(英エコノミスト誌 2015年2月14日号)
ギリシャの新政府は有権者を満足させながら、債権者と妥協することができるだろうか?
アレクシス・チプラス氏と同氏が率いる急進左派連合(SYRIZA)は、野党時代に1年以上かけて政治要綱を準備した。
80を超える委員会が、ギリシャ経済のさまざまな産業を是正するための具体的な提案を行う責任を負っていた。
権力を得た時のために計画することと、権力を行使することは別ものだ。特に国がギリシャほど深い穴にはまっている時はなおさらだ。
妥協の糸口が見えない交渉
SYRIZAの計画は、完全に実施された場合、歳入の大幅な減少と社会的支出の大幅な増加をもたらす。だが、多くのギリシャ人は、減税や支払い猶予を当てにして、先月の選挙の前に税金を支払うのをやめた。政府の歳入は1月に年率で20%以上減少した。元財務相によると、2015年予算は3月末までに狂う可能性が高いという。
こうした状況は、ギリシャの債権者に受けが悪い。何しろ債権者による2450億ユーロ(2770億ドル)の救済は、散財や政策撤回ではなく、緊縮策と改革を想定したものだ。ドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相は2月10日、ギリシャが2月28日に期限を迎える同国の救済策の延長を求めないのであれば、「それで終わりだ」と述べた。
ギリシャがユーロ圏の財務相らに自国の計画を示した2月11日の会談は混乱状態のまま幕を閉じ、実りある議論に関するお決まりの声明さえなかった。今では首相の座にあるチプラス氏は2月12日にドイツのアンゲラ・メルケル首相と会談する予定になっており、緊迫したやり取りになるのは確実だった*1。
何らかの合意が早期に見いだされなければ、国際通貨基金(IMF)の債務が3月に期限を迎える時に、再びギリシャのデフォルト(債務不履行)が迫ってくる。
根本的なところでは、問題は単純だ。ギリシャは借金を返すだけの収入がないのだ。金融危機が始まってから、ギリシャ経済はどの先進国よりも大幅に縮小している。2008年から2014年にかけて、経済の債務返済能力を示す大まかな指標である名目国内総生産(GDP)は22%減少し、欧州のどの病んだ国よりはるかに大きな落ち込みを記録した。
*1=12日のEU首脳会議は成果がなく、16日のユーロ圏財務相会合も物別れに終わった
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