前回、新たな宇宙基本計画の工程表には具体的な衛星などの名称と打ち上げ時期が記載され、それが予算確保の手形となっていると書いた。工程表の中の総括表を子細に見ていくと、記載の仕方にいくつかの種類があることが分かる。
“霞が関文法”を読み解くと優先順位が見える
一番はっきり書かれているのは、安全保障分野だ。情報収集衛星、準天頂衛星、防衛省Xバンド通信衛星などは、衛星の号機と共に打ち上げ時期が記載されている。それに対して、気象衛星は「ひまわり10号(仮称)」というような具体的名称ではなく、「静止気象衛星後継機 製造・打ち上げ待機」という形で書かれ、その後ろに点線で囲って「●継続的に製造・運用等」と入っている。
霞が関の文書では、これはそれだけ「やる気が低い」というか、弱いニュアンスを示している。時期を示さず点線囲みで「継続的に製造・運用」とあるのは「継続するけれど、時期は明記しないから、(予算が取れなければ)遅れてもしかたない」ということである。
現時点では「やる」としか読めなくとも、予算的に追い詰められた場合には、「この文書でこうなっているから、遅らせます」という論理を使うことができるわけだ。温室効果ガス観測技術衛星は、2号機と3号機が打ち上げ時期込みで記載されているが、それ以降は気象衛星のような「後継機」は表に記載されず、ただ点線で囲って「●継続的に製造・運用等」というだけになっている。継続に関するニュアンス的には気象衛星より弱い。
「その他のリモートセンシング及びセンサなど技術の高度化」に区分される宇宙計画は、既存計画のみが記載され、2021年度以降が完全に未定になっている。一方で陸域・海域観測という分野で、“民生用情報収集衛星”というべき先進光学衛星と先進レーダー衛星は打ち上げ時期を明示して記載されているので、今後こちらと整合性を取りつつ研究開発を進めていくことになるだろう。
雲や降水などの水循環の観測は、地球環境の把握に大変重要だ。地球上のエネルギーの移動には、水の蒸発・凝縮・凍結が大きく影響している。温室効果ガス観測技術衛星と同じぐらい力を入れて然るべき分野である。