目次
前書き
twilog を見ると、ある御仁がある著名ネット民に対し、あるWEBサイトの修正を非常に熱心に求めています。このエントリはこの御仁の求めに応じるものかどうかは私には不明ですが、私なりの回答例(このWEBサイトの補足例)のような何かとしても、疾患概念であるMCS(Multiple Chemical Sensitivity、多種化学物質過敏状態)に興味を持ちの読者様のために、次の特徴を有するMCSに関するリンク集を私の独断と偏見で一部作成し、仮公開しました。英語資料への依存を少なくする方向(含日訳の付与)での作成を目指しています。熟練したニセ科学批判者各位におかれては、作成方針に違和感があるかもしれませんが・・・
(A)対象は日本のみならず海外も含みます。英語の論文、文書等は、可能であれば日本語訳や解説のあるブログ、コメント等にリンクしました。一次情報は必要に応じてリンク先における(一次情報への)リンクを利用してください。リンクは情報が入手容易なものをなるべく選んでいます。一方、本エントリの一部は化学物質過敏症、その他の話題となります。
(B)このエントリは、本文と余談から構成されます。これの利用法はMCS又は化学物質過敏症に関する情報収集等を想定しています。さらに、2013年6月頃からの、ネット上の一部であるMCS界隈における論争についても考慮し、リンク及び引用の内容を設定しています(私の知る範囲内においてですが)。
(C)私はMCS又は化学物質過敏症の患者であることを主張していません。さらに、私は医療従事者ではありません。本エントリの文章、リンク先又は引用の内容・エビデンスレベル等の評価は読者各位でご判断下さい。
(D)このエントリは、予告なく適宜改訂されることが有ります。改訂内容は具体的に示さないことがあります。次の見出し「リンク集」の右側に Ver.を示します。
(E)仮公開日は 2015-02-04 ですが、本公開時には日付変更の予定です。
(F)超長文に注意して下さい。目次作成及び本エントリ内リンクの充実により、さらに読みやすくしました。” ”部は短い引用です(本エントリでは通常の引用と併存します)。
-臨時追記- 現時点で本エントリはあくまでも仮公開段階(例えば一部リンクが機能しません)であり、早くとも本公開までは、本エントリの頻繁な改訂(追加・修正・削除等)を実施する予定です。一部の pdfファイルのリンクにおいて、一部のブラウザ環境では、正しく表示しないことがあります。ちなみに、私の PC 環境では、最新のブラウザ IE で正しく表示できています。
ちなみに、MCSはIEI(Idiopathic Environmental Intolerance、本態性環境不耐症 又は 本態性環境非耐症)とも呼ばれています。
リンク集 Ver. 0.2 (2015年2月4日仮公開)
(1)MCSに対する世界の医学会等の見解(例:存在、診断法)
(a) Multiple chemical sensitivities--public policy.文中に”It has been rejected as an established organic disease by・・・”[拙訳]確立された器質性疾患として・・・に拒絶されている と記述されています。
(b) 米国内科学会(American College of Physicians)のポジションペーパー
・NATROMの日記 見出し:アメリカ内科学会
(c) 米国医師会(American Medical Association)の公式見解
・NATROMの日記 見出し:アメリカ医師会
(d) 米国職業環境医学会(American College of Occupational and Environmental Medicine)のポジションステートメント
・忘却からの帰還
・NATROMの日記 見出し:アメリカ職業環境医学会の主張
(e) 英国王立医師協会によるアレルギー診療のガイドラインにおける、「もうひとつのアレルギー」≒MCSの記述
・NATROMの日記 見出し:英国王立医師協会
(f) カリフォルニア医学協会としてのコメント
・NATROMの日記 見出し:カリフォルニア医学協会
(g) AAAAI(American Academy of Allergy Ashthma & Immunology、[拙訳]米国アレルギー・喘息・免疫学学会)のポジションステートメント
このポジションステートメントにおける Position Statements項 を次に引用します。一方、AAAAI のジャーナルから(2)項に示すMCSの(誘発試験に対する)システマティック・レビューが発表されています。
Position Statements
Several medical societies and organizations have issued position statements pointing out the shortcomings of the IEI diagnosis, the unreliability and misuse of certain diagnostic procedures, and the lack of scientific support for and clinical evidence of the alleged toxic effects from environmental chemicals in these particular patients. In 1986, the AAAI was the first to do so.(5) The American College of Physicians published a position paper in 1989,(84) which was later adopted by the American College of Occupational and Environmental Medicine. The Council on Scientific Affairs of the American Medical Association published a critical review in 1992.(85) The Ministry of Health of the Province of Ontario(86) and the California Medical Association(65) have published results of their investigations of the IEI phenomenon. The US National Academy of Sciences,(87) the World Health Organization,(1) and the International Society of Regulatory Toxicology and Pharmacology(88) have held symposia on the subject. The American Council on Science and Health(89) and the Royal College of Physicians and Royal College of Pathologists in Great Britain(90) have also published reports detailing the unscientific basis for IEI.
[最初の部分(Several medical ・・・ particular patients.)の拙訳]
いくつかの医学会や医学組織は、IEIの診断の欠点、いくらかの診断法の信頼性の欠如や誤用、及び特定の患者における環境化学物質からの毒性効果とされる臨床的証拠に対する科学的サポートの欠如を指摘するポジションステートメントを発行しています。
注:上付き文字 5 は、(5)に変換しました。他の()で囲まれた数字は同様です。
(h) 日本臨床環境医学会
先ず日本臨床環境医学会編の本「シックハウス症候群マニュアル 日常診療のガイドブック」(2013年発行)の「IV. Q & A Q03.」(P70~P71)と「IV. Q & A Q03.」(P73)をそれぞれ次に引用します。本医学会のMCS又は化学物質過敏症に対する正式な見解ではありませんが、これらの引用により、上記本の発行時における「日本臨床環境医学会」の(事実上の)見解は、「日本において、化学物質過敏症を診療報酬上の傷病名(ICD-10)にすることと、MCSや化学物質過敏症の医学的な定義が確立されることは別である」こと及び「MCSや化学物質過敏症の医学的な定義はまだ確立されていない」であると私は考えます。
Q03. MCS(Multiple Chemical Sensitivity:多種化学物質過敏状態),化学物質過敏症(CS)とはどんな病気ですか.
A
・MCSは,1987年マーク・カレンによって「過去に大量の化学物質に一度曝露された後、または長期間慢性的に化学物質の曝露を受けた後,非常に微量の化学物質に再接触した際にみられる不快な臨床症状」として定義・提唱された.
・定義された MCS(Multiple Chemical Sensitivity:多種化学物質過敏状態)の考え方を基本に化学物質による健康障害をめぐる議論が行われてきている.ただ,医学的な定義はまだ確立されておらず,社会的な関心が先行し言葉が独り歩きし,混乱が生じている.
・日本においては,北里研究所病院の石川哲らによって独自に化学物質過敏症の診断基準が設けられている.
・原因としては建材や家具等に使用される,揮発性有機化合物に起因する室内空気汚染や大気汚染,食品中の残留農薬などが考えられるが,特定の化学物質との因果関係や発症のメカニズムなど未解明な部分が多く,今後の研究の蓄積や成果が待たれている.
・2009年10月1日,厚生労働省は診療報酬上の傷病名(ICD-10)とした.
Q13.シックハウス症候群や化学物質過敏症の診断では,どのような検査を行うのですか.
A
・既往症のアレルギー疾患など,他の疾患との区別が非常に難しいため,現状では正確に診断できる検査・診断方法はない.
・診察例
(1) 徹底した問診(発症時期・症状,住環境の変化があったか,症状の変化があったかなど)
(2) 問診をふまえた診察:症状・兆候の把握,他疾患の除外
(3) 必要に応じて,血液生化学検査やアレルギー検査,生理機能検査等を行う.瞳孔検査,眼球運動検査,視覚空間周波数特性検査,免疫検査,内分泌検査,誘発試験などを行っている検査機関もある.
(参考)化学物質の曝露情報を得るために,住宅の揮発性有機化合物濃度数値等を求められる場合もある.
(2)MCSのシステマティック・レビュー
ひょっとすると、先ず下記「コラム 化学物質過敏症は存在するか?」の引用に目を通す方が良いかもしれません。著者は Das-Munshi氏 等で、The Journal of Allergy and Clinical Immunology に発表しました。この誘発(試験の)研究でMCS存在の評価が十分可能と私は考えます。
・タイトル:Multiple chemical sensitivities: A systematic review of provocation studies.
・要旨の日訳例:農薬吸入毒性評価手法確立調査 9-6 化学物質過敏症:刺激試験結果の総合解析
ただし、この訳が必ずしも要旨に忠実(正確)でないと私は考えます。
・NATROM先生等は次のはてブで紹介。
・これに関する総説的なものとして、斎藤博久著の本「アレルギーはなぜ起こるか ヒトを傷つける過剰な免疫反応のしくみ」の「コラム 化学物質過敏症は存在するか?」(P25~P26)から次に引用します。
コラム 化学物質過敏症は存在するか?
化学物質過敏症は、米国アレルギー学会雑誌が掲載したもっともエビデンスレベル(疫学研究の信頼度に関する科学的な格付け)が高い研究と位置づけられているシステマティックレビューにおいて、その存在が否定されています。この論文の著者らは、多種類の化学物質に対する過敏症に関する論文のすべてのデータを解析した結果、従来のほとんどの研究は適切なコントロールを欠いていること、および、被験者が反応を示したのは、それが化学物質であると知らされた場合に限るという結論を導きました。
過敏症とは「健常被験者には耐えられる一定量の刺激への曝露により、客観的に再現可能な症状または徴候を引き起こす疾患をいう」と定義されていますので、化学物質過敏症は過敏症の定義からはずれます。今後は、過敏症としてアレルギー学者が扱う研究課題ではなく、心理学者、神経学者が扱う研究課題になるということです。いずれにしても、これらの症状を訴える方々に対する慎重な配慮が必要です。
注:引用文中のエビデンスレベルについては、ここを参照して下さい。
ちなみに、このシステマティック・レビュー発表以降の研究状況は次の日本の論文、特発性環境不耐症(いわゆる「化学物質過敏症」)患者に対する単盲検法による化学物質曝露負荷試験を参照すれば良いかもしれません。
参考:システマティック・レビューについて次に概略を示します。
・ 研究デザインと結果の信頼性とは
(3)MCS=IEIの総説的な資料
(a) 『化学物質過敏症』とは何か?(b) 化学物質過敏症に関する情報収集、解析調査(平成20年1月、公害等調整委員会事務局)
・この文書中に日本語訳として一部を引用されたデンマークEPAの報告書 Environmental Project no. 988, 2005 Multiple Chemical Sensitivity, MCS
(c) Mark R Cullen, M.D. の講演予稿
・The Perplexing Problem of Multiple Chemical Sensitivities: A Perspective for Toxicologists (Invited lecture)日衛誌(Jpn J. Hyg.)第64巻 第2号 2009年3月
ちなみに、この講演予稿の拙訳を次に引用します(拙訳作成中)。
(4)ウィキペディア「化学物質過敏症」の一部解説
ウィキペディア「化学物質過敏症」(2015年2月3日現在)における一部の記述を例にして、疫学及び科学的根拠に基づいた医療(エビデンスレベル)の視点から考察しましょう。この中の「化学物質過敏症に関する議論」項における記述を次に引用します。ただし、下記「懐疑的見解」項は一部のみの引用です。
肯定的見解
化学物質の人体に及ぼす影響については未だ解明が進んでいないが、一部の専門家の間では、近年激増の傾向にある自律神経失調症やうつなどを含めた現代病は、化学物質の曝露が原因である、という意見がある[6]。また、化学物質過敏症は様々な症状を呈するため、適切な診断が下されない場合がある。具体的には、眼に症状が現れている場合では、アレルギー性結膜炎及びドライアイなどの診断が、呼吸器系の症状では風邪や喘息が、その他では自律神経系異常に関連する疾患または精神科領域の疾患として診断されてしまう可能性がある[7][8]。なお、化学物質過敏症は煙草の受動喫煙により生じる受動喫煙症の悪化で生じたり[9]、あるいは新築あるいは改築した住宅で発症するシックハウス症候群の悪化により生じる場合もある[10][11]。不定愁訴、咳喘息、気管支炎、ドライアイ、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、自律神経系の病、脳や神経系の病、うつ病などの様々な病名の診断がなされ手術や投薬を重ねても改善されなかった、および逆に悪化した症例で、化学物質過敏症としての診断と治療によった後、病状の現状維持または改善及び社会復帰に結びついた例があるとの主張がある[12][13]。また、functional MRIによる脳画像解析を用いた客観的診断手法についての研究がある[14]。
懐疑的見解
化学物質過敏症とされる症状については科学的・疫学的な立証を経たものは少ない。微量の化学物質が多彩な症状を引き起こしているとする客観的な証拠がなく、においや先入観により引き起こされていると考えられる[15]ことなどから、「化学物質過敏症」という名称自体が適当でないとする意見があり、主要な学会からはその診断名称を拒否されている[16][17][18]。
上記懐疑的見解における「微量の化学物質が多彩な症状を引き起こしているとする客観的な証拠がなく、においや先入観により引き起こされていると考えられる[15]」等のエビデンスレベル(証拠のレベル)が適用可能な(医学的)文章を読む際に、その信頼性を検討するならば、エビデンスレベルの考慮が必要不可欠であると考えます。すなわち、ウィキペディアなので、専門家が文章を作成したかどうかは保証の限りでは無いこともあり、それぞれの文章において引用した文献の内容及びエビデンスレベルの評価を重視する必要があると考えます。
エビデンスレベルについては、次の国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービスのWEBページの4.2)項を参照すると良いかもしれません。
ちなみに、上記4.2)項で示された、エビデンスレベルの表を次に引用します。
Ⅰ システマティック・レビュー/RCTのメタアナリシス
Ⅱ 1つ以上のランダム化比較試験による
Ⅲ 非ランダム化比較試験による
Ⅳa 分析疫学的研究(コホート研究)
Ⅳb 分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究)
Ⅴ 記述研究(症例報告やケース・シリーズ)
Ⅵ 患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見
注:Ⅰがエビデンスレベル最高で、Ⅵが最低とされます。非専門家の体験談はランク外です。
上記懐疑的見解における、引用文献[15]は、エビデンスレベルは最高とされるMCSのシステマティック・レビューのことです。さらに、文章「主要な学会からはその診断名称を拒否されている[16][17][18]」は、(1)MCSに対する世界の医学会等の見解(例:存在、診断法)の一部と重なります。
一方、上記肯定的見解においては、[6]~[13]は全て新聞記事からの引用で、エビデンスレベルは最低とされる「専門委員会や専門家個人の意見」とするのにも疑問があります。[14]は日本化学工業協会 研究支援自主活動 Annual Report 2006 (P79) の表題「化学物質過敏症診断体系確立の試み:問診票、匂い認知・情動検査、脳画像検査を用いた総合的診断」の研究概要のようです(研究期間:2005年9月1日-2006年8月31日)。上記研究概要に関する一連の研究では一定の結論が得られなかったようです。詳細は以下の余談に示します(未作成)。
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(5)William J Rea 医師、石川医師、宮田医師
(f) William J Rea 医師(含 American Academy of Environmental Medicine)
・忘却からの帰還 その1、その2、その3、その4、その5、その6、その7
・NATROMの日記
・食品安全情報blog
注:上記 American Academy of Environmental Medicine は、Clinical Ecology の学会名です。
参考:本項に示すように、William J Rea 医師は、電磁波過敏症及びホメオパシーにも関係しています。
(g) 石川医師(日本臨床環境医学会の初代理事長等を歴任)
1) NATROMの日記 その1、その2、その3、その4
3) 誘発中和法
室内空気質健康影響研究会[編集]の本、「室内空気質と健康影響 解説 シックハウス症候群」(2004年発行)中の、文書 「北里研究所病院における知見-治療を中心として-」 P295~P299(著者は、石川 哲(北里研究所病院臨床環境医学センター))の「Ⅵ 米国における中和療法」項 (P297) における記述を次に引用します。
北里研究所病院では、未だ施行していないが、米国においては、患者の過敏性症状を誘発する原因化学物質に対する中和療法が積極的に行われている13-14)。元来食物アレルギー患者に対して始められた治療法15)を化学物質過敏症に応用したものである。アレルゲンの用量を徐々に上げていく従来の減感作療法と異なり、中和療法では逆に濃度の高いものから低いものを順番に皮内に投与し、生じた膨疹の状態から個人の中和量を決定し、それを投与することにより症状の軽減化を図るというものである。今後本邦においても有効な治療法の一つとして考慮されるものと思われる。
ただし、この引用文中の「13-14)」及び「15)」は引用番号であり、それぞれ、上付き文字を半角文字に変更しました。
さらに、標記誘発中和法に批判的なWEBページを次に引用します。誘発中和法 -疑わしい治療法-
4) かびんのつまインタビュー (次に引用するように、「――石川先生は電磁波過敏症については、どうお考えですか?」項及び「――電磁波過敏症もやはりなかなか世間一般で理解されているとは思えず、苦しんでいる人が多いと思います。化学物質過敏症と併発しているのなら、なおさらですが。」項において、下記電磁波過敏症にまで言及しています。)
――石川先生は電磁波過敏症については、どうお考えですか?
化学物質過敏症の世界的な権威でもあるドイツのルノー先生も、電磁波過敏症については20年前から治療を行っていますね。私や北里大学の宮田幹夫教授、ダラスのレイ教授とも一緒に研究を続けていましたが、彼はバート・エムスタール(Bad Emstal)という地域に温泉付きの治療室をつくったんです。そこの入院室は電磁波を極力防ぐための工事が、アースも含めて厳重に行われていました。”
――電磁波過敏症もやはりなかなか世間一般で理解されているとは思えず、苦しんでいる人が多いと思います。化学物質過敏症と併発しているのなら、なおさらですが。
電磁波過敏症について詳しく研究しているのは、北里大学医学部名誉教授で、現在は東京の荻窪で"そよ風クリニック"を開業している宮田幹夫先生です。彼に診てもらえば、適確に指導してくれると思います。
注:これらの引用中の宮田幹夫教授、宮田幹夫先生は宮田医師のことです。また、ダラスのレイ教授とは、William J Rea 医師のことです。
5) その他
(5-1)(i)及び(j)、余談5(c)及び余談6項も参照して下さい。
(h) 宮田医師
1) NATROMの日記 その1、その2、その3
3) かびんのつまインタビュー
上記(5-1)(g)4)項参照。
4) その他
他に(5-1)(i)及び(j)項も参照して下さい。
(12)電磁波過敏症
標記英名:idiopathic environmental intolerance attributed to electromagnetic fields (IEI-EMF)(a) 総説、システマティック・レビュー(この誘発研究で疾患概念である電磁波過敏症の存在に対する評価が可能と考えます)
・システマティック・レビュー 忘却からの帰還
・総務省-電波の人体に対する影響
・身のまわりの電磁界について 平成 25 年 3 月 環境省 環境保健部 環境安全課 の 「[参考] 電磁過敏症(電磁波過敏症)」項 (P23~P26)
注:i) 後者の文書は総説としての位置づけでリンクしています。 ii) 「WHO ファクトシート 296」 は同文書の P23 にリンク先が示されています。
(b) 電磁波過敏症とノセボ効果の関係を示すWEBページ、文書、論文例
・第7回電磁界フォーラム(東京)~電磁過敏症:臨床および実験的研究の現状~のパネルディスカッション資料
・第7回電磁界フォーラム(東京)~電磁過敏症:臨床および実験的研究の現状~の講演資料(配布資料)
・第7回電磁界フォーラム(東京)~電磁過敏症:臨床および実験的研究の現状~の記録
第7回電磁界フォーラムに東海大学医学部教授の坂部貢氏(坂部医師)が参加して、発言しています。本記録文書の 5.パネルディスカッションの内容 (P2~P16) は私にとって興味深いです。
・電磁過敏症の原因はノセボ効果の疑い、メディア報道により病気の症状を引き起こす。元記事のリンク:(日本語文)、(英文)。
一次情報の論文はこちら Are media warnings about the adverse health effects of modern life self-fulfilling? An experimental study on idiopathic environmental intolerance attributed to electromagnetic fields (IEI-EMF).
上記論文の要旨を次に引用します。
OBJECTIVE:
Medically unsubstantiated 'intolerances' to foods, chemicals and environmental toxins are common and are frequently discussed in the media. Idiopathic environmental intolerance attributed to electromagnetic fields (IEI-EMF) is one such condition and is characterized by symptoms that are attributed to exposure to electromagnetic fields (EMF). In this experiment, we tested whether media reports promote the development of this condition.
METHODS:
Participants (N=147) were randomly assigned to watch a television report about the adverse health effects of WiFi (n=76) or a control film (n=71). After watching their film, participants received a sham exposure to a WiFi signal (15 min). The principal outcome measure was symptom reports following the sham exposure. Secondary outcomes included worries about the health effects of EMF, attributing symptoms to the sham exposure and increases in perceived sensitivity to EMF.
RESULTS:
82 (54%) of the 147 participants reported symptoms which they attributed to the sham exposure. The experimental film increased: EMF related worries (β=0.19; P=.019); post sham exposure symptoms among participants with high pre-existing anxiety (β=0.22; P=.008); the likelihood of symptoms being attributed to the sham exposure among people with high anxiety (β=.31; P=.001); and the likelihood of people who attributed their symptoms to the sham exposure believing themselves to be sensitive to EMF (β=0.16; P=.049).
CONCLUSION:
Media reports about the adverse effects of supposedly hazardous substances can increase the likelihood of experiencing symptoms following sham exposure and developing an apparent sensitivity to it. Greater engagement between journalists and scientists is required to counter these negative effects.
[上記要旨の拙まとめ]
この実験で、メデイア報道が電磁波過敏症の進行を促進するのかどうかをテストした。147人の参加者は、先ず無作為に76人と71人の両グループに分けられ、前者はWiFi機器の健康への悪影響に関するテレビ報道を見て、後者は対照となる(健康への悪影響と無関係な)ものを見た。その後、両グループの全員は偽のWiFi電波に15分間暴露された。82人(参加者の54%)は、偽の暴露による症状を訴えた。上記テレビ報道を見たことにより次の事項が増大した。 1) 電磁波過敏症に関する心配 2) 強い不安を持っている人々における偽の暴露後の症状の可能性 3) 症状は偽の暴露によるもので、電磁波過敏であると信じる人々の可能性
おそらく有害物質の悪影響についてのメディア報道は、偽の暴露後の症状を経験する及び明らかな過敏に進行する可能性を増大させることがあり得る。ジャーナリストと科学者との間のより強い関与は、これらの負の影響に対処するために必要とされている。
ちなみに、電磁波過敏症発症者の現状のアンケートによると、次に引用するように i) 回答者75人のうち、45.3%が病院でEHS(電磁波過敏症)と診断された[電磁波過敏症と診断する医者がいるようだ] ii) 回答者の76%は、電磁波にも化学物質にも過敏性を持っていると思われる iii) 回答者の33.3%がホメオパシーを利用していた との結果になっています。
有効回答は75通で、女性が71人、男性は4人、平均年齢は51.2歳だった(中略)
病院でEHSだと診断されたのは45.3%で、49.3%は自己診断でEHSだと考えていた。また、EHSではないが電磁波には敏感だと思う、と答えた人は5.3%だった(中略)
一方、MCSと診断されたのは49.3%で、自己判断でMCSだと考えている人は26.7%、MCSではないが化学物質に敏感だと答えたのは14.7%、MCSではないと答えたのは9.3%だった。回答者の76%は、電磁波にも化学物質にも過敏性を持っていると思われる。(中略)
回答者のほとんど(72.0%)は、サプリメントの摂取(46.3%)や運動(38.9%)、入浴(35.2%)、食事療法(35.2%)、ホメオパシー(33.3%)など、何らかの補完代替療法(CAM:Complementary and Alternative Medicine)を利用していた。
さらに、このアンケートでは次に引用するように、経済的な不利益について記述されています。
5.経済的な不利益
回答者75人中、40人(53.3%)は発症前まで何らかの仕事を持っていたが、EHS発症後、その50%が仕事を失い、15%は労働時間が短くなったと答えた。影響を受けた人の業種は、会社員とパートタイマーが各23.1%、教育関係と医療関係が各19.2%だった。
有職者の65%が失業や労働時間短縮で経済的な困難に直面している一方、回答者の85.3%が電磁波を防ぐ対策を取り、経済的負担が発生していた。無線周波数電磁波を遮蔽するシールドクロスの購入が53.3%(対策実施者の合計で約600万円)、電磁波の少ない地域への転居や住宅の購入・新築が24.0%(約1億5100万円)、蛍光灯から白熱灯への買替えが30.7%(約73万円)電磁波の少ない家電への買替えが22.7%(約300万円)だった。対策の総費用は1億6800万円に達した。
エントリ仮公開後の追記
(A)改訂・バージョンアップ関係(1) 2015-02-04 の初回仮公開
本リンク集の Ver. 0.2 で仮公開しました。
ちなみに、この項はこのエントリ本公開後には削除予定です。