アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』第6話 たったの一歩がこんなにも……(前編)
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アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』第6話 たったの一歩がこんなにも……(前編)

2015-02-18 01:33
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 ニコ動で『デレアニ』6話 配信中!



 哀しいな。ただただ哀しい。




 いや、6話を観た人達が皆おかしなテンションになっていたので見る前から胃が痛かったですよ。「ああああああああああああああ」となるか「ああ…………」となるかと思っていたが、後者だな……





 理想があったんだなあ。夢みちゃったんだなあ。


宝石を手に入れられると思っていたからこそ、手にした原石の価値に気づけ無いんだなあ。哀しいな。哀しさと情けなさと悔しさと、ありとあらゆるものが未央を潰すんだな。哀しいな。

○未央がこうなった理由

 夢がきらびやかすぎたからこそ、現実の矮小さとのギャップの大きさに押しつぶされる。当然の話だ。そして、そんな姿を友達に見られた。ノリノリで盛り上がって吹き上がっていたからこそ恥ずかしい。情けない。道化だ。


……で終わるだけなら、悲しくもなんともないんだよ。「未央はただの馬鹿でした」で済む。何が哀しいって、今まで未央が背負い込んできたもの、感じてきたもの、全ての「好き」や「楽しい」や「嬉しい」が未央を裏切り殺したからだ。


○未央を苛んだモノ
 基本的に6話は3話の裏返しだ。目の前にあのキラキラが広がると思っていた。あの「嬉しい」「楽しい」をまた味わえると思っていた。観客席にたくさんの客が入る覚悟は、今度こそしてきた。そしてあの時先輩たちから褒められて嬉しかった気持ちをまた味わえると思っていた。先輩たちからの期待に応えられるとも思った。



夢みたいに綺麗だった。だが本当に夢でしかなかった。先輩たちからの期待を裏切った

 5話でみくから「ファイトにゃ!」って言われてやる気を出した。6話前半でもシンデレラプロジェクトの仲間からの応援に応えようとした。




仲間からの期待を全て裏切った。さらに、シンデレラプロジェクトのトップバッターとしての責務を果たせず、プロジェクトの看板に泥を塗った。恥さらしの戦犯だ

 リーダーとして頑張ったな。いつも通りのハイテンションで夢を語り、いつも以上に二人を引っ張り、いつになく「代表」面する。3話の凛のように肩なんか叩いちゃったりして。




それが全て空回りだったと分かった。とんでもない道化だった。


 尊敬する美嘉からもトレーナーからも褒められた。期待されていた。それも裏切った。




ここの「あの時のライブと比べて盛り上がりが足りないと?」と訊かれた時の表情が本当にエグい。「そんな事でイジケているのか」「幼稚な」と言われた表情。自分の好きだったものを全て否定された表情だ。実際幼稚なのは未央も解ってる、だから言い返せない、という表情。
 2話でアイドルを始めて、3話で舞台を好きになって、4話で仲間を好きになって、楽しかった。嬉しかった。その、培ってきた「嬉しい」「楽しい」「好き」が全て反転して毒になり、未央を殺した。哀しい。
 
 未央に、ニュージェネに実力や頑張りや魅力が不足しているわけじゃないんだ。ただ少しネジをかけ間違えただけ。3話で勘違いし、5話で勘違いし、この6話で勘違いした少しずつの積み重ねが招いた崩壊なわけだ。哀しいな。全ての夢と希望が毒となって襲ってくるのは。

 階段を駆け下りていく。BGMはOPの『star!!』のアレンジ。

 OPとは真逆に、ステージから逃げる。まさに城から去るシンデレラだ。でもPは追いかけられんのだよな。そりゃそうだ。Pの仕事は魔法使いであって王子様じゃない。寂しいな。


○本当の絶望
 確かに「友達いっぱい呼んだのにお客さん全然いなくて恥ずかしい」だけで今回の未央を理解すると「このクソ女」になるだろうなあ。この「苦悩の表層が薄っぺらく見える」というのも哀しさの一つだ。本当はあらゆる方面から未央は潰されている。哀しいな。

 そして、それらが未央を潰した上で叩き落とす先は、それ以上の絶望。『孤独』だ

 実際問題として、今回のステージが失敗だったと思ってるのは未央だけなんだよね。卯月や凛もかなり凹んでいるけど、「お客さんが全然来なかった。失敗だった」「それはリーダーである自分に魅力が無いから」と思ってしまっているのは未央一人だ。実際、「情けない」「恥ずかしい」と、未央を攻めるのは未央自身しかいない。そういう意味で、未央に共感する人は誰一人としていない

 世界に裏切られ、理想に裏切られた。しかも、Pも、かな子たちも、美嘉も、卯月も凛も、ラブライカの二人も、見に来た友達も、そして視聴者でさえも「良いステージだったじゃん」と思ってしまう演出と構成。これじゃ真の意味で孤独じゃないか。5話までの「未央達に視聴者をシンクロさせる」手法から一転して、見ている側が自ら未央を絶望のどん底へ叩き落とすよう仕向けるこのやり方。凄い。酷い。

 あの三人、特に未央を通じて、2話じゃこの世界を見た。3話じゃ舞台の輝きを見た。4話じゃ文字通り三人の目線を通じてシンデレラプロジェクトのメンバーを見た。5話じゃみくの悲哀と熱情を見た。6話前半じゃあの三人を通じてあの三人の頑張りを見た。



そこにきて、あのイベントが始まった時点で、ふと視点の元がニュージェネ三人から離れるんだ。

(後光は『導き手』『輝く予兆』の隠喩)


美しいラブライカがいて歌が始まって、三人も出て行って、いい歌 で、作画も良くて、かな子達も羨望の眼差しで見ていて、まあ、楽屋裏に歓声が響いてこなかったのが不安だけど、「ああ、いいステージじゃないか」と思った途端、




Pと同じようにふと気づくと


このザマになっている

 未央以外の誰もが、ステージに見とれて思わず立ち止まってしまった観客も、そして視聴者ですらもが「ああ、いいステージだ」と思ったあの時点で未央は完全に孤独になってる。未央に共感する者がだれもいない。2話~5話までで殆ど一心同体だった視聴者ですらもがだ。視聴者視点はPと同じ位置に下がり「気づくと未央がダメになっていた」「そして幼稚な理由でガチ切れして」「辞めるとか言い出した」なんだから。過程が描かれていないから共感しようがない。未央の本当の絶望は「お客が来なかった」じゃなくてこの孤独だ。ネットを見りゃ未央へのヘイトがいくらでも転がってる。2~6話前半で未央を通じて空気を吸っていた者も、未央自身も、袈裟懸けにばっさりだ。

 しかも未央があの場で口にしたのは「友達に情けない姿見られて恥ずかしい」だけなんだよな。そりゃヘイトも買う。本当は、仲間からの信頼や、先輩からの応援や、先生からの期待、リーダとしての期待、あらゆるものが未央を刺したのに。それを口にしない。口に出せない。哀しいな。
 仲間にも先輩にも文字通り顔向けできない。

誰にも分かってもらえない。この孤独。


「今日の結果は(あなたに魅力がないので)当然のものです」


信頼していたPから出た言葉。だからこそ信じられる言葉。信じざるをえない言葉。バッサリ行かれた。
情けない姿を舞台で晒した。それを友達に見られた。仲間の、先輩の、友達の期待を裏切った。それは全部自分のせいだ。しかも未央は全部自分一人のせいだと思ってるんだ。Pでも他の二人でもなく、「自分の」「実力不足」のせいだと。いやちがうな、「自分に」「魅力がない」せいだと思ってる。頑張ったからあの地点へ行けるはずだと。全部自分で被ってしまうんだなあ。哀しいな。
 未央の上に「最悪が降ってきた」のならばまだいい。今回の最悪は未央の「中から噴出した」ものだ。それも「好き」って感情が裏返った毒として。未央の一番大切なものが未央を傷つけている。一人では絶対立ち直れないヤツだ。そして今の未央は完全に孤独。哀しいな。寂しいな。そして何が恐ろしいって、未央は自分が孤独であることにすら気づいてないってことだ。哀しいな。

○未央に見えていないもの
 希望が全て反転して未央を刺した。逆に言えば、未央を刺した全てが希望であったはずなんだ。それを未央は見えていない。俯いてるからな。哀しいな。
「ベテトレさんに認められるほどレッスンを頑張って力をつけた」
「先輩から認められた」
「仲間と絆を育んだ」
「その仲間から羨望の眼差しで見られてる」
「学校の友人も駆けつけて応援してくれた」
「"ちょっとは"来てくれた、足を止めてくれたお客さんがちゃんといた」
未央を刺した刃は元々は『希望』であったはずのものだ。未央自身がそれを刃と認識しているだけで。絶望と失望で目が曇って、握りこんだ宝石に気づいていない。哀しいな。


○Pの過ち
「今日の結果は(そもそもあまり宣伝してないので)当然のものです」



実際よく見りゃ、3話の美嘉達のように、街中にニュージェネとラブライカのポスターが貼ってあるってわけじゃないんだよ。Pが地道に手渡し営業で頑張ってる「だけ」だ。新人に広告費をかけるわけがない、だからお客さんもチラホラとしか来ない。Pはそれがあたりまえだと思っている。未央だけがあらぬ期待を抱いている。孤独。
 いや、ほんと、コイツはいちいちいつも一言が足りない。
 やっぱりこの娘達の心情を上手く汲めていないんだよな。5話でそうだったように、言葉の裏のズレにあまり気づかない。未央たちのほんの少しの勘違いに気付けていない。大勢をプロデュースしているから、仕事が忙しいから仕方ないとはいえ。
 「3話以降のどこかで『アレは美嘉達だから集められた観客』と言っておけば」「ステージ前のどこかで『観客数は30~40人程度』と言っておけば」「ステージ直前で、勘違いしている未央に気づいていれば」「傷ついた未央に『宣伝していないからあれで十分』『足を止めてくれたお客さんが居たというだけでも上出来』『お客さんの数ではなく自分の力を出しきれたかが問題』とでも言っておけば」。たった一言で未央が救われた可能性はいくらでもあるけど、この男はその未来を選択できなかった。未熟者め。辛いな。
 考えてみりゃ、3話でド緊張している場面もPは見ていないんだな。「ポップアップが合ってないから対処しよう」とはしたけど、三人の緊張そのものに対してなにか手を打ってたわけじゃない。眼で観たものにしか対処していない。6話でもちょっとした勘違いの発言の場に立ち会ってるわけじゃない。間が悪いといえば悪い。


 歌に思わずリズムを取っちゃったり、衣装に感激しちゃったり、コイツはコイツなりにこの三人のことを好きになってるんだ。

それが、バッドコミュニケーションを出して引退の危機。辛いな。


(この表情といい、部長の意味深な発言といい、やっぱこいつは過去に誰かのプロデュースを失敗してんじゃないだろうか。)
 3話や5話でPが慎重派であることが示唆されてたけど、2話で集合写真への参加を断ってることがなんかまだ引っかかるんだよな。女の子の扱いがおっかなびっくりというか。そういえば1話で凛に「キミが~」って言うシーンの目線のキョドり方も気になる。

いつも一言足りない、という以前に、なんだかプロデュース対象に対して上手く踏み込めていない。何が壁になっている? コイツの過去に何がある? そして俺はなぜ野郎の心情を一生懸命慮ってる?

 いや、実際、ちょっとしたボタンの掛け違いでしかないんだよ。
 Pはこのステージを『一歩目』だと言った。未央はあのステージを『一歩目』だと思ってる。未央の勘違いに気づかなかったことも含め、ほんの少しのすれ違いだけなんだ。

「見つける、育てる」「心通わせる 感動の共有」「そして花開く」……。心通わせられてないし感動の共有もできてないんだよなあ。哀しいな、未央もPも。

○ラブライカ、卯月と凛

 ラブライカの二人や、あるいはもしかしたら凛のように「目の前のステージに集中する」「お客の数じゃなく自分たちの実力を出しきるか否か」という答えを持つのが正しいのか、未央のように「お客さんたくさん集めて盛り上がる」のが正しいのか。現時点で正しいのは前者なんだろうな。新人の初舞台として正しい目標設定をして、そして実際に正解したのはラブライカの二人だ。ラブライカを主人公として6話を見るとまた違った景色が見える。とすればやっぱり間違えてるのは未央一人だ。それ故に孤独が際立つ。哀しい。寂しい。


 凛が未央と一緒に勘違いしちゃってるのは、しょうがないよね。凛はまだまだ「アイドルってこういうもの」を知らない。


 でも、実際に舞台に立って、現実を知った。ここの凛の表情がいい。
「ああ、初舞台ってこういうものなんだな」
「未央も私もちょっと勘違いしちゃったんだな」
「とすれば、未央は今すごく傷ついてるんだな」



未央に共感しているわけではないけれど、未央の苦悩を『知っている』のはこの段階で凛だけだ。ほんの僅かの希望。

 そしてこの睨みつけ。もっと蔑んでくれ!

「お前そんなことしか言えんのかい」「もっと言葉を選べなかったんかい」「あそこで励ましてあげるべきだろが」「何で追いかけないんじゃこのボケが」っていう睨めつけ。未央をそんなにも想ってたんだな。一番の仲間であり、リーダーであり、最も身近なアイドルだからだね。4話もそうだったけど、凛は「アイドルってこういうもの」を卯月と未央を通してしか知らない。その未央を否定されたわけだ。それは凛がこれから進んでいく道を否定されたのに等しい。何しろ、卯月と凛にもPの「当然のものです」が「お前に力がないからだ」に聞こえてるんだ。こんな顔もする。


 「笑顔に自信あり」のはずなのに、卯月は未央に引きずられてその唯一の自慢のはずの笑顔を喪う。

今回2人とも未央に頼りきりになっていて、アイドルというものを良く知らない凛はともかく、卯月ですらもが未央の勘違いに気づかない。あまつさえ未央に引きずられて笑顔を失うし、さらに動揺してミスをしている。三人の中で一番根が深いのは卯月かもしれない。


○実はそこら中にある希望
 未央に希望がないわけじゃない。というか、理想を持ってるというのは素晴らしいことだよ。それが美嘉からの借り物であっても。

あの美しかった「たったの小さな一歩」は、遠いかもしれんが未央の理想の源泉になっているはずなんだ。5話も含めて彼女たちシンデレラプロジェクトは「輝く日を描き始めた」。夢は夢じゃ終われないんだろ?
 Pはこのステージを「一歩目」だと言った。曲がりなりにも一歩目は踏み出したんだ。小さな一歩だけど精一杯輝くんだよ。仲間もライバルも先輩もいる。みくなんか未央のあんな姿を見たらぶん殴ってでも止めるだろう。希望はそこら中に転がっている。
 今回の未央は誰に対しても孤独だから、逆に誰が未央を救ってもいい。未央や凛、みくにゃんでもいいです。ちひろさんや部長だっていい。Pが救う未来だけが何故か見えないけど、だからこそ見てみたくもある。物凄く強引だけどまだ出てきてない150人くらいのアイドルの誰かが出てきて未央を救ったっていいんだ。いきなりヘレンさんが出てきて「あの3・40人の前で笑顔を作れないで世界レベルなんて笑わせるわ」とか言い出したら俺は平伏拝礼するぞ。
 逆にむしろ、Pへの信頼を完全に失った凛のほうがややこしいかもしれない。そして、卯月の問題はそれ以上に根深いかもしれない。それに比べりゃ、未央を救える人はそこら中に居る。それがアイドルマスターシンデレラガールズだ。


ヒールが折れてしまったガラスの靴も、魔法で直してやればいい。

希望はそこら中に転がっている。階段を駆け下りて逃げた未央のハイヒール、まだダンスを踊りづらく感じるブーツを、いつか魔法で変えられるといいな。



 中編では卯月と凛、そしてラブライカについて。







 佳きアイマスライフを。
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ありがとうgouzouP。未央ファンとして今はそれしか言う言葉が見つからない。
有り難う……御座います。
17分前
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