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社説

セントレア10年 堅実に飛び続けるには

 「空の玄関口」の競争は激化する一方だ。堅実経営を誇る十周年の中部国際空港(セントレア、愛知県常滑市)も、地域全体で利用を押し上げなければ、国際拠点空港の地位は危うい。

 初の民間運営空港としてトヨタ自動車出身の社長を迎え、一年目からいきなり黒字を達成。二〇〇八年秋のリーマン・ショックのあおりを受けたが、一三年度の連結売上高は四百六十億円で二年連続の増収だった。

 建設費用が高い埋め立て空港だが、累積債務もない。華やかさはないが、決算上は「優等生」と言えるだろう。

 ただ経営規模では、成田の売上高千九百九十四億円、関西(伊丹を含む)の千二百六十八億円と比べると見劣りは否めない。

 さらに国は、二〇年の東京五輪に向け、羽田空港を大幅に機能強化する方針だ。

 そこで問われるのは、中部が開港当初の意気込み通り、成田、関西に次ぐ国際拠点(ハブ)空港として生き残れるかどうかだ。

 そもそも中部地方は交通の便がよく、空港の立ち位置が難しい。新幹線、高速道路網に加え、二七年にはリニア開通も予定される。福岡や那覇のように、必ずしも長距離移動客の需要を空港がすくいあげるわけではない。

 中部財界には、中部空港の競争力を上げるために「二本目の滑走路を」という待望論が根強い。二十四時間空港として使いやすい空港造りを目指すのは当然だが、滑走路が航空需要を増やす特効薬ではない。

 福岡にも二本目の滑走路ができるが、年間旅客数は中部の二倍の約二千万人。中部に滑走路二本は現状では過剰投資といえ、せっかくの健全経営を手放しかねない。利用客を増やすのが先決だろう。

 空港側の努力だけで増やすのは限界がある。海外からの訪問客に、名古屋から入ることのメリットをどう売り込むのか。観光や産業の面から中部地方全体が重層的に取り組む必要がある。

 中部の課題は、出国する利用者が愛知、岐阜、三重の三県に偏っていることだろう。比較的近い長野県や静岡県の客の七〜八割を、成田や羽田、関西に逃している。首都圏や関西圏に比べ、ただでさえ少ない後背人口の「取りこぼし」をどう防ぐのか。空港へのアクセスは十分なのか、考えるべき点は多い。

 ハブ空港としての存在感はその先に見えてくるだろう。

 

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