仁丹:消えた町名表示板 ネット競売で犯人割り出す

毎日新聞 2015年02月17日 22時37分(最終更新 02月18日 08時46分)

「持ち主」の手元に戻ってきた町名表示板=京都市上京区で2015年2月17日午後7時54分、土本匡孝撮影
「持ち主」の手元に戻ってきた町名表示板=京都市上京区で2015年2月17日午後7時54分、土本匡孝撮影

 ◇知人の機転で出品判明 警察と連携して奪還成功

 京都市内で昨年末以降、レトロ感でマニアたちに人気の「仁丹商標入り町名表示板」約10枚が相次いで消えた「事件」で、このうち1枚が今月、上京区の住民男性(67)の手元に戻った。インターネットのオークションに出品されていることを知った知人が機転を利かし、犯人の割り出しに成功。警察と連携して見事に奪還した。男性は二度と盗まれないよう対策を検討中。ほとぼりが冷めた頃、元の場所にこっそり掲げるつもりだという。

 男性によると、1月27日に自宅1階外壁から表示板が消えたことに気付き、京都府警上京署に相談。間もなくネットオークションに写真付きで「開始価格8万円」で出品されていることが判明した。

 オークションサイトの「質問コーナー」では、盗難を疑う質問があったが、「祖父母が商店をしていた時代に家屋に付いていたもの」「テレビ報道や盗品リストで疑われることが多いです」などと回答が書き込まれていた。

 男性の知人が落札するふりをして出品者とネット上で接触。口座番号などの情報を入手した。これらの情報を基に府警が出品者を特定し、盗まれた表示板を回収した。

 盗んだのは同区在住の70代くらいの男。今月10日夜、1人で男性宅を謝罪に訪れた。落ち着かない様子で「誠に申し訳ない」と平身低頭。「ネット上で売れると知り、金もうけになるかなと思った」と話した。事情を知らない自分の息子を使ってネット上で売らせようとしたらしい。

 住民の男性は、表示板が無事戻った上、謝罪を受けたこともあり、被害届を出さなかった。府警も当事者同士で解決したため静観する模様だ。

 男性は「表示板は祖父の代からあり、空気みたいな存在。無くなって初めて大切さが分かった」と感慨深げ。愛好家グループ「京都仁丹樂會(がっかい)」の集会に参加した際、メンバーから声を掛けられるなど心配されたといい「文化財というと大げさだが、表示板はみんなに見てもらう物だと改めて思った」と話す。

 樂會の立花滋代表(77)は「町名表示板なのだから流通させたら必ずばれる。他にも盗んだ人がいるなら今のうちに返してほしい」と話している。【土本匡孝】

 ◇仁丹商標入り町名表示板

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