赤い大地 ナミブ砂漠に生きる[SS] 2015.02.11


まるで別の惑星に舞い降りたかのような風景。
ここはアフリカ南西部に広がるナミブ砂漠。
地球上で最も乾燥した場所の一つです。
こんな砂漠にも数多くの命が息づいています。
一体どうやって命をつないでいるのでしょうか。
数々のミステリーが秘められた赤い砂漠。
その不思議の世界に迫ります。
世界で最も古いとされる砂漠があります。
その歴史は500万年とも5,000万年ともいわれています。
アフリカ大陸の南西部。
広大なナミブ砂漠が果てしなく続いています。
ナミブ砂漠は海岸沿いに発達した珍しい砂漠です。
日中の気温は40度。
年間の降水量は50ミリにもなりません。
時には一滴の雨すら降らない年もあります。
ここは地球上で最も乾燥した場所の一つです。
ナミブ砂漠の存在をひときわ際立たせているものがあります。
それは砂の色。
内陸部に行けば行くほど砂丘は美しい赤みを帯びていきます。
これは砂に含まれる鉄分によるもの。
長い時間の中で鉄分は酸化されて赤く染まります。
一見すると命の気配すら感じられない不毛の大地。
砂丘を走る不思議な生き物がいます。
正体はカメレオン。
ナマクアカメレオンという世界で唯一砂丘に暮らすカメレオンです。
体長は15センチほど。
ナミブ砂漠固有の種類です。
のらりくらりといかにもカメレオンらしい歩き方。
ところがいきなり走り出しました。
素早い昆虫を捕らえるためにこんなスプリンターに進化したのです。
続いて現れたのはヘビ。
毒ヘビのペリングウェイ・アダーです。
体をくねらせて斜面を登ります。
地面に接する面積を減らし熱い砂に触れないようにしているのです。
砂の中に潜り始めました。
こうして通りかかる獲物を待ち伏せします。
ナミブ砂漠はまた多彩な表情を持っています。
海岸沿いの砂丘から内陸に入ると僅かな植物が生える平原へと変わります。
そして岩山がそびえる独特な砂漠が姿を現します。
こうした場所には大型の動物も暮らしています。
これはゲムズボック。
オリックスとも呼ばれるウシの仲間です。
乾燥に強く必要な水分のほとんどを食べ物の草から得ています。
こちらはアンゴラキリン。
この周辺には350頭ほどのキリンが暮らしています。
地上最大の動物アフリカゾウです。
その名も砂漠ゾウ。
乾燥地で生きている独特なゾウです。
砂漠にゾウがいるとは驚きです。
草原に暮らすゾウの群れは普通10頭を超えますが砂漠ゾウは5頭前後。
僅かな植物を食べ尽くさないよう群れの規模が小さいのが特徴です。
赤ちゃんゾウです。
生後2週間ほどでしょうか。
まだ足元がおぼつきません。
栄養が乏しいため砂漠ゾウの出産の頻度は普通のゾウに比べかなり低め。
こうした赤ちゃんの姿はとても珍しい映像です。
ある日の事。
ゾウたちは意外な場所にいました。
ここは高さ300メートルほどの小高い山。
ゾウがこれほど急勾配の山を登る例は世界でもあまり知られていません。
ゾウのお目当てはこれ。
コミフォラという植物です。
一見すると枯れ木にしか見えないコミフォラ。
実は甘い樹液と水分をたっぷり含んでいます。
ゾウはそれを知っていてあえてコミフォラが生える山の斜面へと足を運んでいたのです。
乾燥の地で生きるため砂漠ゾウが身につけてきた生き残りの知恵です。
海に面したナミブ砂漠。
海岸にはまた別の動物が暮らしています。
オットセイです。
名前はミナミアフリカオットセイ。
大きなオスだと体重は300キロを超えます。
たくさんのオットセイが海岸を埋め尽くしています。
ナミブ砂漠の海岸線は世界最大の生息地となっているのです。
その数は100万頭近くに上ります。
でも砂漠とオットセイというのは何だか不思議な組み合わせだと思いませんか?実はナミブ砂漠の沖には栄養分に富んだ冷たい海流が流れています。
その養分を糧にプランクトンが大発生したくさんの魚が育ちます。
魚が主食のオットセイにとってここは楽園なのです。
12月群れは出産の季節を迎えます。
あちこちで小さな黒い赤ちゃんの姿が目につくようになります。
(鳴き声)ジャッカルです。
この時期になると頻繁に海岸に姿を現します。
狙いは生まれたばかりの子ども。
母親は身をていして我が子を守ります。
どの動物たちも生きるのに必死なのです。
(鳴き声)冷たい海に面した不思議なナミブ砂漠。
実は砂漠に暮らす生き物たちもまたこの海と深い関係があります。
数日に一度海から砂漠に向かってあるものがやって来ます。
霧です。
海で生まれた霧が風に乗って砂漠に流れてくるのです。
赤い砂漠は一面の白い世界となります。
砂漠を覆う厚い霧。
冷たい海と砂漠という奇跡の組み合わせが作り出した幻想的な光景です。
現れたのはヤモリの仲間。
霧が顔に当たり水滴となったものをなめ取ります。
こうして貴重な水分を得ているのです。
海が与えてくれたつかの間の恵みです。
キリンやゾウもまた霧を利用します。
水滴のたっぷりついた植物を食べ水分をとるのです。
不思議な生き物たちが暮らすナミブ砂漠。
その中でもとりわけ風変わりな動物がいます。
ウサギのような大きな耳。
鼻はまるでブタのようです。
その名はツチブタ。
体長は1メートル体重は60キロにもなります。
ツチブタは警戒心がとても強く人目に触れる事はめったにありません。
これはその姿を捉えた貴重な映像です。
盛んに穴を掘っています。
ツチブタの主食はなんとシロアリ。
一日数万匹も食べます。
そして水分のほとんどもこのシロアリから得ています。
地下のシロアリを掘り出す時に使うのが鋭い爪。
僅か5分で1メートルのトンネルを掘ってしまいます。
このツチブタをちゃっかり利用する者がいます。
狙いはシロアリ。
自分では穴が掘れない鳥たち。
ツチブタのおこぼれを狙っているのです。
ここにはシロアリを主食にしている動物がほかにもいます。
サバクキンモグラです。
モグラに似ていますがモグラとは別の生き物。
あのツチブタの仲間です。
顔を砂につけてシロアリのたてるかすかな振動を感じ取ります。
アフリカ大陸で独自に進化してきた生き物なのです。
ナミブ砂漠に隠された不思議の数々。
その中でも極め付きのミステリーがあります。
大地を埋め尽くす無数の模様。
フェアリーサークルと呼ばれる世にも奇妙な現象です。
フェアリーは妖精という意味。
その名のとおりまるで妖精が魔法をかけたようです。
一つの円の直径はおよそ5メートル。
内側はきれいな砂地になっています。
一体誰が何のために作ったのでしょうか。
数十年にわたって数々の研究者たちがこの謎に挑んできました。
しかし決定的な答えは出ませんでした。
ところが2013年ついに有力な説が発表されたのです。
その答えは実に驚くべきものでした。
サークルの内側の砂を掘り返してみると奇妙な塊が出てきます。
中にいたのは…。
スナシロアリというシロアリです。
研究者が調べたところほぼ全てのサークルでこのシロアリが見つかりました。
シロアリの食べ物は植物です。
スナシロアリは特に植物の根を積極的に食べます。
根を食べられた植物はやがて枯れ風などで吹き飛ばされてそこが砂地になります。
スナシロアリは地下に作った巣から四方八方にトンネルを張り巡らせ少しずつ活動範囲を広げていきます。
こうして砂地の部分が拡大してサークルになったというのです。
大地の壮大なミステリーを生み出した正体。
それが小さなシロアリだったとすればまさに驚きの発見と言えます。
乾きに支配された赤い砂漠。
この大地がほんの一瞬ほほ笑む時があります。
雨です。
ナミブ砂漠では一年のうち僅か数週間だけ雨が降ります。
水を得て砂漠は劇的な変化を遂げます。
地面の中でじっと乾燥に耐えていた種が芽吹きます。
そして色とりどりの花が一斉に咲き誇ります。
1年に1度砂漠は別天地に姿を変えるのです。
僅か2週間だけの夢の世界です。
雨は砂漠の命にさまざまな変化をもたらします。
これはシロアリが作ったアリ塚。
塚を突き破って出てきたのは大きなキノコ。
あちこちから姿を現します。
このキノコを心待ちにしていた者がいます。
駆け寄ってきたのはチャクマヒヒ。
キノコには水分がたっぷりと含まれています。
雨が生み出した時ならぬごちそうです。
枯れ果てていた大地にも水が流れ始めました。
ゾウにとっては久しぶりの供宴の時。
あの親子がいました。
子どもは砂漠ゾウの一員として確かな一歩を踏み出したようです。
砂漠に現れたつかの間の楽園。
動物たちはかけがえのない時間をおう歌します。
赤い大地アフリカ・ナミブ砂漠。
そこには過酷な自然の中で必死にそしてひたむきに生きる命の姿がありました。
それはまた極限に生きる命のたくましさとその無限の可能性を教えてくれるのです。
2015/02/11(水) 10:25〜10:55
NHK総合1・神戸
赤い大地 ナミブ砂漠に生きる[SS][字][再]

赤い色をした神秘的なアフリカのナミブ砂漠。走るカメレオンや幻の珍獣ツチブタなど極限の地にも多くの動物が生きている。大地をおおうミステリーサークルの謎にも迫る。

詳細情報
番組内容
アフリカ南西部の海岸沿いに広がるナミブ砂漠には、まるで違う惑星に舞い降りたかのような神秘的な風景が広がっている。どこまでも続く赤い砂の海、大地にうがたれた無数のミステリーサークル、そして砂漠を包む不思議な霧。極めつきは奇妙な姿をした生きものたち。砂丘を走るカメレオン、水滴から水を得るヤモリ、ブタの鼻とウサギの耳を持つ珍獣ツチブタ。フェアリーサークルの謎と極限の環境に生きる動物たちの驚きの生態に迫る
出演者
【語り】上村典子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 3/2+LFEモード(3/2.1モード)
サンプリングレート : 48kHz

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