店舗スタッフ(57)は「160包入りのコーヒーミックスには無料サービス品としてコーヒーミックス20包やマグカップが付いているが、会計を済ませた後、無料サービス品だけを持ち帰り、商品だけ返品する客が1日3人くらいいる」と語った。レジのスタッフが「無料サービス品も一緒に返品しなければならない」と言うと、こうした客たちは「もともと付いていなかった」ととぼけたり、逆に抗議したりするケースが多いため、スタッフもあえて見なかったふりをするという。
同じ店のチキンナゲット試食コーナーで働くキムさん(41)は「先週日曜日夜に家族連れが試食コーナーを歩き回って試食品を食べあさったため、ほかの客から抗議があった」と語った。
ソウル市内のある女子大に近いモーテル街からは「宿泊に来た学生が部屋にあるものを盗んでいくため商売にならない」という業者たちの恨み節が聞こえてくる。客室22室のあるモーテルでは1日もたたないうちにシャンプー・ボディソープ・くしなどがなくなり、部屋を掃除するたび新品を置くのが日常茶飯事になった。
モーテル経営者は「大学街の近くでは一人暮らししている学生が多いからか、生活用品を持ち帰られることが多い」と話した。スリッパやベッドの上に掛ける高級カバーまで週1回のペースでなくなり、コンピューターのマウスや本体の中の内部装置まで外して持ち帰る人もいるという。
モーテル経営者のカンさん(38)は「モーテルの新規オープンやリニューアル情報がスマートフォンのアプリですぐに伝わる時代なので、これを見て、いいモーテルばかり訪ね歩き、物を持ち帰る悪質な客が多い」と教えてくれた。モーテル側の対策としては結局、質の低いシャンプーを置いたり、使い捨て製品を使うしかないというわけだ。
近くの別のモーテルの支配人(31)は「8000ウォン(約870円)以上の皿が2日に1回のペースでなくなる。ピザやパスタを簡単に入れて部屋で食べることができるフードバーをフロントに設けたが、皿がどんどんなくなるので、やめるべきかどうか悩んでいる」と嘆いた。
建国大学のイ・スンシン教授(消費者情報学)は「自分が無料サービスを独占すれば、ほかの消費者に被害が出て、長い目で見れば自分にもその影響が返ってくるということに気付くべきだ。今や自分一人だけでなく社会のことを考える『成熟した消費』のあり方を考えなければならない時期だ」と語った。