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【社会】

「女性は不利」 18.8% 旧態依然の家族観足かせ

 【女性は不利?】東京都内市区町村の全女性議員アンケートで、「女性であることで不利と感じたことがありますか」という設問に対し、42人(18.8%)が「ある」と答えた。区議は23人(18.2%)、市町村議は19人(19.5%)。5人に1人がハードルに直面しながら議員活動をしていた。

    ◇

 清瀬市の宮原理恵市議(42)=一期=は二児の母。下の娘は五歳で、保育園に預けられるのは夜七時まで。会議が長引くと、席を中座して迎えに急ぐ。日曜や休日に視察などの公務が入ると、都外でも子どもを連れて行く。

 「子育て中は不利。体力を使うし、子どもにも負担をかける」

 議会最終日の夜、ある議員同士の懇親会に娘と参加したが、男性市議に「子どもがいては盛り上がれない」と不評だった。最近は欠席している。「男性並みに働けることが前提にされている」とこぼした。

 アンケートの自由記入欄には、家事や育児との両立の苦労や、その体験がつづられている。政治家という仕事と、「女は家庭に」という旧来の家族観のはざまで悩む姿が浮かぶ。

 ある区議は「議員の仕事は日曜も夜もある。女性が一人で家事や育児を担っている日本では、女性が長時間働く仕事に就くのは難しい」と指摘した。別の区議も「家庭があるのに(議員をやるなんて)、という雰囲気を感じる」と打ち明け、父親にも「旦那さんは許してくれているの?」と聞かれたという。ある市議は「女性は家事や育児で時間が取られるため、会派内でも男性よりも調査力が弱く、能力が低いとみなされる」と不満を漏らした。「議員は地域の口利きで、それができるのは男性という地域や職員の思い込みが強い」(市議)との回答も。

 また、ある区議は「政治に関わることは男と対抗すること、女を捨てることだ、という社会の空気」を感じると明かす。「議員をやるような気の強い女を嫁にしようとする男性は少ない。婚期を逃す」(区議)

 「出産、子育て中の議員が増えれば、議会が子ども連れの区民に開かれ、住民参加が前進する」と変化を期待する。

◆「妻」は大変政策づくり支援必要 法政大教授(地方自治) 広瀬 克哉氏(56)

<−女性には厳しい世界なのか。>

 大変だと思う。男性議員なら妻が育児や家事をして議員活動の手伝いもしてくれるが、女性議員は「議員」と「妻」の両方の役割を一人でこなすことを世間から求められる。

 さらに、追い打ちを掛けるのが「物事を実質的に決めるのは夜に酒を酌み交わしながら」という慣習が議会に根強く残っていること。議員同士の話し合いだけでなく、市長や幹部職員ら行政側との水面下の調整も酒の席。家事や育児を抱える女性は相対的に参加しづらい。本当は男性議員だって、付き合い切れないと思っている人はいるのだが。

<−海外の地方議員の生活は。>

 議員活動へ、手厚いサポートを受けられる。アメリカでは、地方議員一人に公費で三人ぐらい政策秘書が付き、大勢の議会事務局員が支える。イギリスでは、議員に行政執行権があるため、行政職員をスタッフとして使える。だから、金融ディーラーなど忙しい本業を持ちながらパートタイム感覚で議員になれる。

 ところが、日本の地方議員には公設秘書はいないし、ブレーンとなるべき議会事務局の体制も乏しい。政策の情報収集から分析、判断まで全部、自分でやらざるを得ず、議案の勉強や研修会だけでも年間二百日ぐらいフルタイムで働かないと務まらない。労働時間の定めもなく、まじめに仕事しようとすると、際限なく労力と時間を使ってしまう。

<−変えられないのか。>

 慣習や環境を変えるためにも、女性議員を増やし、その中からベテラン議員を育てることが大事だ。政治の世界で物を言うのはなんといっても当選回数。ベテランと若手の女性議員がうまく連携して「これからの議会はこうならなければ」と仕掛けていく。

 二十年前は無理だったが、今は最長老が市民派の女性議員という議会もあり、可能な時期に来た。女性の目線で、議会を常識的な世界へ変えてほしい。

 

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