中国が対外協調を重視する新たな外交指針を示したことは歓迎できる。今年は戦後七十年の節目となる。周辺国との摩擦を生じさせるような強硬姿勢とは真に決別し、対話路線を貫いてほしい。
春節(旧正月)を前に、中国の対外姿勢に明らかな風向きの変化が感じられる。例えば本紙の上海支局には、中国各地の地方政府から新春を祝う集いの招待状が舞い込む。
一年前を振り返れば、旧交を温める中国流の紅い拝年(祝新年)カードのやりとりを、一方的に途絶えさせた政府関係者もいた。凍(い)てつく日中首脳の緊張関係が、地方の交流にも寒風となって吹きつけているようだった。
転機は昨年秋の中央外事工作会議であろう。八年ぶりの重要会議で習近平国家主席は対外協調路線への転換を打ち出し、「協力と互恵を核心とする新たな国際関係」を目指す外交指針を示した。
むろん、習氏は「領土主権や海洋権益を守る」と強調した。だが、これまでのように南シナ海をめぐり東南アジア諸国との摩擦を高め、尖閣問題で力を誇示するかのような、一方的で危険な強硬姿勢はぜひとも改めてほしい。
習政権は「反腐敗」を旗印に国内の政治基盤固めを急いでいる。だが、経済の持続的発展なくして国内の安定はあり得ないだろう。
外交面での協調路線への転換は、世界第二の経済大国となった中国が、国際経済との密接な関係を見据えたうえで、周辺諸国との良好な関係を築こうとする冷静な判断に基づくものと期待したい。
対日外交では気がかりな動きもある。戦後七十年の今年、中国政府は国家記念日に指定した九月三日の「抗日戦争勝利記念日」に合わせ、外国首脳も招いて北京で軍事パレードを計画している。
過度に抗日の歴史を強調し中華民族の団結を訴える舞台とするようなことがあれば、日中首脳会談の実現で「戦略的互恵関係」に戻る一歩を踏み出したばかりの両国関係に再び暗雲が漂いかねない。
歴史問題を複雑化させるべきでないのは、日本側も同様である。安倍晋三首相は戦後七十年の「首相談話」を出す構えだ。歴代内閣の立場を「全体として引き継ぐ」としているが、アジア諸国への植民地支配と侵略を認めておわびした「村山談話」の立場をきちんと貫くべきである。
戦後七十年の今年こそ、日中双方が対話により相互不信を乗り越える“元年”としてほしい。
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