賢者の知恵
2015年02月18日(水) 佐藤慶一

「家庭菜園のイメージを変え、”食の知的冒険”をより多くの人に届けたい」---おうち菜園 共同創業者2人にインタビュー

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株式会社おうち菜園 代表取締役の濱田健吾氏(左)と取締役の江里祥和氏(右)

効率化を追求する仕事への違和感から、大事な価値観を見つめ直した

「場所がない・時間がない・知識がない」人たちに家庭菜園を届けたい。家庭菜園を「食の知的冒険」と捉え、自分が育てた食材が一品だけでも毎日の食卓に並ぶようにしたい。

横浜・関内にあるシェアオフィス「さくらWORKS<関内>」に拠点を置く株式会社おうち菜園は、国内外の多様な家庭菜園のかたちをウェブマガジンで発信しながら、商品の開発・販売を手がける。家庭菜園の可能性を伝え、もっと身近なものにしようと取り組んでいる。

現在、同社はクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」にて「『小さな農』をファッショナブルに届けたい! ハーブ栽培セット『アロマガーデン』」という新しいプロジェクトを立ち上げ、支援を集めているところだ。今回、代表取締役の濱田健吾氏(37)と共同創業者の江里祥和氏(27)に起業の背景や家庭菜園の課題や可能性を聞いた。

2人はどのような背景のもと、出会うことになり、家庭菜園という珍しい分野での起業に至ったのだろうか。代表を務める濱田氏は大学卒業後、オーストラリアに渡った。「価値観を広く持ち、異文化の環境で生活することで、自分の可能性が広がると考えました」(濱田氏)。

現地の小学校で2年間、日本語教師として教鞭を執った後は、日本の専門商社に転職。シンガポールやロシアなど海外で新規事業立ち上げに従事した。その後、外資系企業に転職。効率化を追求する日々、徐々に違和感が強まり、長く働いているイメージができなくなったことから、間もなく退職することになる。

「仕事は生きざま」という濱田氏は退職してから、自分にとって大事な価値観を見つめ直す時間をとるようになった。宮崎県小林市で生まれ、少年時代に山、川、田んぼで遊び回った原体験を思い出したことに加え、読書をしたり、旧友に会ったり、家族といっしょに過ごすなか、「自然」を軸に据えることを決意した。

そんな折、ウェブサイトでたまたま「アグリイノベーション大学校」を見つけ、説明会に参加。「そこでいまでもお世話になっている講師に出会い、楽しく学べそうだと思い、その場で通うことを決断しました」と濱田氏。講座を通じて学んだことを実践し、試行錯誤をするなかで「家庭菜園は専門的で意外と難しい」ことに気付くとともに、可能性も感じたという。

「きっかけがあればすぐできそうなのですが、『場所がない・時間がない・知識がない』といった要因が敷居を上げています。これらの障壁がなくなったら、みんな喜んでくれるのではないかと思いました。また、家庭菜園から生まれるエネルギーがポジティブだということに可能性を感じています。学んだことを自宅のベランダで実践していると、芽が出たり、実が成るだけで、娘が笑顔になって喜んでくれたことがとても嬉しかった」(濱田氏)

農業や家庭菜園の世界に深く入り、事業のシミュレーションや市場調査をおこない、農業関係者にも会うようになった。2013年10月には江里氏と出会い、これからの構想を話す中で意気投合。長らく新規事業の立ち上げを経験していた濱田氏にとって、起業という選択肢は遠いものではなく、家庭菜園を多くの人に届けるため、2人で起業に至ることになる。

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