超富裕層は、世界中で豪華な不動産物件を買いあさるのに忙しいが、昨年は米国以上にお気に召したところはなかったようだ。

 資産額で上位0.1%未満の「超富裕な個人」を対象にした新たな調査結果によると、彼らは世界中にある何百万ドルもの豪邸に富をつぎ込む傾向を一層強めている。

 これらの「超富裕層(少なくとも3000万ドル=約35億5000万円の資産を持つ人と定義する)」が気に入る都市では、豪華な住宅の価格が跳ね上がる傾向がある。2014年には、ニューヨークの高級住宅価格が18.8%、コロラド州アスペンが16%上昇した。これにより、両都市は英国の不動産大手ナイト・フランクのプライム・グローバル都市指数による上位100都市の1位と2位に選ばれた。

 米国経済に安心感が増していることが、富裕な投資家を引き付けるのに役立っているとナイト・フランクの国際調査担当責任者、ケイト・エバレットアレン氏は指摘、「彼らは主要なセーフヘイブン(資産の安全な逃避先)に着目している。それは実物不動産に投資しても十分安全だと思えるような市場だ」と述べた。

 サンフランシスコとロサンゼルスもトップ10に入った。全体的に見ると、調査対象の米国の都市の高級不動産価格は平均で13%弱上昇した。

 その他の地域は人が寄りつかなかった。とりわけ、カンヌやトスカーナなど、欧州のセカンドハウス向きの場所が不人気だった。エバレットアレン氏は、(米国の都市と)「欧州の都市の格差は顕著だった」と指摘した。

 実際、14年の欧州の高級不動産価格は前年比0.4%下落した。ダブリン、ベルリン、それにアムステルダムといった地域は堅調だったが、他の31都市の下落分を相殺できなかった。

 全世界では、14年の高級不動産価格の上昇率はわずか2%強だった。これは前年の2.8%を下回ったが、前年の傾向は昨年も続いた。つまり、富裕層がさらに豊かになり、好んで高級住宅物件に投資するという傾向だ。

 コンサルティング会社のウェルスXとサザビーズ・インターナショナル・リアルティが12日に出したリポートによると、14年の超富裕層の人数は前年比6%増の21万1275人だった。

 このリポートによると、これら超富裕層の資産額の合計は29兆7000億ドルで、うち2.9兆ドルは居住用不動産という形で保有されている。超富裕層は1人当たり平均2.7件の物件を所有している。

 こういった資産動向は、これまでも高級不動産仲介業者や不動産開発業者にとって朗報だったが、今後もそうあり続けるだろう。ナイト・フランクはリポートの中で、超富裕層の4分の1以上が15年に新たな物件の購入を検討していると述べている。

 ただし、税務当局も目を光らせている。リポートは「富と保護主義の度合いに対する政府の目が厳しくなっている」と指摘する。

 ドバイでは、住宅ローン貸出基準の厳格化といった住宅市場沈静化目的の政策により、14年の高級不動産価格上昇率が0.3%に鈍化した。13年は17%の上昇だった。香港でも伸びが鈍化、シンガポールでは大幅に下落した。

 ニューヨーク、パリ、英国では、高級物件ないしセカンドハウスに課税する新たな政策が検討されている。リポートは、今のところ「米国で不動産を持った人々は幸運で、彼らに不満が生じる公算は小さいだろう。国内と海外からの(米国物件への)需要により、価格上昇ペースが加速しているからだ」と指摘している。

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