瀬戸内海に来ています。
気持ちがいいですね。
こんにちは。
安田成美です。
今日の「にっぽん紀行」の舞台はあちら。
香川県の沖ノ島です。
昭和の時代多くの若い女性が花嫁衣装を身にまといこの船で島に渡りました。
瀬戸の花嫁と呼ばれた彼女たちは大勢の人に祝福を受ける事で島の一員に加わりました。
花嫁たちはどんな人生を送ってきたのでしょうか?見に行きましょう!雨が降っとるか濁っとんちゃうん?
(徳子)今日な昨日と今日は澄んどんやけど…。
(久冨)コーヒーでも飲んでいったら?ごめんなさい。
ちょっと急いでるんで。
ああ本当。
顔だけちょっと…。
(久冨)せっかく来たのに。
瀬戸内海に浮かぶ細長く小さな島。
周囲僅か2.8キロ。
香川県沖ノ島が今回の舞台です。
22世帯57人が暮らしています。
島の男たちはほとんどが漁師さん。
昔から結婚相手は島の外から迎え入れてきました。
花嫁は船で嫁入りするのが習わしでした。
(「瀬戸の花嫁」)・「瀬戸は日暮れて」沖ノ島に多くの花嫁がやって来たのは高度経済成長期の昭和40年代。
・「お嫁にゆくの」この光景を歌った「瀬戸の花嫁」は日本中で大ヒット。
若い女性たちの憧れとなりました。
島の人たちは見知らぬ土地に来てくれた瀬戸の花嫁を盛大に祝福し仲間として温かく迎え入れました。
しかし年々島を出る若者が増えていく中平成になってから瀬戸の花嫁は一人も現れていません。
沖ノ島にいる瀬戸の花嫁は現在17人。
漁を終えた夫を迎えるこちらの女性もその一人。
29年前瀬戸の花嫁として嫁いできました。
夫が取ってきた魚を手際よく扱う徳子さん。
この地域でゲタと呼ばれるシタビラメです。
干物にして注文先に卸すのが徳子さんの日課です。
私全然魚触った事ないです一度も。
恥ずかしい話本当にお嫁に来るまで。
漁師の妻としての仕事は全て先輩の瀬戸の花嫁から教えてもらいました。
アカだ!おいしいよ!今ではナマコもこのとおり。
26歳で瀬戸の花嫁になった徳子さん。
島を挙げて温かく迎え入れられた事が今も忘れられない思い出です。
みんなが「きれいね」ってその時はよ。
その時はうそでも「きれいな」って言うてくれた。
自分が主役やったからすごいちょっといい気分やったな。
徳子さんは「瀬戸の花嫁という習わしがあったからこそ島の人全員と家族になれた」と言います。
結婚から30年そのつながりを支えにして3人の子どもを立派に育て上げました。
今が一番ね幸せなんですよ。
2人がこう何かこんなんして晩こんなするんが一番好きかな。
最近そんな感じ。
1月中旬。
徳子さんは花嫁仲間と集会所に向かいました。
乾杯!
(一同)乾杯!島の住民のほとんどが参加する恒例の新年会です。
瀬戸の花嫁という同じ体験をして島の一員になった女性たち。
もらうわ。
これ2つもらうわ。
その後も共に年を重ねひときわ強い絆で結ばれてきました。
(久冨)そうや。
一番ピークや。
ご苦労さまでした。
ご苦労さまです。
かつてのにぎわいを懐かしむ花嫁たちです。
誰か一緒に帰ろうよ。
帰る?怖い?そこまで。
翌日徳子さんはフェリーの到着を待っていました。
翔ちゃんただいま。
お帰り。
高松市内に暮らす息子の裕基さんが家族を連れて新年の挨拶に帰ってきたのです。
実は裕基さんと妻の美和子さんは結婚したものの式を挙げていません。
徳子さんは2人に式を挙げてほしいと思っていました。
お帰り。
徳子さんはこの日初めて自分の瀬戸の花嫁の写真を見せました。
え〜すご〜い!木の船。
(美和子)すご〜い。
これみんなするんですか?沖ノ島の人は。
ええ〜!こんなんやったんでっていうんを見してあげようかなと思って。
この船とこの白無垢を撮りたいっていうカメラマンがいっぱいおった。
徳子さんは瀬戸の花嫁となった事がその後の人生の支えになったと勧めますが…。
擦れ違う思い。
徳子さんの頃とは考え方が違うんですね。
その日中に帰るという息子夫婦。
徳子さんは親友に息子の妻を紹介したいと電話をかけました。
もしも〜し。
ごめんね。
あのね今裕基たちが来とんや。
そんでちょっと紹介したいから。
今どこですか?小さな島はどこでも歩いて数分。
親友の家を訪ねます。
裕基たちが…2人が…。
久しぶり裕君。
瀬戸の花嫁の…
(泣き声)あ〜ごめんごめん。
奥さん。
(美和子)初めまして。
(久冨)初めまして。
よろしくお願いします。
(久冨)はい。
よろしくお願い致します。
(裕基)またよろしくお願いします。
せっかく来たならあがってこうや。
コーヒーでも飲んでいったら?ありがとうございます。
ごめんなさい。
ちょっと急いでるんで。
ああ本当。
顔だけちょっと見せに来ました。
(久冨)はいせっかく来たのに。
ありがとうございます。
瀬戸の花嫁たちの思いは若い世代にはなかなか届かないようです。
おはようございま〜す。
息子夫婦が帰った4日後。
徳子さんは親友の三代子さんと買い物に出かけました。
2人は同じ年頃の子どもがいた事もあり花嫁仲間の中でも特に親しくしてきました。
あと何にしようかな。
牛乳と私あれ…。
子育てを終えた2人。
ここ数年は旅行に出かけるなど時間にゆとりも生まれました。
ところが去年の暮れ三代子さんの義理の母が体調を崩し介護が必要になりました。
ばあちゃんお昼!ちょっと熱いかなまだ。
大丈夫。
三代子さんは食事や風呂の世話に追われるようになりました。
おいしいですか?えっ?おいしいですか?あ〜よかった。
こんにちは。
こんにちは失礼します。
週に2回ある診察の日です。
サヨコさんこんにちは。
義理の母には認知症の症状も出始めています。
三代子さんは外出する機会がめっきり減りました。
携帯にメールが届きました。
徳子さんからでした。
徳子さんが「終わった?」って。
「まだまだです」っていこうか。
もう…しんど〜い…。
診察の日を覚えていた徳子さんが気にして連絡をくれたのです。
あ〜めっちゃ散らかってる。
多い日には30回以上。
徳子さんとの何気ないやり取りが三代子さんの息抜きになっています。
ふふ…毎日毎日。
ない日はない…ない日はないね。
すぐLINEがいきますね。
それで話してる。
離れてもひっついてるんですね。
おっかしいな〜。
三代子さんの家に花嫁仲間が集まってきました。
おはようございます。
(久冨)おはよう。
三代子さんが徳子さんの息子夫婦にお祝いを贈ろうと声をかけたのです。
こんなんもええね。
うんうん。
ちょっと玄関に飾っても映えるよ。
え〜っとあくまでも徳ちゃんにはないしょな。
どうやって呼びに行く?瀬戸の花嫁たちはうれしい事がある度にこうしてみんなでお祝いをしてきました。
5日後。
ちょっとお邪魔します。
はいどうぞ。
慌ててぬくめたけど寒かったら悪いな。
ちょっと写メ撮ろうかな。
写メ撮らんでも後でじっくり眺めてくれたらええやん。
三代子さんたちが選んだのは幸運が訪れるといわれるガジュマルの木でした。
へえ〜…ちょっとすごいね。
徳子さん動画を撮り始めました。
息子の妻の美和子さんにお祝いをもらった事を伝えます。
ヨシオカサチコさん。
シマモトヨシコ様の3人で頂きました。
瀬戸の花嫁たちからの温かい笑顔のメッセージです。
シマモトヨシコさん。
ショウちゃんのお母さんです。
みんなの願いは美和子さんの花嫁姿。
でもこのごろってなほらもうずっと着物ばっかりやったやん。
ドレスってどうやろ?あっこで?船にドレスか?船にドレスは合わんかもな。
そこへ…。
「ムービー見ました。
ありがとうございます。
すごくうれしいです」って。
「お母さんの周りの人皆さん優しくて親切で」ってお嫁さん。
美和子さんからの返事です。
「お母さんがすてきだからだと」。
(笑い声)これはちょっとカット。
すてきやん。
「私もお母さんのような人になりたいです」。
ええ言葉やん。
「皆さんにもお会いしたいな。
お礼を言います」書いとる。
かわいいな。
うん。
1月末。
結婚式に乗り気ではなかった美和子さんが写真館にいました。
沖ノ島の母がちょっと海をバックとかに撮ってたり何か花無垢姿で撮ってるのを見てちょっと羨ましいなと思って…。
まんま瀬戸の花嫁ですね?そうですね。
じゃあ船乗ってとか?いや…。
そこまではしないですか?そこまでできないですけど…そういうイメージで…。
美和子さんは結婚式は挙げないまでも花嫁写真だけは撮ろうと決めました。
瀬戸の花嫁たちの優しさに触れ心が動かされました。
香川県沖ノ島。
徳子さ〜ん!あ〜気持ちいい。
花嫁たちはいつものように一緒に散歩に出かけます。
同じようにずっと年取っていって同じように分かってもらえて…。
一人になったら生きていけない…。
(笑い声)せっかく今涙が出そうになったのに。
ハハハ!そうやん。
一人になったら生きていけんやんもう。
私もそんなん考えた事ないから。
まあないと思うけどね。
瀬戸の花嫁たちは今もそしてこれからも寄り添って生きていきます。
2015/02/11(水) 19:30〜19:55
NHK総合1・神戸
にっぽん紀行「“瀬戸の花嫁”はいまも〜香川 沖ノ島〜」[字]
昭和の名曲「瀬戸の花嫁」のモデルになった島、沖ノ島。子育てや介護を行うなかで結びつきを強めてきた元花嫁たちはいま…。
詳細情報
番組内容
瀬戸内海に浮かぶ香川県、沖ノ島。昭和40年代から50年代にかけて、多くの若い女性たちが「瀬戸の花嫁」として渡ってきた。周囲3キロの小さな離島で、元花嫁たちは子育ての悩みや嫁姑問題、義理の親の介護などを、互いに協力して行ってきた。あれから30年あまり。還暦を迎えようとする現在も変わらず、辛い時には助け合い、嬉しいことがあれば喜びを分かち合っている。絆を深め合う元花嫁たちのいまを見つめる。
出演者
【出演】安田成美
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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