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Re:Monster――刺殺から始まる怪物転生記―― 作者:金斬 児狐

第四章 救聖戦線 世界の宿敵放浪編 

二百七十一日目~二百八十日目

遅くなりましたが、改めまして
新年、あけましておめでとうございます
今年も引き続きよろしくお願いします
 “二百七十一日目”
 今日は清々しい朝、とはいかないようだ。
 生憎の曇天で朝日を拝む事は出来ず、湿った空気から昼頃には雨が降ってきそうな気配が漂っている。
 経験からそう思っただけなので降るかどうかは確定では無いが、高確率で雨が降って来ると思って行動した方が良さそうだ。

 以前交わした契約を果たす為の下準備として、これまでは色々と忙しくてやや放置気味だった事もあり、今日から本格的に復讐者達を短期間で鍛え上げるべく死鬼の鍛錬デスマーチを開始しようと思っていたのだが、何だが微妙なスタートになりそうだ。
 復讐者は一応【陽光の勇者】なのだから、こんな時にこそ晴れやかな陽光を浴びるべきではないだろうか。
 いや、もしかしたら、この曇天からの始まりは復讐者の願いが叶わないという事を暗示している、なんて可能性もあるのではないだろうか。
 そうなれば、俺も困ってしまう。
 契約を交わした手前、もし最後の仕上げの時に失敗しようものなら今後の予定が全て狂うではないか。
 そうならない為には、復讐者達が『いっそひと思いに殺してくれ』とさえ言えなくなるほど過酷な特別メニューに変更すべきだろうか。
 予定通りに事態が転がれば十分目的は果たせる予定なのだが、何事も予定通りにトラブルもなく進んだのなら苦労はない。
 今回は聖戦にかこつけて、チョイチョイ摘まみ食いしたり試金石代わりにしたり色々しようと思っているので、普通よりも予定外の事が起こると思っていた方がいいだろう。
 となると、やはり目標達成確率を上げる為に訓練内容の変更は必須か。
 こうなってくると、【陽光の神】の真意も朧気だが理解する事ができた。
 警鐘を鳴らしているのだろう。
 油断するな、伏兵は思わぬ場所に潜んで居るぞ、と。

 なんて事を思いながら黒く重苦しい曇天を見上げていると、分厚い雲に隙間が生じ、そこから朝日が差し込んで屋敷を照らした瞬間を目撃する事になった。
 タイミング的に、復讐者を選んだ【陽光の神】が俺に対するメッセージを送っている、ように思えなくも無い。
 勿論、勘違いの可能性が高いだろう。ただ知らないだけで、似たような光景は世界中どこでも見る事ができる、そこまで珍しいものではない。
 それに他のごく一部の【大神】や【神】ならばともかく、【陽光の神】が俺の内心で転がしただけの戯れ言を正確に把握できるとは思えない。

 何せ、この世界の【神々】は決して万能でないのだから。

 しかし、まあ、真実がどうあれ、差し込んだ陽光に照らされた屋敷、というのは悪くはない光景だった。
 見慣れた場所でもちょっとした要素が加わるだけで、これまでは見られなかった新しい姿を見た時のちょっとした感動、とでも言えばいいのか。

 多少だが気分も良くなったので、この光景に免じて元々復讐者達に課す予定だった特訓の段階を一つ引き上げる事にしよう。
 こんなプレゼントを送られたのならば、やはり全力全開、普通なら治せないぐらい壊れても強制的に治して鍛えるくらいの気持ちで望むべきだ。

 なんて思っていると、隙間は見る間に埋まり、再び曇天となってしまった。
 まるで違うよ、そうじゃないよ、と抗議されたかのようにあっという間だった。
 しかし決めた事なので今さら変更するつもりはない。

 と言うことで、早朝から始めた復讐者達の特訓。

 今日は“大商鬼マーチャントロード”などからの報告もあるし、雨が降りそうなので、とりあえず復讐者を含めた五名の実力を確かめる為に軽めに行った。
 その内容はいたってシンプルである。
 早朝から昼までの数時間、休み無くただひたすら俺相手に実戦を繰り返すだけだ。

 俺一鬼に対して復讐者五人。
 普通ならタコ殴りにされる状況だが、現在の俺では危機的状況にもならなかった。
 朱槍と呪槍、鍛冶師さん作の強化されたハルバード、そして【上位装具具現化】によって造ったパルチザンによる四槍流で問題なく対処できる。
 流石に復讐者に返還した【陽光之魂剣ヒスペリオール】による斬撃は鋭く重い為、朱槍以外で防ぐと槍が破損する恐れが高いのでそこだけは苦労し、数回ほど身体にいい斬撃を受けたが、ただそれだけだ。
 受けた攻撃は俺の生体防具によって斬撃ではなく打撃に近いモノにまで減衰し、多少体勢がグラつく程度で、後に響くダメージは受けなかった。鬼神オーバーロードの優秀過ぎる肉体の前では、わざわざアビリティを使用するまでもない程度のモノだった。
 訓練なので全力ではなかったとはいえ、それに復讐者は悔しそうに顔を歪め、一層苛烈に果断に攻めて来た。だが俺はそれ等は朱槍で捌いてみせた。
 一応分体経由で訓練内容を指導していた復讐者は、以前より格段に強くなっている。【勇者】らしくその成長は早く、教えれば教えた分だけ吸収してその強さを日毎に増している。
 だが、俺はそれ以上に強くなっていた。だからまあ、これは当然の結果だろう。
 猛烈な攻撃を捌きつつ、俺はほぼ一方的に殴打し、復讐者の全身各所に重傷を負わせていった。

 今回も一方的な展開となってしまったが、俺の意識が復讐者以外にも向いていればもう少し攻撃を叩き込まれたかもしれない。
 その程度には復讐者は強くなっている。

 だが復讐者以外の四人――【妖炎の魔女】【守護騎兵】【簒奪者】【慈悲の聖女】――は今回、必死に攻撃して来るものの俺の三槍によって攻撃の全てを防がれていた。
 一撃一撃は速いし重いが、俺が集中する程の強さではなく、轟音と閃光を撒き散らしていながら有っても無くても変わらない存在になっていたのだ。
 つい先日の事だが、俺が許可して全能力が解放された事で全体的な能力は大幅に上昇し、特定の分野は飛躍的に向上している。
 そこら辺にいるようなモンスターやら国の精鋭くらいなら容易に倒せるだけの実力は既に備わっているのは間違いない。だがそれでも、俺にはカスリ傷一つつけられない。
 まだまだ殻のとれないヒヨっ子である。それでも容赦なく全身を打ち据えました。

 一方的な展開のまま、昼過ぎに徐々に強さを増しながら降り始めた雨で中断するまで続いた訓練が終わった後、四人は精根尽き果て、大量の汗を流しながら蹲っている。
 最も激しく動いていた復讐者は息を乱し、大量の汗を流しつつもまだ戦えるのに、もう動けそうに無いほど疲れ果てているのは情けないと思ってしまうが、それは≪主要人物メインキャスト≫と≪副要人物サブキャスト≫の格差だと思っておこう。
 才能とか、信念の強さとかこれまでの努力の差もあるだろうが。

 さて、後片付けを終えた後は大商鬼を呼び、不在中にあった連絡事項を確認した。
 俺達が王都を離れたのはたった数日の間だけであり、普通ならそこまで大きな変化は無い筈だ。
 せいぜいあれこれ改善して利益を上げたとか、新しい商売が思いついたので企画書を書いてみた、とか程度だろう。
 俺もそれくらいだと思っていた。
 だが、どうやら俺は大商鬼の能力を過小評価していたらしい。
 報告を受けて、俺はニコニコと完璧な微笑を浮かべる大商鬼を見る。

 大商鬼は、この短時間で王都でもそれなりの規模を誇った豪商を交渉で屈服させて吸収合併し、それを利用して表と裏両方の面で販路を他国にまで伸ばしていたり、その他大小色々あって王都にある商店の五分の一ほどを総合商会≪戦に備えよパラべラム≫の影響下に置いていた。
 そしてその範囲はまだ広がっている最中である。
 細かい事業内容が微妙に変わったりしたので混乱もあったが、予め造られていたマニュアルによって大きな混乱は今のところ起こっていない。

 という報告を受けた。
 とりあえず、同時に提出された数年後の王都に存在する商店のほぼ全てを俺達が裏から支配してしまうという【大商鬼発案・王都流通掌握計画】は、統治者であるお転婆姫達にとってはよろしくないと思ったので中止させた。
 やるなら思い入れも何もない他人の領地でやればいい。せっかく友好的な存在を敵にするなんてただの無駄だ。
 ただし、今手放すと借金で立ち行かなくなって自殺するか身売りする者も出てくるとかで、現在の支配下にある商店はそのまま維持するつもりである。

 改めて思う。何これ怖い。優秀過ぎて怖い。
 そりゃ、分体で蒐集した情報の中に今回吸収合併した豪商の不倫とか脱税などの弱味は掴んでいたが、それでも僅かな時間で、大した問題も起こさせず吸収して運営を回してるとか怖い。
 設立間もない中小企業が一気に大企業になっていた、くらいの衝撃だった。
 量産すれば、大陸の商売を掌握するのも不可能ではないとすら思える。
 ただ生成体は寿命が普通の同族と比べて短い事だけが難点だが、その都度量産すればいいだけか。
 いや、引き継ぎとかあるし、と考える事は多い。

 今後の予定を色々修正しつつ、俺は窓から外の雨を見た。
 かなりの勢いで振り続ける雨は、明日まで止む事はなさそうだ。
 何となくセンチメンタルになりながら、俺は大商鬼量産計画を実行した。

 これから既得権益を侵され、没落していくだろう一部の者達に祈りを捧げる


 “二百七十二日目”
 今日も朝から雨である。それも豪雨である。
 せっかくだから利用しよう、という事で復讐者達五人だけを外に出し、俺は訓練場が見える室内から【森羅万象】を使って過酷な環境を用意した。
 重力は三倍に設定され、地面は沼となっているので両足は深く埋没して歩く事すら困難を極め、吹き付ける雨は突風によって痛みを感じるほど強く吹き付ける。
 そんな訓練場にて、延々と俺が生み出した生成体達を相手に戦わせてみた。

 最初に戦わせたのは【下位アンデット生成】と【下位巨人生成】を併用する事で生成できる“ブラックジャイアント・スケルトンソルジャー”や“ブラックジャイアント・スケルトンガードナー”、それから“ブラックジャイアント・スケルトンアーチャー”といった黒い骨で構成された巨人達である。
 ブラックスケルトン達と同様に黒い骨で構成されたこいつ等の大きさは約四メートルほど。もっと巨大化はできるが、王都内なのでやや控え目な大きさにしている。
 ただしその大きさに見合った太さがある黒骨は頑丈の一言につき、鋼鉄製の武器程度では数十回攻撃しても傷一つつかない硬度を誇っている。
 ソルジャーは黒骨製の大剣と盾と軽装防具、ガードナーは黒骨製の大盾と大槌と重装防具、アーチャーはバリスタのような大きさの黒骨製の弓と革製防具で武装している。
 今回は俺が直接指揮する事でやや鈍い動きを連携で補う集団となったこいつ等は、そこそこの脅威となって復讐者達を襲った。

 結果は復讐者達の勝ちだ。
 予想通りの結果だが、悪環境も加わった事で、復讐者達の損耗は大きい。
 生成体には環境の影響が無いよう逐一修正していたので、一方的に不利な状況になった復讐者達はかなり苦戦したのである。
 一応、復讐者が先頭になって敵の注意を引きつけつつ討伐したし、【妖炎の魔女】が邪魔な雨風も纏めて敵を爆撃し、【守護騎兵】がその高い機動力と防御力を生かして仲間を守り、【簒奪者】が能力を使って敵の武具や五感の一部などを奪って弱体化させ、【慈悲の聖女】が怪我した仲間を癒していたが、やはり連携がまだまだ甘い。
 この訓練によってかなりマシにはなっているが、出会ってからの日数も短い事を考えればこんなものだろう。
 これから連携がもっと上手くいけばより効率よく戦況を有利に進める事も可能となるので、実戦でその感覚を身体に刻み込んでいく。

 ジャイアント達の次は【上位鬼種生成】を使用してみた。
 “黒大鬼ブラックオーガ”を始め、“黒豚鬼ブラックオーク”や“黒猪鬼ブラックブルオーク”や“黒牛頭鬼ブラックミノタウロス”だけでなく、“灼熱鬼フレイムロード”や“魔導鬼スペルロード”などなど、合計で百体。
 【上位鬼種生成】による生成体なのでそれぞれには高い知性が備わり、武装はマジックアイテムの類で固められている。
 特に指示せずとも考えて動いてくれるこいつ等は復讐者達を追い詰めるだけでなく、殺される事で経験値と変わり、かつ鬼珠など高額で売れる素材となって俺達に利益をもたらしてくれる素晴らしい存在だった。

 アビリティの強化も兼ねて、数体程【職業・付加術師エンチャンター】によって強化した個体を紛れ込ませて戦いが単調にならないようにし、復讐者達を苦しめてみたが、数時間後、豪雨の中で激戦を制して勝利の雄叫びを上げる一団が居た。
 もちろん復讐者達だ。最初はよそよそしかった五人は今や心から団結し、ある種の共感を抱く戦友へと成っていた。

 訓練だが、訓練ではない。気を抜けば死んでしまう。

 そんな状況を用意した甲斐あって、五人はまるで長年連れ添ったような信頼関係を構築する事に成功した訳である。
 その影で千体以上の生成体が屠られ続け、復讐者達も訓練中に大怪我をして死にかけた事が数回程起こってしまったが、結果から見れば些細な事であり、必要な犠牲だったのだ。

 観戦していた俺はカナ美ちゃんや赤髪ショート、そして子供達や団員と共に勝利した復讐者達に拍手した。
 愛したヒトを亡くして一人となった復讐者は心強い仲間を得て、信頼し助け合う事で【陽光の勇者】として一段階強くなった。
 それに感動し、そしてこれからますます増える地獄を思えば、今は暖かい拍手を贈らない訳にはいかないのだ。

 とりあえずの下準備はこれで完了したと判断し、明日から王都外での遠征攻略を開始しよう。
 用意を済ませ、家族サービスをした後はゆっくりと寝た。


 [スカーフェイスが【鬼乱十八戦将】に覚醒しました]
 [称号【殲滅骸せんめつがい】が贈られます]
 [女武者カエデ・スメラギが【鬼乱十八戦将】に覚醒しました]
 [称号【桜商侍おうしょうさむらい】が贈られます]


 意識が途切れる寸前に聞こえたアナウンス。
 とりあえず、スカーフェイスはいいとして、実力は申し分ないとはいえ、女武者が入っているとは色々と驚きだった。


 “二百七十三日目”
 復讐者達の訓練を続けるには流石に王都では無理がある。
 それは最初から分かっていた事なので、今日から遠征に赴く事になっている。
 その為の簡単な準備を早朝からしつつ、出立する前に王都の店舗で店長として働いている女武者と直接話をしてみた。
 女武者が得た称号【桜商侍】は、確かに女武者の戦闘能力を引き上げてくれている。
 【桜商侍】と桜がついているように、桜の花びらのような何かを飛散させ、それを攻撃として使ったり目くらましに使ったりと、意外と応用性のある能力が使えるようになった。
 桜の花びらが大量に舞う様は美しいのだが、一度硬化させれば魔法金属並みの強度を誇るため、その薄さもあり例え鋼鉄でも容易に突き刺さる。
 それがザッと見て数百から数千枚近い数、突風に舞うように襲いかかってくるのだ。桜の花びらの濁流とでも思ってもいいだろう。
 そんな圧倒的物量による攻撃は、圧倒的な防御力を有しているか、もしくは面での防御方法を持っていないとまず防ぐ事はできない。
 花びらは慣れれば個別に複雑な軌道を描く事も可能らしく、精進すれば今後の大きな戦力になるだろう。

 そしてそれだけでなく、【桜商侍】には桜の後ろに商がついているように、商売関係の能力も強化されているようだ。
 これは相手の心情を誘導し易いだとか、相手が欲している物を何となく察する事ができるだとか、まあ色々だ。ただ商売に関しては全般的に優位に立てるのは間違いない。
 今はまだ大商鬼の方が優れているが、今後を考えれば女武者の方がやり手になってくれるだろう。
 実は本人から『大商鬼と店長を交代させて下さい。私にあんな事ができるわけないじゃないですかッ』と泣きつかれたりしているが、この分野では期待できるので、続行の予定である。
 もちろん成果を上げた大商鬼には褒美として、副店長に任命している。
 部下として女武者を支えつつ、その寿命が尽きるまで精一杯働いてくれるだろう。

 それはさて置き。

 正直、【異界の剣豪】にして【異邦人】である女武者を俺の詩篇に取り込めたという事には驚いている。
 そして同時に、他の【英勇】などの≪詩篇覚醒者/主要人物≫達も女武者のような異邦人を取り込んでいる可能性がある、という事になる。
 異邦人は基本的に、この世界の存在よりも強い。
 もちろんそれ以上に強い存在など探せばゴロゴロしているが、例外なく強い、はずだ。……いや、どうだろう。
 女武者を囮にして不意打ちで殺した一人の事を思えば、うーん、と唸らざるを得ない。いや、強いのは間違いないのだが、簡単に殺せた事であまり記憶に残っていないのだ。
 まあ、いいか。
 とりあえず、強いとして、異邦人は実際美味い。竜帝などの味を知った後では最初ほど満足しないだろうが、美味い事には変わりない。
 そして【英勇】といった存在の仲間は他よりも強くなりやすい傾向にある事は既に判明している事実であり、つまり仲間になっている異邦人が居ればそれは普通の異邦人よりも美味いという事ではないだろうか。
 なんたる発見だ、と喜びつつ、聖戦が開始されるまでの間に、良さそうなのをピックアップする事にこれまでよりも更に力を入れようと思った。

 スカーフェイスも何だかんだと【存在進化】し、【殲滅骸】なんて称号を得てより凶悪な外見になってしまっているようだが、そこら辺はまた後で語るとしよう。

 しばらくして準備を整えた後、俺とカナ美ちゃんと復讐者達の総数七名で王都を出立した。
 まだ手のかかるオプシーを見る為に赤髪ショートは残したが、もう少しすればオーロ達のように手もかからなくなりそうな成長具合なので、時を見て赤髪ショートも混ぜようと思う。
 赤髪ショートは吸収力が高いというか、【職業】の特性で食べ物による強化がしやすいので、簡単に成長しやすい。これから出向くところならば、その強化も早いだろうという計算がある。
 ミノ吉くんなどは既に修行しに出ているし、残したメンバーには色々とやる事を与えているので問題はないだろう。

 王都を出発した俺達はしばらく骸骨百足で街道を進んだ後、近くの森に入った。
 鬱蒼と生い茂る樹木を潜り抜け、追っ手の類が居ない事をしばらくの間丹念に確認し、安全が確認された時点でタツ四郎に乗り換える。
 既に待機させていたので乗り換えは滞りなく、俺達は迷宮都市≪アクリアム≫を目指して飛び立った。

 迷宮都市≪アクリアム≫とはどこだ? と思うかもしれないが、俺が攻略した【神代ダンジョン】の内の一つである【清水の滝壺アクリアム・フォルリア】が存在する都市だと理解してくれればいい。
 今回の遠征はとりあえず【魔帝ミルディオンカイザー】が治める魔帝国内にまで出向く予定だが、その前に国境近くにあるここで幾つか試したい事や確認したい事があったので、立ち寄った次第である。

 タツ四郎の飛行速度もあり、≪アクリアム≫に到着したのは昼頃だった。
 変わらず活気に満ちた都市の雰囲気は悪いものではなく、少々の懐かしさがある。
 それにしても、【存在進化】したからだろう。
 これまで以上に注目されるがそれを無視して先に進む。何やら【鬼】系の亜人達からは跪かれるだけでなく、祈っている者も見受けられたが、関わると何やら面倒そうだったのでそれも無視した。
 営業スマイルを浮かべる店員の呼び声に誘われて色んな店を冷やかし、時には有用そうな商品を買い漁りながら、以前も宿泊した≪バンジョーノ≫に行ってみる。
 高額な宿泊料を取るが、それに見合った設備を備えた≪アクリアム≫屈指の高層高級宿に泊まる事は≪アクリアム≫に居る攻略者達にとって一種のステータスのような部分もあるので、運悪く部屋が埋まっていたらどうしようかと思っていたが、問題なく部屋をとれた。
 とりあえず一泊分の料金を即金で払い、昼飯は外の屋台などで簡単に済ませた俺達は、早速【清水の滝壺】に出向いた。

 といっても、一階から挑戦するのは俺を除いた六名だ。
 カナ美ちゃんには監督役として同行してもらうだけで、攻略は基本的に復讐者達だけで行う。
 下手を打って死に掛けない限りカナ美ちゃんは一切手を出さないので、道中の試練はほぼ全て復讐者達で乗り越える事になるのだが、まあ【陽光の勇者】である復讐者がいるからどうにかなるだろう。
 ならなかったらならなかった時だ。でも多分いけるいける。
 という事で、とりあえず五階層に居る階層ボス“ウェイルピドロン”を晩飯までに倒すように、倒さない限り帰ってくるな、と言って送り出す。
 晩飯までは時間にして七、八時間くらいしかない訳だが、内部構造や最短ルートなどは一応説明しているのでどうにかするだろう。詳細な情報が無ければ流石に難しいだろうが、最短ルートまで教えてダメなら、それはそれで今後の指標になる。もっと厳しい訓練に変更する必要がある、という事だ。
 だが復讐者はもちろん、【妖炎の魔女】と【慈悲の聖女】は現時点で今回のような無茶な迷宮攻略ダンジョンアタックをしても乗り越えられるだけの基礎的な戦闘力は有している。
 不安は細かく上げればキリがないが、トラップや奇襲にだけは十分気をつけるように忠告しておく。
 それからまだまだ未熟な【守護騎兵】と【簒奪者】の方は不慮の事故が起こる可能性も高い為、それなりのマジックアイテムで武装させているし、【守護騎兵】はその高い防御力で、【簒奪者】は一時的に敵の能力を奪う力でどうにかするだろう。
 最低限死ぬ事はカナ美ちゃんが防いでくれるだろうから、とりあえずどうなるか結果待ちだ。

 皆を送り出した後、攻略の結果が出る前に、俺は俺でやりたい事を済ませる事にした。
 単鬼で【清水の滝壺】に入り、周囲に誰も居ない物陰まで行ってから、一度ダンジョンを攻略する事で使用可能になるワープゲートを展開させる。
 ワープゲートとは【清水の滝壺】内限定になるが任意の場所まで一瞬で飛ぶ事ができる空間転移機能の事であり、念じた瞬間足元が円状に発光し、一瞬で視界に映る風景が切り替わる。

 今回俺が飛んだのは、最下層である五十階だった。
 あの膨大な水量を誇る大瀑布が行き着く最終地点であり、ダンジョンボス“シャークヘッド・ボルトワイアーム”が待ち構えている最深部だ。
 しかし現在俺が居るのは水中ではない。大瀑布からやや離れた場所に一つだけ寂しく浮かんでいる浮島の上だ。
 少し離れた場所には四十九階から五十階を繋いでいる階段が見える。
 そこまで行くには飛行できない限り到達不可能な距離が空いているので、俺が立っているここは、ワープゲートが使える者専用の出現地点と考えて間違いないだろう。
 何と便利なモノかと思いつつ、俺は大瀑布によって激しく攪拌されている水中に飛び込んだ。
 飛び込んだ瞬間一気に流される身体。複雑に絡み合う水流は俺を容赦なく押し流していくが、手足を動かし泳ぐ事で自由を取り戻す。自分の意思で進む方向を決められる。
 これは以前のように【水棲】などといったアビリティを使用しているからではない。
 単純に今の身体能力が激流を強引にねじ伏せるだけ桁外れになっているという証明だった。感覚的には、流れるプールを逆流しているような感じといえばいいだろうか。
 抵抗は確かにあるのだが、水を捉える腕を回せば回すほど、足を動かせば動かすほど前に前に泳いでいける。逆に流れに乗れば魚類も驚くような速さで泳ぐ事が出来た。
 それが面白くてグングン泳いでいると、水中に居るシャークヘッドに攻撃された。
 先制攻撃は咆哮による衝撃流だ。真っ直ぐ向かってくる強烈な一撃だが、既に知っている攻撃はあまりにも単調で、単純な身体能力だけでするりと泳いで避けられる。
 ならば直接とばかりに今度は突進してくるが、それすらヒラリと泳いで回避した。
 それだけでなく体表に密着するようにギリギリを泳ぎ、挑発もしてみる。挑発されていると分かるのだろう。暴れるように怒り始めた。
 流石に怒ったシャークヘッドの動きは格段に速いのでアビリティを使用したが、以前と比べて発動したアビリティは少なかった。それでもシャークヘッドの動きに完璧についていける。
 しばらく色々試し、疲れたので【吸盤生成】で掌に吸盤を造って張り付いてみた。自身では泳いでいないので、振り回されるように身体が泳ぐ。さながらジェットコースターのようなスリルがあった。
 今の俺は、そうだな、コバンザメをイメージしてもらえばいいだろう。

 それにしても、こうして実際に苦戦した事のある相手との再戦は現在の実力を測る指標として有用だ。
 今と昔の比較によって、自分自身の身体能力の向上具合がよく分かる。

 頭で色々と考えつつ、片手で張り付いたまま、以前解体して喰べ忘れていたシャークヘッドの内臓を齧る。帰った時に姉妹さんに簡単な味付けなどをしてもらっているので、水中での食事は地上とはまた勝手が違うが、ゆっくりと味わう事が出来た。
 少々濃厚な味付けだが、水中ではむしろこれくらいが丁度良い。

 そうこうして一通りシャークヘッドで遊んだ後は、普段はベルト代わりにしている【召雷支龍しょうらいしりゅう鮫縄さめなわ】を手にした。
 黒青黄の三色が三つ編みされた伸縮自在の【召雷支龍・鮫縄】は振れば雷撃を発生させる雷鞭として使用する事もできる【伝説レジェンダリィ】級マジックアイテムの一つである。
 単体でも強力な武器になるが、今回は真価であり本来の使い方である、膨大な体内魔力を代償にして“シャークヘッド・ボルトワイアーム”を召喚するつもりだ。
 召喚に最低限必要になる魔力量はそれなりに多いが、今の俺では大したことではない。
 そこで実験も兼ねて、最低限必要な魔力量の十倍を一度に注ぎ込む。
 すると鮫縄は膨大な魔力を注ぎ込まれて轟雷を纏い、激しく発光し始めた。
 やっておいて何だが、これ、絶対に普通の反応ではない。爆発の前触れのような気さえする。だが途中で止めるわけにも行かず、どころかより魔力を込めてみる。
 爆発したら爆発した時だ、と覚悟完了済みの俺は良いとして、至近でそんな異常現象に襲われたシャークヘッドは堪ったモノではないらしい。
 迸る轟雷によって亜龍鱗や亜龍殻が砕かれ、深部にまで届く大電流による激痛で激しく身を捩り、これまで以上に速く泳いで暴れ回った。
 それでも張り付いていたのだが、鮫縄の轟雷が張り付いていた箇所の亜龍鱗を砕いてしまい、僅かだが俺とシャークヘッドは離れてしまう。
 ほんの僅かな距離だったとはいえ、シャークヘッドにはそれだけで充分だった。
 あっと言う間に距離は離れていく。泳いでいなかった事もあり、追いつける距離からは遠く離れていた。

 しかし丁度、鮫縄を中心に発生していた異常現象は終息した。


 [【伝説】級マジックアイテム【召雷支龍・鮫縄】が条件【現神装具】【現神魔填】【超越供給】をクリアした事により情報が改変されました]
 [【召雷支龍・鮫縄】は【召雷黒龍しょうらいこくりゅう鬼鮫縄きさめなわ】に成りました]


 という脳内アナウンスと共に。
 何事かと見た手の中のかつては鮫縄で、今は鬼鮫縄であるそれは、少し前とは違っていた。大まかな形状こそ変わっていないが、黒青黄の三色に赤金銀が新たに加わり、三つ編みではなく六つ編みとなっている。
 以前よりも靭やかで手触りもよく、纏う雷は黒い轟雷となっている事から性能も大きく向上しているようだ。
 そこまで確認したところで、起動させた召喚がようやく行われたのだろう。眼前に大きな黒い断裂が生じ、まるで空間が裂けたかのようなそこから、巨大な黒鬼鮫龍の頭部が勢い良く現出する。
 黒鬼鮫龍はシャークヘッドに鋭利な龍角を足し、遙かに強固な龍鱗と龍殻を追加し、より獰猛にしたような面構えをしている。その赤い目は獲物を欲して血走っているようにすら見えた。
 そんな黒鬼鮫龍が頭を動かしたりして黒い断裂空間を破壊するように広げ、生じた隙間に龍爪を入れてバリバリと引き裂き身体全体をこちらに持ってくるのに十数秒も必要とした。
 その間は無防備で、戦闘では致命的だが、シャークヘッドはその隙をついて襲撃してくる事はなかった。
 何せ恐怖で身体を萎縮させ、小さくなっている。純粋に怯えているようだ。

 まあ、それも仕方ないのかもしれない。
 新しくなった鬼鮫縄によって召喚された黒鬼鮫龍――デスシャークヘッド・ブラックボルトドラゴン――は、完璧にシャークヘッドの上位種である。
 元々シャークヘッドを素体にしているからか、黒鬼鮫龍の巨躯はシャークヘッドと似通った部位が多く見受けられる。しかしそこに様々な強化があるため、もはや別物となっているだけだ。
 単純な大きさで比べても二倍以上の差があるだろう。

 そんなわけで、黒鬼鮫龍を召喚した後はサッサと戦って殺した。
 最初は怯えたシャークヘッドも自棄になったのか突っ込んできたが、全ての能力で上回る黒鬼鮫龍を相手にしては短時間で討伐できてしまう弱者だった。
 鬼鮫縄を手綱代わりにして、シャークヘッドをバリバリと頭から尻尾まで喰い尽くす黒鬼鮫龍の頭部でその全てを見終えた俺はふう、と溜息を漏らした。
 残念ながらシャークヘッドは黒鬼鮫龍に頭から尻尾まで食べられてしまったので今回は回収できないな、と思っていると――


 [ダンジョンボス“シャークヘッド・ボルトワイアーム”の討伐に成功しました]
 [達成者である夜天童子は二度目のクリアの為、神力は徴収されず、報酬として【迷宮の大宝箱・清水】が贈られました]

 [特殊能力【迷宮略奪・鬼哭異界】の効果により、制覇済み迷宮を手に入れる事が出来る様になりました]
 [条件適合により、[清水の滝壺]を略奪可能です。略奪しますか?
  ≪YES≫ ≪NO≫]


 ――脳内アナウンスにそう聞かれ、迷わず≪YES≫を選択した。


 [特殊能力【迷宮略奪・鬼哭異界】が発動しました。現時点より[清水の滝壺]の支配権は【清水の亜神】から夜天童子に移行しました]
 [以後、迷宮の調整は任意で行ってください]


 これで今回の目的は無事に達成できた。
 聖戦に向けての準備はまだ始まったばかりだが、幸先がいいと言えるだろう。

 とりあえず【清水の滝壺アクリアム・フォルリア】の名称は【鬼哭水の滝壺】に変更。
 内部構造の設定自体はあまり弄らないが、ダンジョンボスや階層ボスをより強化したり、新しく鮫系の魚人などを追加するなど、攻略されないよう様々な強化を施してから外に出る。

 移動は一瞬で済むのだが、外に出た時には既に夕暮れになっていた。
 思ったよりも長い時間中で過ごしてしまったらしいと思いつつ、連絡をとってカナ美ちゃん達と合流した。
 少し遅くなった晩飯を堪能しながらどうだったかと聞いてみると、無事ウェイルピドロンは倒せたらしい。宝箱を持ち帰り、笑みをこぼしていた。
 ただかなりの強行軍だったらしく、カナ美ちゃんに尻を叩かれながら休み無く戦闘し続けたらしい。
 頑張ったなと労いつつ、復讐者達の明日から更に厳しさを増す訓練を思い、簡単なマッサージを施す。この時にドリアーヌさん特製オリジナルオイルを使用したので、疲労も残らず明日から元気に訓練に励んでくれるだろう。

 その後カナ美ちゃんと色々あってから、グッスリと寝た。


 “二百七十四日目”
 美味い朝食を堪能した後、少々名残惜しいが迷宮都市≪アクリアム≫を出立した。
 これまでのようにしばらくは骸骨百足で走り、人気の無い森に入ってタツ四郎に乗り換える。

 今回目指すのは魔帝国内に存在する【亜神級】の【神代ダンジョン】の一つである【石像の展覧回廊ステイビー・ストライブ】だ。
 地下階層型に分類されている【石像の展覧回廊】があるのは魔帝国の中でも獣王国寄りに存在する迷宮都市≪ストリオルヘッジ≫。地形的に陸路で向かうのが少々面倒な場所にあり、内包する【石像の展覧回廊】と二つの【派生ダンジョン】に出現するダンジョンモンスターがなかなか厄介な性質である為、中規模に収まっている有り触れた迷宮都市である。
 本体ではまだ行った事はないが、そこまでの脳内地図は分体を使って構築済みなので、最短距離で飛んで行く事が可能だ。
 陸路と違って煩わしい地形に悩まされる事もないので、数時間程度で到着できそうだ。

 と思っていたのだが、流石は魔帝国とでも言うべきか。
 国民の大半が魔人や妖精種などで構成されているだけあって、タツ四郎に乗って真っ直ぐ飛んでいる俺達を追ってくる者達が居た。
 追ってくるのは十数名ほどで、集団を構成するのは鳥に似た頭部と背面の翼から鳥人種か、鳥人種系の魔人達だ。
 一団は国境を越えた辺りからずっとついてきていたので、恐らく魔帝国の国境警備隊だろう。統一された装備一式なのでまず間違いない。
 高速飛行する時に最も効率がよい隊列を組んだ状態で、必死で追いかけてきている。

 確かに“古代炎葬竜エンシェント・フレメイションドラゴン”であるタツ四郎は“緑風竜ウィンドドラゴン”や“疾風竜ゲイルドラゴン”といった飛行が得意な竜種ほど速くはないが、元々の能力の高さに加え、俺の恩恵もあるので決して遅いわけではない。

 それでも巡航速度で飛んでいるタツ四郎にギリギリだがついてこれている事から、一団の質の高さが伺えた。
 だが追ってくるだけでもその疲労度は半端ではないのだろう。遠目でも必死の形相が伺える。
 精鋭だとしても、何とか追跡するだけで限界のようだ。
 しかしだからこそ解せない。
 例え追いついてもあんなに疲労困憊の状態では、タツ四郎と戦えば即座に殺されるだけだと分かっている筈だ。なのに、それでもついてこようとするその気概。
 積極的自殺にすら思える行動に、一体どうしたのだろうかと小首を傾げ、あ、とすぐ原因に思い当たった。

 原因は何を隠そう、俺にあった。
 というのも、以前他国に送ったメッセンジャーは、俺が【真竜精製】によって生成した黒竜だ。
 それに分体を【寄生】させて送り出したのだが、黒竜達は役目を無事に終えた後、忠告の意味も兼ねて少し暴れさせた。
 それは各国の実力を少しでも探るという意味合いもあり、それは果たされている。
 これから向かう魔帝国や、その隣国である獣王国などでは短時間で狩られたが最低限の働きをした。
 それ以外の小国では少々荷が重すぎたので、ある程度暴れただけで止めた。流石に無駄な大量殺戮はしたくない。

 という感じで、そんな事があってまだ日も経っていないのだ。
 各国は普段よりも警備を強化しているのが普通だろう。
 そこに無造作に突っ込んだ訳なのだから、こうなってもしかたない。広い国境の空を高速で抜ければ例え見つかっても問題ないだろう、と少し舐めていた部分もあるので、認識を改めた。
 さて、とすると追ってくる一団は戦闘が目的ではなく、俺達がどこに向かっているのかを知る為に追ってきていると見ていいだろう。
 恐らく攻撃されれば即座に散開し、再集結してまた追跡するつもりだろう。
 職務に真面目なのはいい事だが、面倒なので【森羅万象】で叩き落とした。
 と言っても墜落する事はなく、しばらくは動けなくなるように乱気流をぶつけたり、重力を増加させる程度だ。それでも追おうとした真面目で実力ある一部にはより強く加重や強風を与えて追跡できなくする。
 怪我などはしていないのですぐ復帰できるだろうが、追跡可能距離まではもう近づけないだろう。

 など、そんなハプニングがありつつも、昼過ぎには≪ストリオルヘッジ≫のすぐ近くにまで到着する事ができた。
 現状だとこれ以上タツ四郎の姿を見られるのは宜しくないと判断したので少し離れた場所で降り、骸骨百足にしばらく揺られたが、そのお陰かいい風景を見る事が出来た。

 周囲を山地で囲まれた盆地。
 緑よりも岩肌が露出した風景が多く見られるその中心に築かれた円状の防壁の中に存在する都市――それが迷宮都市≪ストリオルヘッジ≫だ。

 早速その巨大な石造りの立派な門まで向かい、入場待ちの列に並ぶ。
 とはいえこれまでと比べれば並んでいる数は少なかったので、思ったよりも短時間で入る事が出来た。
 多少取り調べは厳しかったようだが、荷物の大半はアイテムボックスに入れているので手荷物を没収されても問題は無い。もしダメなら夜空から侵入するつもりではあったが、そんな手間が無かったので良かった。

 それで入る事の出来た≪ストリオルヘッジ≫内でまず気がついた事が二つあった。
 一つ目はこれまでの街と比べ、石造の建物しか存在しない事だろう。
 巨大な岩石をくりぬいたように見える物もあれば、レンガ造りのように積み重ねて造られたように見える物など差異はあるものの、木造建築は一軒も見られない。
 これは≪ストリオルヘッジ≫の周辺に建材に適した樹木が無く、代わりに王侯貴族に親しまれる上質な石材が採れる石切り場が多数あるからだろう。

 まあそこら辺の事情はさて置き、石造独特の味がある建物ばかりで埋め尽くされていた。

 二つ目は、基本的に住民が筋骨隆々の益荒男ばかりだという事だ。
 迷宮に挑む攻略者などは当然として、店先で客引きをしている店員も屈強な肉体をしている。多種多様な種族がいるが、目に付くのはドワーフや獣人、巨人や鬼などその強靭な肉体が特徴的な種族が圧倒的に多い。
 これは内包する三つの迷宮――すなわち【石像の展覧回廊】と二つの【派生ダンジョン】で出現するダンジョンモンスターが石材によって構成されている事が要因の一つだろう。
 硬質なダンジョンモンスター達は剣や槍など切断系の武器と相性が非常に悪いため、自然とハンマーや鍛えた鉄拳などで粉砕するような傾向になっていく。
 そして都市外の石切り場で働く者も数多く暮らしているので、その場合も重い石材を運ぶ為に身体は自然と鍛えられている。
 そういう訳で鍛えられた住人達が豪快に生活してる、何とも暑苦しい都市だな、というのが最初に抱いた感想だった。

 ともあれ、諸々の手続きをサッサと済ませ、早速【石像の展覧回廊】に入っていく。
 時間は有限だ。有効に活用しなくては勿体無い。

 という事で挑んだ【石像の展覧回廊】内部は、まるで古代遺跡のような細部まで計算された造形をしていた。
 数人が横に並んでも窮屈にならない程度の広さがあり、高さもそれなりにある。灯りは天井に等間隔で埋め込まれた発光する石で、薄暗さを感じられないだけの光量がある。
 そんな中を、復讐者達を先頭にして進んでいった。
 今回のメインは復讐者達だ。俺とカナ美ちゃんは後方に回り、支援に勤しむ。

 入ってから十数メートル程は直進だったが、そこで二股に分かれている。
 復讐者は迷う事なく右を選択し、進んでいくと、しばらくして最初のダンジョンモンスターと遭遇した。
 “群れ成す石狼”という、狼型の動く石像だ。
 大きさはブラックウルフと同じくらいなので、一般的な大きさと言えるだろう。動きも身体が灰色の石で構成されているため決して速くはないが、その分重量の乗った突進は相応の攻撃力を有している。
 例え前衛の盾職でも、気を抜けば勢いに押されて突破されるかもしれない。
 それが約三十頭。
 後方に控える一際巨大な“群れ導く大石狼”に率いられ、通路を埋め尽くす一個の生物であるかのように襲ってきた。

 まあ、サッサと駆逐させて前進する。
 確かに硬く斬る事は困難だが、そもそも石材を容易に切断できる武装と技量を持っていれば動きが遅いだけの的だった。
 流石にこの程度で手傷を負うほど復讐者達は弱くない。
 今は俺達の支援もあるのだから、当然の結果だろう。
 その後至る所で遭遇した“彷徨う石蝙蝠”や通路を徘徊している“蹂躙する石猪”の群れを始め、高い技量で石剣などを振るう“気高き騎士石像”や様々なモンスターの特徴を混ぜ合わせた“石食みの合成魔獣キメラ”など、押し寄せる多種多様な石材で構成されたダンジョンモンスターを順当に狩りながら奥に進んでいく。
 ちなみに、ダンジョンモンスターの名前が他とかなり違っているのは、ここで出てくるのは全て迷宮を創造した【石像の亜神】が手がけた作品の複製品だからだそうな。
 【石像の展覧回廊】という名が表しているように、自己主張の強い【石像の亜神】が自慢の作品を取りそろえていると思って間違いない。

 調べた限りでは地下階層型である【石像の展覧回廊】の最下層は二十階までと短く、ハッキリ言って最下層以外は【亜神級】の中でも下から数えた方が早い難易度らしい。
 以前俺が単鬼で潜った【清水の滝壺】とは比べるまでもない。あれはどちらかといえば【神】よりだ。
 そんな訳で、確かにダンジョンモンスターは鬱陶しいが対処できない事はなく、罠もそこまで多くはない。
 階層ボスは五階、十階、十五階に存在し、最下層にダンジョンボスが待ち受けているが、他と比べて階層毎の構造が変化する事がなく、基本的に構造自体がそこまで複雑ではない事もあり、それなりの深さまでは熟練の攻略者なら潜る事が可能である。

 そんな訳で、五階の階層ボス部屋まで、数時間とかからず到着する事が出来た。

 五階の階層ボス“厳かなるタヒテ像”は部屋に入る前から部屋の中央に鎮座していた。

 “厳かなるタヒテ像”は汚れ一つ見当たらない純白の石材で造られた、癖っ毛の頭髪と甘い美貌を備えた裸体の男性石像だった。
 衣服の類が一切身につけられていない肉体の造形はまるで生きているかのような力強さを表現すると同時に、バランスがとれた美しさを体現していた。
 そんな“厳かなるタヒテ像”の身の丈は五メートルほどと大きく、その手には武器なのだろう投石器スリングが握られている。
 硬い石材の肉体は半端な攻撃を受け付けず、その見た目に反して俊敏に動き、スリングによる遠距離攻撃で攻略者を苦しめる、それなりに面倒な階層ボスである。


 [階層ボス“厳かなるタヒテ像”の討伐に成功しました]
 [達成者一行の下層への移動が認められ、以後階層ボス“厳かなるタヒテ像”と戦闘するか否かは選択できるようになりました]
 [達成者一行には初回討伐ボーナスとして宝箱【アーガテミアの巨人像】が贈られました]


 まあ、それでも復讐者達によって十数分後には倒された訳だが。
 多少の手傷を負わせただけ、“厳かなるタヒテ像”は良くやったと言うべきだろう。

 さて、普通なら階層ボス戦が終われば大抵は休憩する。
 他のダンジョンモンスターとは一線を画す階層ボスでは体力や集中力、魔力や気力などが著しく消耗する。怪我を負っていなくてもそれ等を少しでも回復させる必要があるからだ。

 だが今回は“厳かなるタヒテ像”の残骸を回収し、討伐報酬である宝箱を回収した後、疲労や魔力の消耗などは俺のアビリティと魔法薬によるドーピング――あくまでも例えである――を併用して全快させ、そのまま遭遇するダンジョンモンスター達を片っ端から殺戮しながら潜り続けた。
 まだ若い【簒奪者】などから小さな文句が出たが、それは無視する。

 ただ一点難があるとすれば、それは肉の身体を持つダンジョンモンスターがほぼ皆無という事だろうか。
 いや、まあ、石材は石材で、そこそこ喰べがいがあるのだけれど。


 “二百七十五日目”
 昨日から不眠不休で戦い続けた甲斐あって、早朝には十階の階層ボス“美麗なるヴィルベラス”に挑戦する事ができた。

 五階層の裸体男性“厳かなるタヒテ像”とは異なり、“美麗なるヴィルベラス”は過去の【勇者】であり絶世の美女と謳われたヴィルベラス・アンバスゴールドという女性をモデルにした等身大の石像だった。
 古代ローマで着られたというトガのような衣服を纏い、右手には薔薇の装飾が施された刺突剣エストックを、左手には蛇の装飾が施された斧や鉈のような解体用ナイフブッチャーナイフを装備している。
 美しさと同時に他者を喰らう毒蛇のような“美麗なるヴィルベラス”は、その傍らに彼女の守護獣だったとされる“黄金獅子”と“水銀猛虎”まで再現されて従えていた。

 ただ“厳かなるタヒテ像”と同じ純白の石材によって構成されている為、豪奢な装飾が施されたトガを身に纏っている筈の“美麗なるヴィルベラス”は何だか地味だし、“黄金獅子”と“水銀猛虎”にいたっては特殊な能力を持ち合わせていない、ただ大きくて速くて頑丈な石獣になっていた。

 まあ、普通ならそれでも十分驚異ではあるのだろう。

 本物の獅子や猛虎よりも速く駆け抜ける、本物の数倍は重い物体が襲いかかってくるのだ。
 しかも半端な攻撃ではダメージを与えるどころか自分達の武器が破損するとなれば、その厄介さが想像できるだろうか。
 本体である“美麗なるヴィルベラス”もエストックとブッチャーナイフを巧みに扱い、その身体の特性を遺憾なく発揮する肉弾戦も果敢に行う為、侮ると痛い目を見る。
 しかも“黄金獅子”と“水銀猛虎”が倒されても、“美麗なるヴィルベラス”が健在である限り短時間で再生させる能力や、第四階梯までの岩土系魔術も行使してくる。

 一人と二頭は全体的にバランスがとれている強敵だ。
 “厳かなるタヒテ像”を倒せても、“美麗なるヴィルベラス”で詰まる攻略者の数はそれなりに多い。
 だが、それでも復讐者達が無事に討伐した。


 [階層ボス“美麗なるヴィルベラス”の討伐に成功しました]
 [達成者一行の下層への移動が認められ、以後階層ボス“美麗なるヴィルベラス”と戦闘するか否かは選択できるようになりました]
 [達成者一行には初回討伐ボーナスとして宝箱【戦乙女の獣者】が贈られました]


 “美麗なるヴィルベラス”の残骸と出現した宝箱を回収し、また休む事なくその先に進む。
 道中ではシャークヘッドの調理された内臓を食べて腹を満たしつつ、ひたすら戦闘を繰り返した。

 そして夕方頃には十五階の階層ボス“不動のモーアーイ”が鎮座する部屋の前に到着出来た。
 だがこれまでの無茶な強行軍により、復讐者達の装備には破損が目立っている。
 流石に【神器】である【陽光之魂剣ヒスペリオール】に破損は全く見られないが、それ以外には細かい傷や汚れが増えている。これ以上酷使すれば修復不可能な状態になる物もあり、魔女が持つ魔杖や聖女のメイスなどまだまだ使える物以外は攻略中に入手した武器に変更した。
 基本的に美術品や石材の類ばかりがドロップするココでは、武器系のドロップ品は結構貴重だったりする。それでもレアなだけあって性能は高いので、十分活躍してくれるだろう。

 準備万端で部屋に入ると、縦横高さが百メートルはありそうな巨大な部屋の中心に、縦長い岩石の頭部が鎮座していた。
 銀色の石材で構成された“不動のモーアーイ”の大半は縦長い頭部であり、高さにして六メートル以上はあるだろう。それ以外は僅かに首のような頭部を支える土台があるだけで、手足の類はなく、自分で動く事は出来そうにない見た目をしている。

 その異形に困惑しつつも始まった戦闘は、思ったよりも手こずった。
 “不動のモーアーイ”の基本的な攻撃は目からの怪光線、口から岩石弾や熱線あるいは異常音波を吐き出し、岩土系統魔術を行使したりその巨大な顔を倒しての押し潰したり、土台から超振動を地面に与えて周囲を波打たせるなどだった。
 確かに機動力は絶望的だがそれを補う多様な攻撃に加え、“不動のモーアーイ”は背後という死角を補うためか旋回能力にとても優れていた。不動という癖に、結構動いている。
 ともかく、真正面から仲間が攻撃している隙に後方から攻撃しようとしても、一瞬で反転して対面する事になる。
 銀色の身体はこれまで相手にしてきた物よりも遥かに硬く、魔術にも高い耐性を有していたため、戦闘はちょっと長引いた。


 [階層ボス“不動のモーアーイ”の討伐に成功しました]
 [達成者一行の下層への移動が認められ、以後階層ボス“不動のモーアーイ”と戦闘するか否かは選択できるようになりました]
 [達成者一行には初回討伐ボーナスとして宝箱【顔面岩は動きだす】が贈られました]


 深夜まで続いた戦いは、無事に勝利した。だが復讐者達の消耗は激しく、まだまだ戦えるが万全とは程遠い。流石に一日で二回も階層ボスと戦うのは厳しすぎたようだ。階層ボス戦だけでなく、移動も考えれば仕方ないだろう。
 その為残骸と宝箱を回収し、下に続く階段でようやく休む事にした。
 これまでの激戦で吸収した経験値により、レベルがかなり上昇している復讐者達は以前よりも確実に強化されている。多少の無理でも何とかなるだけの地力は確実についている。
 だがそれでも限界はある。十六階に到着する直前である今が休息をとる最適なタイミングなのだ。

 美味い飯で腹一杯になり、ゆっくりと眠る。
 回復を促す為に俺の生き血を与えたり、オイルを塗ったりしているので、明日は今日以上に活躍してくれるだろう。


 “二百七十六日目”
 今日も早朝から元気に攻略を開始した。
 しかし流石に最下層手前、残り四分の一ともなると攻略難易度は跳ね上がるようだ。
 【石像の亜神】も迷宮を攻略され、【神力】を徴収されては困るからだろう、ここからは本気で殺しにかかっている。

 ゴロゴロと高速で転がり爆ぜては再生する巨大爆弾“爆ぜ戻る石破球”が通路を埋め尽くすように徘徊していたり、まるでヘビー級ボクサーのように鍛えられた肉体造形と頑丈な石拳による殴打が驚異的な“破石の拳闘士”や、巨大な石が数多く繋がって構成されている“石繋ぎの大蛇”など、一体でもそこそこ手強いダンジョンモンスターが群れている。
 そしてヒト一人をペロリと一呑みできるだけ巨大な口を持ち、発達した後ろ足と棘が無数に生えた尻尾が特徴的な階層ボスにも匹敵しうる暴力を誇る“古代石の強蜥蜴グレーターレックス”なども出現し始めた。
 出現するダンジョンモンスター自体の強さもそうだが、全体的に身体を構成している石材の硬度も上がり、特殊な能力も多数備わり始めている。

 これまでのが遊びというか、自慢の作品を多人数に見せる為にあえて弱くしていた分、残りの力をここに注ぎ込んでいるような印象を受ける。
 これまでは無かった即死罠が至る所に数多く点在している事からも、それは間違いないだろう。

 だが、それでも進んでいく。
 攻略の合間合間でレクチャーしていた結果が出てきたようだ。
 元々【英勇】などの類は成長しやすい、というのは以前も言っただろうか。それに俺の補正が加わるので、復讐者達は面白いようにその技量を伸ばしていくのだ。
 それに加えての、連戦につぐ連戦だ。
 気を抜けば死ぬ事も十分有り得る場所での実戦はそれだけ対象者の成長を促し、吸収され、蓄えられた経験値によるレベル上昇の恩恵はこれまで不可能だった事すら可能にしていく。

 今回は俺とカナ美ちゃんが補助に徹しているとはいえ、それが無くても十分戦えるだけの実力は備わっているようだ。
 少々手こずったが、昼過ぎにはダンジョンボス“石盾の蛇髪女鬼ゴルゴーン”がいる部屋に到着する事が出来た。

 【石像の展覧回廊】のダンジョンボス“石盾の蛇髪女鬼”は、見惚れてしまうほど美しい美女でありながら、数多の毒蛇で構成された頭髪を持つ女鬼として有名なゴルゴーンの石像だった。
 汚れ一つ見当たらない純白の石材で構成されたゴルゴーンは、今にも動き出しそうなほど繊細な造形をしている。
 美女の顔には慈愛に満ちた微笑が浮かび、しかし毒蛇の頭髪は牙を剥き、獲物に喰いかかろうとしている瞬間が表現されている。
 背の丈は高さは百七十センチくらいであり、“美麗なるヴィルベラス”も着ていたトガのような衣服を着ている。そこから伸びるスラリとした四肢は、見惚れるほどに艶やかだ。

 石像であるのに、何処か淫靡さすら感じられる。
 その造形の美しさに、流石は【亜神】の作品だ、と思わず納得した。
 少し見蕩れたのが気に食わなかったのか、カナ美ちゃんに頬を抓られてしまったが、これもまた良し、としておこう。

 さて、そんな“石盾の蛇髪女鬼”と戦うボス部屋だが、縦横高さが二百メートルほどの神殿のような空間に、巨大な円柱が無数に存在した。
 それは最奥にある玉座に続く道を表現している風であるが、何やら意図的に死角を造っている感じがする。
 これは何か意味があるのだろうか、と思いながら、しばらくは復讐者達に相手を任せた。

 そうこうして復讐者達が戦況を有利にしていくと、最初は徒手空拳で戦っていた“石盾の蛇髪女鬼”が、その名称通りに二メートル四方の石盾を六つ生じさせた。
 石盾は重力など関係ないとばかりに中空に漂い、“石盾の蛇髪女鬼”の意思によってその役割を自在に変化させていった。
 時には攻撃から“石盾の蛇髪女鬼”を守る盾として、時には質量と速度を伴って敵を打ち砕く武器として、空間を縦横無尽に動き回るのだ。
 その時円柱によってどうしても生じる死角が有効に働いていた。気がつけば視界から消えていた石盾が、死角から襲撃してくるとなると、流石に厄介極まるのだろう。

 復讐者達もそれには手こずり、これまでよりも怪我が多い。
 後方に控えていた俺とカナ美ちゃんにも攻撃が及ぶ事が多くなり始めたし、復讐者達が倒す事で【石像の展覧回廊】を奪うという本当の目的が達成できなくなるのは嫌だし、一度本気を出したいので、手を出してみた。

 【黒覇鬼王の蹂躙暴虐】を始め、【黒覇鬼王の金剛撃滅】や【灼熱の竜血バーニング・ドラゴンブラッド】、【水晶振動周波クリスタル・クオーツ】や【正面突破ホーンブロー】などを過剰なまでに追加していく。
 ついでに各種職業系アビリティや【撃滅の三歩】など使えるモノは全て使い、一瞬で接近してその腹部を殴打した。
 その瞬間に発生するのは目が潰れるような極光と、周囲の大気が全て消失したような衝撃で――


 [ダンジョンボス“石盾の蛇髪女鬼”の討伐に成功しました]
 [達成者一行には初回討伐ボーナスとして宝箱【石像の女王】が贈られました]
 [攻略後特典として、ワープゲートの使用が解禁されます]
 [ワープゲートは攻略者のみ適用となりますので、ご注意ください]

 [詩篇覚醒者/主要人物による神迷詩篇攻略の為、【石像の亜神】の神力の一部が徴収されました]
 [神力徴収は徴収主が大神だった為、質の劣る亜神の神力は弾かれました]
 [弾かれた神力の一部が規定により、物質化します]
 [夜天童子一行は【石像神之石工具ノーミードカスタール】を手に入れた!!]

 [特殊能力【迷宮略奪・鬼哭異界】の効果により、制覇済み迷宮を手に入れる事が出来る様になりました]
 [条件適合により、[石像の展覧回廊]を略奪可能です。略奪しますか?
  ≪YES≫ ≪NO≫]



 ――それを感じた瞬間には、全てが終わっていた。
 一先ず今回手に入れた【神器】である【石像神之石工具】――基本的にはハツリノミとハンマーの柄を鎖で繋げたような形状だが、意思一つで変形させられるようだ――と宝箱を回収し、脳内アナウンスではとりあえず≪YES≫を選択する。


 [特殊能力【迷宮略奪・鬼哭異界】が発動しました。現時点より[石像の展覧回廊]の支配権は【石像の亜神】から夜天童子に移行しました]
 [以後、迷宮の調整は任意で行ってください]


 これでここでの目的は達成された事になるのだが、とりあえず冷静に周囲の状況を改めて見てみる。 
 その結果、腹部を殴打した“石盾の蛇髪女鬼”は消滅している事が確認できた。恐らく粉末すら残っていない。回収は諦めるしかなさそうだ。
 そして余波で円柱を始めとした、ボス部屋の大半が爆裂粉砕していた。今はただ粉塵が舞う廃墟にしか見えず、最初にあった神殿めいた美しさなども欠片も伺えない。というか、周囲全てが最初よりも大幅に拡張しているのではないだろうか。本来なら僅かな傷跡すら刻む事が困難な迷宮壁に大きな穴が穿たれている、と表現すればいいだろうか。
 それから、カナ美ちゃんの魔氷によって守られていた筈の復讐者達にすらしばらく動けない中度のダメージを与えていた、という事が再確認できた。
 唯一無事だったのはカナ美ちゃんだけである。全くもう、やりすぎよ、とちょっと怒っているようだが、頬を可愛らしく膨らませているその様子はむしろ愛らしさしか感じられない。

 ともかく。
 いくら閉鎖空間だったとは言え、友軍誤爆フレンドリーファイアとか何これ酷い。
 しかも守られているのにこれとは如何に。守りなかったら敵だけじゃなく、味方すら殺してたよね。下手に暴れすぎると友軍殺すとか、やはり計画通りに進めるのは必須だろう。そうしないと無駄に戦力を減らしそうだ。
 など、思う事は数多い。

 だが目的も達成できたので、回収するモノは回収し、復讐者達を回復させて外に出た。
 時間は既に夕暮れで、それなりの値段だが質の良い宿に泊まって飯を喰べる。
 ただ、残念ながらココでは迷宮の内容が内容だけに食料となるドロップアイテムが殆どなく、あっても微妙な味しかしないらしい。
 その為、まあ普通、といえる程度の料理を喰べた後、口直しとして自室でちょっとした宴会を行った。

 最後は美味しく俺が貰ってしまったし、事故とはいえ結構な痛打を与えてしまったので、その詫びも兼ねている。
 出したのはシャークヘッドの内臓を始めとした食材だ。コリコリとした歯ごたえと、噛めば噛むほど旨みが出るようなシャークヘッドは良いツマミになる。
 単純な味と質ならやはり竜肉が大きく上回るのだが、普段から最上の食材ばかり食べていては飽きないにしても、有り難みが失せる。
 それはちょっと勿体ないし、今回のように部屋呑みならこれで十分だろう。誤爆による愚痴もこれで解決だ。
 いやぁ、労働の後の酒は最高だなッ。


 “二百七十七日目”
 早朝、用事を終えた迷宮都市≪ストリオルヘッジ≫を出立する前に、【石像の展覧回廊ステイビー・ストライブ】の名称を【石像の鬼哭回廊】に変更する。

 基本は面倒なのであまり弄らず、本格的に難易度が上昇した十五階から下には新しく黒牛頭鬼ブラックミノタウロス黒大鬼ブラックオーガの石像などを多数配置する。
 後は陰湿な罠も多数追加し、各階層ボスを少し強化しておく。ちょっと防御力が上がっているとか、攻撃パターンが増えている、という程度だ。

 ただ攻略されると困るダンジョンボス“石盾の蛇髪女鬼”は三体に増やし、正式名称を“石盾のゴルゴーン三姉妹”に変更した。
 長女を“強い女鬼ステンノ”、次女を“彷徨う女鬼エウリュアレ”、三女を“支配する女鬼メデューサ”とした三体の石像は黒く、黒曜石で出来たような独特の美しさがある。
 操る石盾も合計で十八枚に増えただけでなく、鋭利さと強度などを大幅に上げている。
 神殿めいたボス部屋の内装も少し手を加えたので、造られた物理的死角はより戦況を優位にしてくれるだろう。
 これで最後まで到達できた攻略者でも、容赦なく抹殺してくれるに違いない。

 今後の活躍に期待しつつ、俺達は出立した。
 目指す先は魔帝国内でも栄えている部類に入る迷宮都市≪グローリーローズ≫だ。

 現在地である迷宮都市≪ストリオルヘッジ≫からはかなり離れているが、竜であるタツ四郎を使った空の移動は警戒されている為、安易に頼るのは控える事にした。
 その為、ノンストップ移動が可能な骸骨大百足を使用した陸路になる。
 しばらくは悠々自適な外国旅行を楽しむ事にしよう。まあ、一日も止まらず進み続ければアッと言う間に到着してしまうだろうが。


 “二百七十八日目”
 骸骨大百足に揺られつつ復讐者達を鍛え、外の風景を楽しむ快適な旅は比較的順調に進んでいた。
 既に分体によって魔帝国の大半は脳内地図に記録されているので、迷いなく向かっていける。

 そんな訳で風景を見ていて改めて思ったが、ところ変われば習慣も常識も変わるという事だろう。

 それなりに大きな街道で甲虫人インセクターの少女が跨る大きな芋虫に牽引された農作物満載の馬車――いや、この場合は虫車が正確だろうか――や、巨大な赤いバッタに乗ってピョンピョン跳ねながら高速で駆け抜けていく甲蟲人インセクトイドの男性、ドリアーヌさんのような植物系の女性で構成された集団が乗る“動く魔樹トォレント”で造られたらしい動く木車とすれ違ったりした。
 これまでいた王国などでは絶対に見られない光景だ。移動手段からして根本から違っている。
 やはり亜人系が多い魔帝国だけはあり、独特な部分が数多く見受けられる。

 何か取り込める事は無いだろうかと観察しつつ、すれ違う種族なども数えてみた。
 すると向かっている迷宮都市≪グローリーローズ≫の特徴も相まって、魔人ミディアン系や獣人系よりも、虫人系や植物系の種族が多い事が分かる。
 迷宮都市≪グローリーローズ≫はこれまで行った事のある迷宮都市とは一風違い、自然豊かで煌びやかな事でも有名だ。
 分体では脳内地図の穴埋めと、各国の中枢部に侵入させて情報を蒐集させる活動を中心に動かしているので、ジックリと中まではまだ見た事がない。
 だからウキウキと期待感を刻一刻と高めつつ、汗水垂らす復讐者達の訓練に力を入れた。

 今回の訓練はただ骸骨大百足を追い続け、時折迫る俺やカナ美ちゃんの攻撃に対処するという、実に単純なものだ。
 だが終わりが分からない事に加え、骸骨大百足の走行速度はそれなりに速く、攻撃も数が多い為、非常にキツい。
 それを街道沿いではひたすら同じ事を繰り返し、ショートカットする為に森や谷を進む時は休憩させた。それ以外にもあれこれを行い、心身共に追い詰めてみた。

 以前なら途中で動けなくなっていただろうが、先の迷宮攻略にてレベルが向上し、鍛えられた身体は今回の訓練も乗り越えるだけの性能にまで成長していたようだ。
 疲労困憊ではあるが、それでもリタイアする事なく最後までやり遂げた。
 それに満足しつつ、昨日の朝早くから止まらず移動し続けた事もあり、今日の夜九時くらいには無事に到着する事が出来た。
 普通なら数日から数週間は必要になるので、有り得ない程短時間で到着したと言えるだろう。
 やはり悪路でも問題にせず、夜でも動き続けられる骸骨大百足の特性があればこその成果と言えた。

 だが到着した時には植物で構成されたような城壁に存在する、薔薇の装飾が施された城門は固く閉ざされていた。
 時間的に遅かったので閉門したらしく、一応ヒトが出入りできる程度の通路は脇にあるが、骸骨大百足が入れる大きさではない。
 だから夜勤である門番に、門が開く明日まで待てと言われた。

 仕方ないので、骸骨大百足を収納して横の通路を通らせてもらうように頼んでみる。
 骸骨大百足はどうするんだと聞かれたので、こういう事もあろうかと、用意していた骸骨大百足を収容できる高ランク収納系マジックアイテムを見せてから収納した。
 実際には俺のアイテムボックスに放り込んだだけだが、マジックアイテムがカムフラージュとなり、驚かれたりはしたが、しかし変に怪しまれる事はなかった。
 まあ、それでも夜間料金として多少高めの通行料をとられてしまったが、仕方あるまい。

 そんな事で入った夜の迷宮都市≪グローリーローズ≫だが、おお、と思わず驚いてしまった。

 ≪グローリーローズ≫を分かりやすく表現すると、薔薇の古都、になるだろうか。

 入ってまず目に飛び込んできたのは、都市の中心部辺りに存在する下手な家屋よりも巨大な青い薔薇だ。
 それが月の光を浴び、青白い光を発生させ、都市全体を照らしていた。
 青白く照らされた都市には、年季を感じさせる石造建築の家屋ばかりのようだ。都市の外には十分家屋に使える木材があるのに、あえて石材を使うのは何故だろうか。
 まあ、何か理由があるのだろう。
 城門から中心部にまで真っ直ぐ続く主道路を進みつつ周囲を観察していると、石造の家々の壁面に、様々な植物の蔦や根などが絡みつき、様々な色の薔薇が咲いているのを発見した。
 青い巨大な薔薇だけでなく、小さな薔薇も数多く自生しているらしい。
 大抵は道路脇に幾つもある花壇に生えているが、そこ以外にも生えている。至る所にありすぎて、わざわざ探そうと思わなくても薔薇を見つける事が可能だった。
 あまりの多さに、夜闇の中でも薔薇の心地よい香りが漂っている。
 そして夜道を照らす街灯にも、薔薇が利用されているらしい。“輝石薔薇”という植物と鉱物が融合したような特殊な薔薇を利用した、非常に低燃費かつエコな街灯によって照らされている。光量的に青い薔薇の補助的な役割しかないようだが、これがあるだけで青い薔薇だけではどうしても生じてしまう暗闇を大幅に打ち消しているようだ。

 何にせよ、ここまで薔薇に覆われた都市の夜景というのも、中々に幻想的だった。

 あまりにも特徴的な構成をした迷宮都市だが、ココには【薔薇の亜神】によって造られた【亜神級】の【神代ダンジョン】である【青薔薇の庭園守ブラウローゼ・ガルヴァッヘ】が存在する。
 都市を構成している多くの部分に、ここから採れるドロップアイテムが多数利用されている事から、こうなってしまうのも変ではない。
 多分都市のアチラコチラにある薔薇は、迷宮産のモノが外で成長してしまったからに違いない。

 他にはない独特な特色を見つつ、まだ空いている宿を探してチェックイン。
 とりあえず攻略は明日からでいいだろう。という事にして、寝た。


 “二百七十九日目”
 爽快な朝である。
 多分何処からか漂ってくる薔薇の香りがそうさせるのだろうか。

 まあ、それはともかく、一夜を過ごした≪ヴィラ・ロゼッタ≫というそれなりに高級な宿の朝食を堪能する。
 朝食にも食用の薔薇を使った独特な料理が振舞われた。ピンク色の薔薇の花弁をエディブル・フラワーとして生食したり、ジャムに加工して出来たてのパンに塗られているなど、用途は様々だ。
 どれも美味しく頂いた後は、ダメ押しとばかりに乾燥させてハーブティーとしたモノを頂いた。スッキリとした甘さで、後味が良い高級品だ。
 朝食としては、優雅に堪能できる仕上がりになっていただろう。

 さて、気を取り直して色々な手続きをした後、これまでのように【青薔薇の庭園守ブラウローゼ・ガルヴァッヘ】に潜る事にした。
 迷宮ダンジョンの入口は都市中央に君臨する、下手な家屋よりも遥かに巨大な青い薔薇の根元である。

 軽く打ち合わせしながら青い薔薇の下まで行く間、ジロジロと不躾な視線に晒される。
 居心地が良いからか、基本的に虫人系や植物系の種族で固められている都市内では、俺達は目立ちすぎるからだろう。
 まあ、手を出してこないのなら無視するだけだが。
 普段通りといえば普段通りな視線をやり過ごし、根元につくと、早朝ながら結構並んでいた。
 列に並んで順番を待つ事しばし。順番がやって来たので、薔薇の根元にポッカリと開いた下に下に進む植物で出来た螺旋階段を降りていく。

 【青薔薇の庭園守】は地下階層型に分類される迷宮だ。
 が、何十階にもなっている訳ではない。たった二階しか存在せず、二階はボス部屋だけらしいので、単純に攻略するのはただ一階だけ、という少々変わった構造になっている。
 が、ただ一階と侮るなかれ。
 その一階が途轍もなく広いのだ。

 まるで青空のような色合いの天井までは軽く一キロを越している。縦横は下手すれば数十キロにも及ぶかもしれない広さを誇り、少し跳び上がって周囲を見回しても、終わりは見えなかった。
 それに基本的には樹木生い茂る自然豊かな世界なので、ここの出入り口を見失って帰って来れない可能性も高いという、油断大敵な天然の罠が存在している。
 【青薔薇の庭園守】内部では方位磁石の類などは簡単に狂うので、入念な準備をしなければ、この広大な一階で出入口を探してサバイバルし続けなければならない。
 その場合は死亡率が九割を越えるそうなので、初心者などは出入り口からそこまで離れた場所には行けなかったりする。

 まあ、そんなの脳内地図があれば問題ないのだが。
 という事で、以前と同様、復讐者達を先頭に進んでいく。

 出現するダンジョンモンスターは虫系や植物系が多く――

 様々な色の薔薇が寄り集まって人型になった、薔薇の盾と棘の剣を持つ“薔薇の騎士ローズナイト
 独特な香りで侵入者をおびき寄せ、罠に嵌める狼型の走り回る食獣植物“薔薇狼ローズウルフ
 薔薇が数多く生い茂る場所に潜み、敵が近づくのをひたすら待ち続けて絡みつく“薔薇蔦蛇ローズヒップバイパー
 “薔薇蔦蛇ローズヒップバイパー”が無数に寄り集まって、隠れる必要がなくなる程強大化してしまった“薔薇蔦大蛇ローズヒップビッグバイパー
 迷宮のアチラコチラに自生する薔薇の花粉を集める為、爆音を撒き散らしながら飛び回る“狂音蜂エイトビーター

 ――という感じになっている。
 薔薇を基本にしたダンジョンモンスターは多いが、擬態している虫系のダンジョンモンスターも多い。
 階層が少ない分、地形やダンジョンモンスターに力を入れているからか、数が多いし質も高いので、慎重に進む必要がある難所だ。
 それでも復讐者達によってバッさバッさと薙ぎ払われていくのだが。
 ここでは薔薇など植物系のドロップアイテムが多いし、虫系を倒せばそれに関係するモノが落ちるので、ぜひ余計に収集し、食べてみたいモノである。
 蜂の子とか極上のハチミツとか、最高です。

 とは言え、今日は階層ボスというか、ここまで広いとフィールドボスというか、それ等の類には遭遇しなかった。
 残念だが、これだけ広いとそういう事もある。分体で探してもいなかったので、きっと誰かに倒されてしまい、今は再生待ちなのだろう。
 明日には復活すればいいなと思いながら、小川の近くで野営した。
 晩飯に喰べたドロップアイテムの芋虫とか、転生したばかりを思い出して、何だか懐かしい。

 明日のあれこれを話し合い、不眠番として【上位鬼種生成】でブラックブルオークなどを生成して、ゆっくりと寝た。


 “二百八十日目”
 今日も元気に歩き回る。
 出会うダンジョンモンスターを片っ端から抹殺し、薔薇の海を駆け抜け、森の中を縦横無尽に走り回る。
 隠された宝箱や、迷宮産の食材を集める事はや数時間。
 朝から動き回ったので、少し遅めの昼食をとった。

 そして厄介だな、と溜息を吐きだした。

 実は分体を飛ばし、【青薔薇の庭園守】の脳内地図は既に隅から隅まで埋め尽くされている。一階一階降りるタイプでは使用できない裏技だが、サッサと攻略したいコチラとしては有用な一手なのは間違いない。
 そして分体で探索させている時に、ここの攻略法も発見する事ができた。
 各地に隠されるように存在する薔薇型の石碑。そこには特定の場所で特定の薔薇を持って来いだとか、特定のモンスターを討伐せよとか、特定のドロップアイテムを一定数持って来いなどなど、様々な条件が書かれていた。
 内容はバラバラだが、しかし共通して全ての石碑の条件を満たす事によって、二階へ続く扉が出現する、とある。

 つまりお使いイベントだ。
 石碑の数は発見した限り二百と非常に多いし、内容が複雑なモノも多い。
 そして面倒な事に討伐対象となっているダンジョンモンスターが誰かによって既に討伐されているので再生待ち、となっているものも結構あった。

 条件を満たしていくというのも面倒なのに、それをより一層面倒なものにしてお使いイベント達成を邪魔しているのが、【フレムス炎竜山】――今は【鬼哭神火山】だが――を彷彿とさせるこの広大な面積である。
 というのも当然で、【青薔薇の庭園守】は俺が調べた中では、【亜神級】最大の広さを誇っている。
 その広さによって、内部構造は森や草原だけでなく、小さな山や谷など様々だ。場所によって自生している薔薇やダンジョンモンスターの種類が大きく異なっていたりする事も、ここの攻略を邪魔する要因の一つだろう。

 これまでには無かったタイプの迷宮であり、単純な力押しでは攻略する事は不可能だ。
 強さは適正だが、このままだと予定よりも伸びてしまいそうだ。

 なんて思いながら昼食を喰べた後、午後も元気に攻略を開始した。 
 ドロップアイテムの一つである薔薇の菓子を食べながら、今日も一日頑張る事にしよう。



 [熱鬼イルグレッドが【鬼乱十八戦将】に覚醒しました]
 [称号【煉獄剣れんごくけん】が贈られます]
 [剣闘王ライガー・バゼットが【鬼乱十八戦将】に覚醒しました]
 [称号【剣闘鬼けんとうき】が贈られます]
 [五鬼戦隊パラベランジャーが【鬼乱十八戦将】に覚醒しました]
 [称号【五業鬼ごごうき】が贈られます]

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