プレタポルテ

「宗教学たん」と考える、イスラム国の宗教観

「イスラム教のために命を捨てる」のはナゼ?

でも、ほんとのところ、わたしはもっといろんな理由があってイスラム国の人たちが残忍なことをしてると思うんだ。たとえば、テロに関わる人ってみんな若いでしょ? お爺さんが外国人を処刑したり、体に爆弾巻いたりしないじゃない? あれは、もっと若い人たちによくある本能的な暴力性のような気がするんだよね。

それに、映像を使ってるところなんか、明らかに挑発してるよね。世界中を怒らせて、大掛かりな戦争にして、キリスト教文化圏に対するムスリムの敵意をあおってる。彼らは「世俗」って言葉を使わないけど、「世俗(キリスト教文化圏)vs宗教(本当のイスラム国家)」の構造をあえて作り出そうっていう作戦がある気がするんだよね。

彼らを攻撃しても、憎しみが増すだけ!

このイメージ戦略が成功すると、教義的に自分たちがやってることを正当化できるし、遠く離れたところに住んでるムスリムのなかにも、イスラム国に賛同する人が出てくるかもしれない。憎しみがふくらんでいって、イスラム教かそうじゃないか、っていう対立構造が先鋭化される。たとえ一部の人しか賛成してくれなくても、善と悪のコントラストができてくる。もしそんなところまで計算してるとしたら、なんだかずる賢い!

わたしたちは、そんな作戦にのっちゃいけないんだよ! イスラム教は一枚岩なんかじゃないし、世界はとても複雑なんだから、まずはそういう多様性を理解しないとね。それがわかれば、暴力で押さえつけることができないのもはっきりしてくるでしょ!

だから、わたしはイスラム国を武力で制圧することも、解決になると思わないんだよね。爆撃でいくら彼らを攻撃しても、憎しみが増すだけでしょ。そうじゃなくって、恐怖とか不満とかがからまったところを解きほぐすのにお金使えばいいのに!って思うよ。みんなが優しくなれるような努力のほうが大切なんじゃないかなぁ。

こんなふうに説明したら、お友達もよくわかってくれたみたいで、「えー、宗教学たん、物知りー!!すごくない?」って言ってくれたの! 「でもやっぱりイスラム教、怖いよー」だって! あんまりうまく伝わんなかったのかなぁ? ま、いっか。あはっ(≧∇≦)

【イスラム国(Islamic StateあるいはIS)】:イラクとシリアの一部を実効支配しているイスラム過激派勢力。2014年6月まではISIS(イラクとシャームのイスラム国)と称した。ときどき見かけるISIL(イラクとレヴァントのイスラム国)やダーイッシュ(アラビア語の略称)は同じもの。アラブ世界の「シャーム」(シリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナを含む地域)を欧米語で「レヴァント」と呼ぶ。どの名前で呼ぶべきかは議論があるが、宗教学たんはわかりやすく「イスラム国」と呼んでいる。
【カリフ制(Caliphate)】:預言者ムハンマドの死後、イスラム教の代表者(カリフ)を立てる制度。中世にはカリフの権威は有名無実化した。1924年、トルコ共和国で最後のカリフが廃位され、今日まで権威を持つカリフはいなくなった。イスラム国が目指すのは、失われたカリフ制の復興。カリフはムハンマドと同じクライシュ族の出身でなければならず、イスラム国の指導者、アブー・バクル・アル・バグダーディーはクライシュ族の家系に属すると主張している。

 

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