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 重い食中毒を引き起こすボツリヌス毒素が体内に入り込む仕組みを、大阪大微生物病研究所などのグループが解明した。毒素が腸管にある細胞の「扉」をくぐり抜けて血中に入り、発症につながるという。17日、英科学誌ネイチャーコミュニケーションズ電子版に掲載された。

 ボツリヌス毒素は土中のボツリヌス菌から作られ、食べ物に付着して人間の体内に入ると全身まひなどを引き起こす。衛生環境が整った先進国での発症は少ないが、治療法が限られているため、テロに悪用される恐れが懸念されている。これまで発症の詳しい仕組みは分かっていなかった。

 阪大微生物研の藤永由佳子特任教授(細菌学)らは、毒素の中のヘマグルチニン(HA)というたんぱく質に注目。マウスを使った実験で、HAが腸管にあるM細胞の表面にあるGP2というたんぱく質とくっつき、細胞を通り抜けることを突き止めた。毒素はその後血中に入って全身をめぐり、症状を引き起こしていると見られる。

 藤永さんは「新たに分かった毒素の侵入経路を防ぐことで、食中毒の予防や治療につながる可能性がある」と話している。(今直也)