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寝具が常に視界に入るディナー。
寝台特急「北斗星」が、3月でとうとう廃止となる。同「トワイライトエクスプレス」然り、食堂車連結の貴重な列車がなくなってしまうのだ。食堂車でご飯、食べてみたかったよ・・・
この悲しみをどこにぶつけたらよいのだ。考えた結果、「勝手に食堂車の旅」へ出ることにした。 > 個人サイト オツハタ万博 お客は私だ、シェフも私だ、買出しも私だ食堂車での食事は、ぜひとも成し遂げたい夢のひとつだ。
以前、北海道へ取材に行くとき「北斗星」には乗ったことがある。しかし前日から風邪気味の上に原稿仕事も途中だったので、泣く泣く個室内で一晩過ごした苦い思い出がある。 なのでいつかは、いつかは北斗星でお食事を、と願っていたのだが、なんということだ。まだ食堂車連結の列車は「カシオペア」が残るが、ちょっとお高い。いわんや九州の「ななつ星」をや。 北海道新幹線ができることを考えるとそろそろ・・・と思いつつ、うかうかしていたら、あっという間に廃止のお知らせ。チケットを取る暇もなかった。あああ。 そこでサンライズですよ(以前の記事からの使いまわし写真。撮るタイミングなくて・・・)。
怒った。もうこうなったらどうしても食堂車に乗る。自分でなんとかしてやる。自分で食堂車を作る。
今まで何度か乗ってきた寝台列車「サンライズ」の個室を予約し、東京駅に向かった。 発車までの45分で買いまくった本日の食材。
そう、個室内を食堂にするのだ今宵は。東京駅構内にはちょっといい惣菜や飲み物が売られているので、それらの店を回って、高級そうなメニューを組み立て、シェフ兼お客になるのだ。良い計画な気もする一方、裏では倍以上ダメな計画な気もするがそんなことは今は問題ではない。とにかく買いまくろう。
・・・何袋も提げて、駅構内のグランスタやサウスコート エキュートなどの商業エリアを回って疲れ果てた。メニューに迷って店を往復したり。早く自分の部屋で休みたい。 洋食メニューを考えているのだが、東京駅はどちらかといえばJAPAN推しなので、意外と洋食の種類が少ないと感じる。なので一層、メニュー組み立てのスキルを問われてしまう。大丈夫か。 本当に大丈夫か。
実際の食堂車とのギャップもいいかと、一番狭い「ソロ」個室をとった。今からこの室内に、極上の空間を爆誕させてやる。
目玉は、紀伊国屋で購入のミニシャンパンとプラグラス入りワイン。こりゃ楽しみ。
さてこのソロ個室。狭いだけあって、テーブルのようなものはもちろん無い。ひとつ上のランク「シングル」ならばちょっとしたテーブル的な台はあるのだが、こちらソロはひじかけサイズの出っ張りしかない。
そこで、家から家具を持ってきたのだ。今日の荷物が最初からやけに大きいのはそのせいである。 ほぼテーブルしか入ってないリュックである。
適当な大きさのミニテーブルを、このために買っておいたのだ。安い割には見た目も悪くなく、食堂車の什器として耐え得るようなテーブルを探した。ただし高さとか幅とかのサイズは事前にまったく確認していなかった。それがどうだ。
うおっ、ぴったし!あっぶね。
高さも幅も、あつらえたようにぴったりだった。ついでに色もあってる。もう公式の備品にしてもらっていいんじゃないか。
元々は窓に並行にテーブルを据えるつもりだったが、そうすると自分の座る場所がほとんどなく、窓に対して垂直に設置せざるを得なかったのだが、それでもベッドの横幅いっぱいで、このテーブルの高さ次第では終始ドリフのような食事になるところであった。助かった。今日の旅はついてる。 そして今日の荷物の残り半分。使うは、高級紙皿WASARAで御座います。
当然皿やグラス、カトラリーも持ち込まねば成立しないのだが、本物の食器では重いし、壊れると大変だ。なのでこれも、事前にオシャレ紙皿を数種と、オシャレ竹製フォーク、ナイフ、それにプラ製グラスを買っておいた。せっかくの食堂車、開店準備は大変だが、できる限りのおもてなしをさせていただきたい(自分に)。
クロスをかけて(うちにあった、イベント出店用の防炎クロスを流用。し、しわが・・・)。
別アングル。ぎゅうぎゅう(右側に階段とドアがいきなりある、そんな食堂車)。
ひじかけサイズの台は便利な飲み物置き場に。
極上の空間を、と言っておきながらもう「便利な」という言葉が出てしまったが、とりあえずはセッティング完了である。
お客様のお越しをお待ちしております(もう来てるけど)。
終始背を丸めてのテーブルセッティング。そして場所の都合上、カメラはテーブルを挟んだ位置に置いたので、撮る時はいちいちテーブル越しに大きく腕を伸ばさねばならない、そんな素っ頓狂食堂車の誕生である。
小さいテーブルにちまちまと、なんだかおままごとのようで、これはこれで楽しくなってきた。 ・・・いや、「これはこれで」とか言うな、オレの食堂車だ!これが廃止の波へのオレのアンサーだ!という勢いを思い出し、さあディナースタートだ。着座アンド配膳へと参りましょう。
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