「全中の監査廃止が、なぜ農家の所得倍増につながるのか」「政府の規制改革会議は現場を無視して提案している」「こんな改革案が通ったら日本の農村が壊れてしまう」。農水大臣も説明できない安倍政権の「農協改革」案に、地域の生産現場と自民党農林議員から疑問の声が噴出している。政府の真の狙いとは何か。そして米国商工会議所はなぜ、JAバンクとJA共催に注目するのか。一方、農業現場は高齢化と担い手不足が進む……。農村を豊かにし、農業を再生する改革のあり方を探る。
◇農協VS.官邸
◇安倍農協改革案、党内は総スカン
◇狙われている400兆円資産
◇農村に必要なのは競争よりも協同
農協VS.官邸
「地方創生という大きな流れに逆行し、地方切り捨てになる改革は避けるべきだ」
1月20日、東京・永田町の自民党本部。9階の会議室で開かれた「農協改革等法案検討プロジェクトチーム」(吉川貴盛座長)の初会合に、同党の約130人の国会議員が詰めかけた。
廊下では、記者たちが部屋から漏れ出る発言に耳を傾けている。会場には緊張感が充満し、冒頭に農協改革案の説明をした農林水産省の官僚に、厳しい意見を次々と浴びせた。遅れて到着した議員たちの表情も硬い。それも無理からぬことだ。ある農林議員は、会議の前にこう話していた。
「こんな農協改革案が通ったら、日本の農村が壊れてしまう……」
伏線は16日にあった。中東への外遊に旅立つ安倍首相は、羽田空港で記者団の質問に応じた。政権が取り組む農協改革について「中央会(JA全中)は脇役に徹していただきたい」と、改革反対派を牽制したのだ。「岩盤規制」の本丸と位置づける農協改革への決意を、あらためて示した格好だ。
安倍農協改革案、党内は総スカン
焦点は、JA全中が全国約700の地域農協に対して持つ「指導・監査権」の廃止だ。政府は農業・農村所得の倍増を目指す。農協法で位置づけられているこの権限こそが、地域農協の自由な営業活動を阻害していて、「農協役員の経営者としての自覚、責任感が薄くなる」(菅義偉官房長官)ものと考えている。
首相官邸がこの農協改革にかける意気込みは強く、イチゴ農家の長男である菅官房長官は「安倍さん以上に農協改革に熱心」(全国紙記者)とも言われている。
だが、自民党は一枚岩ではない。改革案の骨格は2月前半にまとめる見通しだが、20日の初会合では異論が相次いだ。
「(監査廃止で)農業所得がなぜ増えるのか」
「過疎地域の生活に多大なる影響を与える」
結局この日は、26人の議員が発言を求め、1時間半の予定が40分以上もオーバーした。意見集約が難航することは必至だ。
現場の農家も改革案に怒っている・・・