2年前、私は不良ってやつだった。
学校には行くけど授業中は寝てすごしていた。
夜になると仲間とつるんで夜通し遊んだ。
遊ぶ金は体を売って稼いでいた。
始めはドキドキしたが、慣れるとただの日課になった。
毎朝おにぎりかパンを盗んで昼に食べた。
店員の目線や監視カメラの角度には気をつけていたし、バレやしなかった。
私の事を不良と呼んで、劣った存在だと思っている奴らの方こそマヌケでバカなのだと思った。
不良仲間の後輩が万引きを教えて欲しいというから、一緒に万引きしたら、後輩がヘマをして捕まった。
私達は控室に連れて行かれて、店長がやってきた。
いかにもダサイ、オッサンだった。
この手のオッサンならいつも客として相手している。
手慣れたもんだ。
「やはり君だったか」
どうやら、私は目をつけられていたようだった。
まず私は後輩をかばった。
後輩は今日が初めての万引きで、私が無理やり誘ったのだから悪くない、帰してやってくれ。
仲間思いの、根はいい不良という奴を演じた。
万引きを始めたのは2ヶ月ちょっと前で、毎日平均して1000円分の商品を盗んでいたから、合計すると5万円ほどになる。
「なんでも?」
「そう、な、ん、で、も」
私は誘惑するように言った。
5万円と言えば、少し相場じゃないが、多少アブノーマルなサービスをつけてあげるつもりだった。
店長は一瞬、汚いものを見る目で私を見て、しばらく悩んでから言った。
「じゃあまず、制服を脱ぎたまえ」
男なんて所詮、そんなもんだ。
10分後、私は学校の制服を脱ぎ、コンビニの制服に着替えてレジに立っていた。
「なんで私がこんなこと……」
「なんでもするって言っただろう?
店の損益は働いて返してもらう。
やっと開放された。
5万円なんて一晩で稼げる金額なのに、やってられない。
その晩、私は仕事帰りのくたびれたサラリーマンを1人、クラブで2人ひっかけて7万円を作った。
次の日、店長の目の前に5万円を突きつけた。
「これでいいんだろ?」
「この金、どうやって作った?」
「半年前に財布を拾って。
「ふざけるな!」
ぎょっとした。
証拠なんて何も残っていないと思っていた。
「お金は働いて帰してもらう。
それ以外の金は受け取らない」
私はしぶしぶ、コンビニで働き続けることになった。
研修中の時給は750円、1日で2250円。
研修が終わると時給は100円上がった。
こんなはした金のために、あくせくと商品を棚だししてレジを打って、お客様に笑顔を振りまいて、頭を下げて。
私は青春の二度と帰らない貴重な時間を、たかが3000円かそこらのためにすり減らしていた。
1ヶ月後、私は給料として振り込まれたお金を全額引き出して、店長の目の前に叩きつけた。
5万円とちょっとあった。
「これでいいんだろ!」
すると店長は、思いもよらないことを言った。
「何を言っている?
「これ1つ売れたとして、”店”にはどれくらい”お金が入る”と思う?」
120円の値札がついていた。
バカにしてんのかと思った。
「120円だろ」
「それは売上だろう?
利益じゃない。
仕入れ値は約80円だから、お店に残るのは差額の40円」
「それだけじゃない。
うちはフランチャイズ店だから、その40円のうち4割を本部に払う。
だから手元に残るのは24円」
「なんで4割も持っていかれるの?」
うちが聞いたこともない名前の個人商店だったら、誰も買い物に来ないだろうね。
コンビニっていうのは、入れば必ずあの商品が買えるっていう、安心感が重要なんだ」
「この24円が手元に残るお金だ。
ちなみに、そのおにぎりが一個売れたら16円。
そのパンなら12円だ。
この中から君たちバイトへのバイト代と電気代、もろもろの諸経費を捻出する。
店の利益だ。
君がした悪い事は、この、店の利益を減らした事だ。
君が商品を盗んでも、バイトの給料は減らなかったし、仕入先への支払いも変わらなかった。
減ったのは店の利益だ。
僕はこれを取り返せと言っているんだ」
「ちなみに、この店の売上のほとんどは学生の登下校の時間帯に上がるから、君が働いている時間帯に出る利益は1時間あたり約1000円。
これをバイトの3人で割ると、一人頭333円を店のために稼いでいることになる。
だから、君がこの1月の労働で店に補償したのは、まだ2万円足らずだ」
驚いた。
だけど考えてみれば当然だ。
コンビニはガムやパンを作っているわけじゃない。
コンビニで物を売れるのは、物を作っている人達から買ってきているからだ。
私はそんな当然のことすら考えずに生きてきたのか。
それからと言うもの、私はお金の流れを意識して働くようになった。
コンビニみたいなお店や企業に入ったお金は、お店を持っている人の所に入る。
でもそれで終わりではなくて、所得税や法人税というものがある。
すごい。
なんだか、すごいぞ、これは。
私がコンビニで働いて稼いだお金が、回りまわって私の担任教師の給料になってるんだ。
全部つながってるんだ。
それに気づいた時、私は私の一挙一動が、すごく大きな物を動かしているような気になった。
もちろん私ひとりの影響なんて微々たる物だ。
だけど、確実に、つながってるんだ。
私はコンビニで働くようになっても、いつも通りワル仲間とつるんでいた。
体も売っていた。
せっかく稼いだお金をこんな事に使ってどうするの。
もっとまともな使い方はないの?
私、営業届けなんて出してないし、これって地下経済の一部だよ。
どうせならちゃんと申告してる優良な風俗店に行った方が、まだマシだよ。
どの口が言うのかと思うけど、そんな事を言った。
お客は
「俺が稼いだ金をどう使おうが勝手だろ」
と言っていた。
私は、私の中身がすっかり別の何かに入れ替わってしまっていることに気がついた。
私は自然と夜、出歩かなくなった。
ある日、バイトから帰ってくると、たまたま帰ってきたお父さんと玄関で一緒になった。
残業で疲れて、くたくたにくたびれたお父さん。
その姿を見たら、ふと思った。
「お父さん」
もう何年も口をきいていなかったのに、自然に声が出た。
「お父さん、いつも働いてくれてありがとう。
最近バイトとか勉強して、お金を稼ぐのがどんなに大変か分かったよ。
でも、仕事をするって生活費を稼ぐってだけじゃなくて、世の中を回すのに参加するってことなんだね。
人の役に立つってことなんだね。
すごく立派なことなんだね。
いつもありがとう」
それを聞いたお父さんは、ちょっとの間呆然としていたけど、急に泣き出した。
私は一瞬、悪い事を言ったのかと思ったけど、すぐに感動して泣いているんだと気づいて、恥ずかしいし気まずくて、すぐに自分の部屋に戻った。
次の日の朝は、誰にも見つからないように朝早くに学校に行った。
コンビニで働き始めて3ヶ月して、私は私の出した損益を埋め合わせた。
それにあわせて、私はバイトを辞めることになっていた。
「よくやったね」
今しかないと思って、私はずっともやもやしていたことを打ち明けた。
「店長。
店長には色々な事を教えてもらいました。
だけど1つだけ分からない事があるんです。
私は3ヶ月かかってお店に与えた損失を埋め合わせました。
だけど、それには3ヶ月もかかっています。
その3ヶ月間、損失は損失のままだったわけです。
だから、もしその損失が無かったら、それを元手に何かできたかもしれない。
その機会損失の埋め合わせがまだ終わってません。
それに、もし最初に私が出した5万円を受け取っていれば、そもそも機会損失は生まれなかったはずです。
私をここで働かせるより、その方が良かったんじゃないですか?」
「たった3ヶ月で、ずいぶんと利口になったもんだな!」
店長は爆笑しているし、私もおかしくなってきて一緒に大笑いした。
それが2年前の話。
大変そうですね強く生きてください
ドキュメンタリー風に書くのってなんか鼻につくんだよな。 フィクションならフィクションってどこかに書いておけよ
フィクションかノンフィクションか分からないから味が出るんだろ。素人は黙ってろ。
そんなんだからいつも釣られるんだよおっさん
これは良い増田文学
最近のコンビニは不良少女の更正までやってんのか。 至れり尽くせりだな。