報

米光一成

ゲームデザイナー/インターフェイスデザイナー/立命館大学映像学部教授/電子書籍部部長。ゲーム「ぷよぷよ」「BAROQUE」「トレジャーハンターG」の脚本監督企画担当。著作『仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本』『男の鳥肌名言集』等。宣伝会議編集ライター講座上級コース専任講師。
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