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Berryz工房が歩んだ11年のアイドル道ーー個性派集団はいかにして熱狂的支持を集めたか

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Berryz工房
アイドル
ハロー!プロジェクト
冬将軍
2015.02.18
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 見た目はデコボコ、中身はバラバラ。今春に無期限活動停止を迎えるBerryz工房とは、自他ともに認める「個性派集団」だった。個性はどうとでも取れる表現ではあるが、彼女たちを指すその言葉は、時に“バカ”ですら賛辞になる“キャラの濃さ”を外向けに婉曲した表現ではないだろうか。「バカな事して絵になるのはBerryzだけ!(須藤茉麻)」と自ら言い切れる振り切った個性と魅力は並べるほど、現在のアイドルに求められているものとはほど遠いものになるのだが、それ以上に強い意志と自信を感じるのである。「歌やダンスは出来て当たり前、努力アピールをするものではない」という内面を見せないスタンスも、本来であれば人前に立つ者としての普遍的な美意識であり、物語性を重視する近年のアイドルシーンに対する問題提起でもあったように思えてくる。

Berryz工房が貫いたもの

 ハロー!プロジェクトには定型化されているものがある。リリース、コンサート、プロモーション、ウェブサイトは統一化され、アーティスト写真の構図もMVの構成も、グッズまでも……どのグループも基本的に同じフォーマットだ。悪い意味ではなく、ブランドカラーとしての形式美でもあり、ファンにとっては安心感もある。そうした枠の中での活動で、Berryz工房が見いだした答えは“個性”であり、“ふざけること”だということが興味深い。作られたコンセプトもなければ、どこか既成概念が出来上がってしまった近年のアイドル像に応えるわけでもない。時代や流行に流されることのない、自分たちのスタンスを貫いてきた。反面、握手会での対応が人気を左右することも少なくない昨今のアイドル市場に馴染めなかった節もある。だが、時流に乗れなかったのではなく、表現者のプロフェッショナルとしての確固たる矜持を示してきたともいえるだろう。

「ダンスがちびっ子にも真似しやすい」。新曲プロモーションの度に夏焼雅がよく語る言葉である。子供好きとも取れる発言であるが、自分が小さい頃にモーニング娘。に憧れてオーディションを受けたように「アイドルは子供にとって憧れの存在でありたい」という意識がどこかにあるのだろう。目の前の実人気に固執することもない彼女たちなりのアイドル像が垣間見えるようにも思える。

遊園地感覚のエンターテインメント

 個性は歌においても発揮される。声質も歌い方も7種7様、一切の被りはなく、7声が重なった強靭なユニゾンはパイプオルガンさながらの重厚さである。主軸となる歌唱メンバーも楽曲ごとの世界観とともに変更されていく。楽曲がバラエティに富んだ印象を受けるのは楽曲自体の幅の広さもあるが、彼女たちの“歌”に起因するところも大きい。一節、一語ずつリズミカルに変わっていく歌割りはハロプロの醍醐味の一つでもあるが、そこに量の差はあれど、ここぞという詞にこのメンバーの声、という印象的でカラフルなフレーズの数々は、Berryz工房楽曲の魅力である。

 そこから生まれたジャンル無双というべき楽曲群に楽曲群に、ライブにおけるお決まりの“定番セットリスト”は存在しない。攻守を代えながら様々に対応できるいくつものパターンを生み出し、派手な演出に頼ることのないコミカルな工夫で、最初から最後まで見るものを飽きさせない。メディア露出の少ない中、興行主体の活動で生まれた「何度でも行きたい」遊園地感覚のエンターテインメントは、ハロプロの強みでもあり、それを11年間に渡り存分に体現してきたのがBerryz工房だ。同じ内容の公演に観客が何度でも脚を運びたくなることは、演者にとっても主宰者にとっても最高の誇りだろう。

 そうした個性的でクオリティの高いエンタメ性は海外にも波及した。プロモーション目的で海外公演を行うグループが多い中、Berryz工房の場合は、Japan Expo(2014年 フランス)での主賓である“Guest Of Honor”を始めとし、そのほとんどが招聘・誘致によるもの。タイでは2010年の初公演が2年越しのオファーによって実現し、昨年は彼女たちを題材にした映画『The One Ticket』が作られるほどの人気だ。

The One Ticket (Official Trailer 1)

Berryzが教えてくれた圧倒的な「楽しさ」

 自由奔放ながらも、自嘲しても他人を卑下せず、下品にならず、気品を持ったアイドルとしての言動・行動が自然と身に付いている立ち振る舞い。仲の良さでは説明出来ないほどのメンバー間の円滑な意思疎通。そして悠々としたステージには貫録と余裕を見る。

 そんな頼もしさすら感じる彼女たちに共感、共鳴するファンは「応援する」よりも、「ついていく」感覚に近いのかもしれない。どちらかと言えば、熱狂的ファンを抱える孤高のアーティストやヴィジュアル系バンドのノリに近いのである。デビュー当初は温かく見守っていたファンでも、少女から大人になる過程の中で、いつからか彼女たちから教わったことも多いのではないだろうか。それは何よりも圧倒的な「楽しさ」であり、売上や動員といった建前の数字だけでは決して得ることのできない満足感である。

「色んな対バンに出てきましたが、こんなに一つになった対バン、俺初めてです!」haderu(jealkb)
「ジャンルも客層も違うのに最初から最後まで盛り上がる凄いイベントだった。これが音楽の在り方だと思った。」天野ジョージ(撃鉄)

「ファンはアーティストの鑑」とはよく言ったもの、ライブとは演者と観客で楽しさを共有するものである。異種戦ともいうべき他ジャンルの共演者の言葉からも、Berryz工房のライブの楽しさが伝わってくる。それは、11年という長い歳月で彼女たちとファンが作り上げたものでもある。

あなたにとってBerryz工房とは?

 ラストシングル「永久の歌」は今まで過ごしてきた時間、そしてこれからをファンの“みんな”と共有していく歌だった。そして『完熟Berryz工房 The Final Completion Box』に収められた最後の新曲「Love togther!」はファンである“あなた”へ捧げる歌。〈わがままかな こんな決心〉で始まる恋愛映画のラストを思わせる歌詞は、彼女たちを見てきた時間や愛情が深いほど、胸にくるものがあるだろう。走馬灯のように織り込まれる過去曲のキャッチーなダンスが、寂寥感漂う曲調と不釣り合いなのもどこか彼女たちらしい。

Berryz工房『Love together!』(Promotion Ver.)

「第2の家族(清水佐紀)」「原点(嗣永桃子)」「夢の途中(徳永千奈美)」「居心地の良い場所(須藤茉麻)」「なくてはならないもの(夏焼雅)」「当たり前の存在(熊井友理奈)「青春のすべて(菅谷梨沙子)」

 昨年の秋ツアーで語られていた「あなたにとってBerryz工房とは?」に対する答えは、「Love together!」完全版MVにライブ前さながらの円陣を組んだ彼女たちの口からも発せられている。過去に何度か同じ質問が行なわれていたことがあり、2010年に清水が同じく「第2の家族」、そして7人中4人が「家族」「姉妹」と答えている。家族とは大人になると家を離れていくものだ。ただ、それがどんなに遠く離れても、どこへ行こうとも、家族は永遠に家族なのである。

 一世を風靡したモーニング娘。の追い風を受けてデビューした彼女たちであるが、その後のアイドルに対し冷やかな時代の流れと、当時とは違った近年のアイドルブームへと移り変わっていく中、ずっと不動のメンバーで第一線を走り続けてきた。ハロプロ内でも他グループは卒業・加入を繰り返し、いつの間にか自分たちが最年長になった。だからこそ見えていたものがあるようにも思う。Berryz工房とは、移り行く時代に流されることなく孤軍奮闘してきた“最後のアイドル”なのかもしれない。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログtwitter

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