早速有名無実化する経団連の「指針」
経団連は、16年春採用から広報活動解禁を大学3年生の3月に(それまでは12月)、面接などの選考活動解禁を大学4年の8月に(それまでは4月)遅らせる、「採用選考に関する指針」を昨年取りまとめた。
しかし、『日本経済新聞』(2015年2月16日電子版
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ16IF2_W5A210C1TJ2000/)の記事を見ると、選考解禁の8月よりも前に面接を始める企業が65.6%、内定・内々定を出す企業が52.5%に及ぶという(リクルートキャリアの「就職白書2015」の調査)。もともと、罰則規定のない形だけの申し合わせだが、「採用選考に関する指針」は早速有名無実化している。
学生側では、余計なルールが出来たことで選考活動の実態が見えにくくなった。企業側でも、ライバル社が早く優秀な学生を確保するのではないかと疑心暗鬼になる。どちらにとっても、このルール変更は、取引を不透明化してアンフェアな事例とその発生への不安を増やす方向に作用している。
もともと、この指針には無理がある。
優秀な人材を採用・確保することは、企業の努力として最重要の課題の一つだ。それをお互いに制約しようとすること自体が不自然であると同時に、不健全なのだ。
そもそも大学生が学業に励むか否かは、大学が提供する教育の価値の問題であって、大学何年生の何時に内定が決まるかの問題ではない。
一方、企業にとって、人の採用は将来を大きく左右する死活的に重要な問題だ。例えば、企業の株主の立場から見よう。投資先企業の経営者が、単なる精神規定に過ぎない経団連の指針の遵守に拘って、人材採用にあって後手を踏むことを許容していいと思うか。敢えて言うが、下らない申し合わせの遵守に体面を繕って、採用活動を遅らせるとするなら、その経営者や人事部はビジネスに対して不真面目だと判断すべきだ。そのくらい、人の採用は企業にとって重要な問題だ。
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