日本では救うすべのない重度アレルギーの娘と共にアメリカのラップ医師を訪れた母親の徳山裕子さん(現在は医師)。
その徳山さんがラップ医師から学んで娘を救った「誘発中和法」について著書にしています。

「アトピーを治す誘発中和法の奇跡」1994年発行

これを読んで私なりの解釈で書きます。

誘発中和法(P/Nテスト)は簡単に言うと「毒をもって毒を制す」の一種だと思います。

アレルギー反応を起こさないギリギリの濃さと量の抗原を体に繰り返し入れてやる事で免疫力を高めていく方法です。

ワクチンの予防接種も体が負けない程度まで弱らせたウイルスを入れる事で体にそのウイルス用の免疫(抗体)を作らせますがこれとは違うようです。

アレルギー反応を起こす物質なら何でも理屈では可能なようですが、実際には有害な化学物質は行わず、普通の食材などがアレルギーを起こしてしまっている場合にするそうです。

基本的な方法は、アレルゲン(抗原)をある程度薄めて注射して10分間アレルギー反応を見ます。アレルギー反応は注射したところの腫れ具合を見ると同時に脈を計ったり全身の状態、精神状態も記録します。

10分後に1回目の5倍に薄めた抗原を注射します。そして同じようにアレルギー反応を記録します。
このように10分ごとに5倍ずつに薄めて注射して反応を見て、アレルギー反応が起きず、さらに今まで注射して腫れていたところが全て腫れが引いていく時があるそうです。そうなった時を「中和点」といい、その時の「濃さと量」を「中和量」と呼び、それが同時にその抗原に対する「治療液」になります。


治療液をしばらく毎日注射して、2日に1回となり、1週間に1度、2週間に1度、というようにして乳幼児の場合は平均して1年で治療が完了する。

もし治療液を注射してアレルギー反応が起きたら、中和量を測定し直して薄くする必要があります。

似たような方法に「減感作」というのがありますが、減感作は反応を起こさない薄い濃度から注射し、一定期間をおきながら徐々に濃度を上げていって体に耐性をつけようとする方法で、減感作には中和量を求めるという考え方が無いそうです。

誘発中和のテストは抗原を1種類ごとに行う事で中和量が正確に測定でき、その抗原に対して効率よく治療が行えます。反対に、1種類ごとしか出来ないので手間がかかるというところが難点です。

この誘発中和法を応用して簡易的に行った徳山さんの「母乳」のテストはこうでした。
(徳山さんの娘さんは母乳によって湿疹を起こしていました。)

初めに母乳を1ccと水を4ccを混ぜて娘さんの舌の下に3滴垂らす。娘さんは顔に湿疹を出して機嫌悪く泣く。
10分後に4ccの水が入った容器に1回目で作ったものを1cc入れる(そうする事でさらに5倍に薄まる)。これを3滴たらす。
こうやって2回、3回とやっていき、5回目の液を落とした時に急に機嫌が良くなり湿疹が軽減したのでこれを中和量とした。(その時の様子が1回ずつ写真にして掲載されています)

この方法は簡易的な方法なので、注射の代わりに舌の下に液を垂らし、培液は水で、判断は心拍数を計らず「見る」という判断です。

この母乳の場合は母乳に抗原が多数含まれているので一番ひどい症状を起こしていた抗原だけが効果がある事になり、さらにその時食べたものによって母乳の成分が変わるのでその都度テストして中和量を計る必要があるとの事。


また誘発中和法は医師の管理の下で行わなければならないとされています。それは間違ったやり方だと体に害になる場合もあり、さらにアナフィラキシーショックを起こす危険もあるからだそうです。その為、あらかじめIgE値を検査しておく必要がある。(IgE値があまりに高いとアナフィラキシーが起きやすく危険)

また、どんな抗原をテストするにしても1回目の量を決めるのが難しく、濃過ぎると強烈な症状を出してしまうし、回数も増えてしまい、逆に薄過ぎると反応が分からないので中和量が分からない。さらに中和量よりも薄かった時は反応が無いと同時に2回目の液に対して耐性が出来てしまうので反応が正確に判断できない。
またアレルギー反応というものは、いろいろな症状がある為、素人には判断できない場合がある。例えば眠くなるとか、脳(精神)への影響を正確に判断するのは難しい。

他に準備として、その部屋の空気中の物質にアレルギーを起こしてないかとか、カビやダニはどうか、培液に反応がないか、また防腐剤としてのグリセリン、そしてヒスタミンなどを目的の抗原をテストするより先にテストしておく必要がある。

誘発中和法の問題点は「中和点が変化する」ことがあげられています。例えば牛乳にアレルギーがあった人が中和点を調べ、中和量を投与します。中和量を投与していけば同時に少しずつ牛乳が飲めるようになります。でもその少しずつというのが多くなってしまってアレルギー症状が起きてしまったとします。そうすると中和点が変化してしまい、また中和点を計り直す必要があるそうです。

本では耐性がつく理由はまだ解明されていないと書かれています。そしてこの誘発中和法をした事でアレルギーの発生が無くなるのではなく、耐性を徐々につけていく事ができるというもので、その辺りに誤解がないように注意する必要があると書かれています。

しっかりと理解せず間違った方法を行い、誘発中和法は根拠がないという論文を出した博士もいるそうです。

そしてこの誘発中和法で耐性をつけていく上で同時に考えなければならない事として、

1.回転食
2.必須脂肪酸の添加
3.ビタミン、ミネラルの補強
4.イーストプログラム
5.環境整備
の5点を挙げています。


ここからは私の想像の話ですが、

食物アレルギーは、抗原に対して初めに反応するのがリンパ球類で、その次に反応するのが抗体ではないかと考えます。
第一段階の防御システムであるリンパ球類が抗原の侵入を防ぐのが健康な人であり、その防御システムを突破した為に次に出てきた防御システムが抗体。抗体にも種類があり、即発性のIgE抗体の反応が一般的に言われるアレルギーで、症状が目に見えて分かりやすい。この誘発中和法もIgE抗体の反応を見ている訳で、IgE抗体が反応する前段階のリンパ球類の増加を狙っている方法だと思います。
また、発達障害の人の中にはIgE抗体が反応しない人もいますがそういう人には出来ないテストかな?と思います。
(IgG抗体に反応しているとしてもIgG抗体の反応は遅いので10分間では反応しないから分からない。)
それとも少しでもIgE抗体に反応すれば、皮下に注射する事で分かりやすい反応が出るようになるのかもしれませんが。



食物アレルギーの反応について、ある食べ物にアレルギーがある人がそれを食べてから5〜7日後にふたたび食べると一番激しい反応があり、2週間以上食べずにいると反応は逆に弱まると書かれていました。

私はこのように考えます。
リンパ球類も抗体も抗原と反応する事で増殖し、抗原が無ければどちらも量が減ってしまう。
リンパ球類は対応できる抗原の種類が広いが、リンパ球類が生きていられる日数は抗体より短い。(5〜7日)
反対に抗体は対応できる抗原の種類が狭いが、生きていられる日数は長い。(2週間)
IgE抗体はリンパ球により対応できない量の抗原がある事で働き出すが、IgE抗体は抗原を追い出すと共にリンパ球類の働きを抑制してしまうのではないかと思います。だからリンパ球類が増えない。

アレルギーを起こしている人がその抗原を摂取し続けていても一向にアレルギーが治らないのはこのせいかな?と思います。



この本が発行されてからもう17年経っています。
今はどうなっているか知りたいです。