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国立だけじゃない…駒沢球技場取り壊し 東洋の魔女「涙が出るほど寂しい」

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国立だけじゃない…駒沢球技場取り壊し 東洋の魔女「涙が出るほど寂しい」

 1964年東京五輪のバレーボール競技で、「東洋の魔女」と呼ばれた女子日本代表チームの金メダル獲得の舞台となった駒沢屋内球技場(東京都世田谷区)が取り壊されるのを前に、25日、最後の記念行事が行われた。世界の頂点に立った当時のメンバー7人も顔をそろえ、半世紀前の栄光の歴史が刻まれた「聖地」との別れを惜しんだ。

 「この場所がなくなるのは残念で、涙が出るほど寂しい。本当は(当時のメンバー全員の)12人でお別れをしたかった」

 エースアタッカーとして金メダル獲得に貢献した寺山(旧姓・宮本)恵美子さん(77)=茨城県日立市=は、壁が色あせ、手すりのさびた球技場を見回しながら、そう惜しんだ。

 昨年10月、当時の主将だった中村(旧姓・河西)昌枝さんが他界。当時の仲間で「年に1度くらいは集まろう」と話していた矢先のことだった。他にも体調を崩し、球技場へ来ることのできなかった人もいる。

 「今日来ることができたメンバーは幸せでした」。寺山さんはチームメートとの再会を喜び、笑顔で話した。この日、50年前の金メダルを記念する銘板が、寺山さんら当時のメンバーから2020年東京五輪の主軸となる高校生に手渡された。

 寺山さんが「バレーボールを止めないでほしい。6年後に、この中から代表選手が選ばれることを期待している」と激励すると、下北沢成徳高校の岡村真衣主将(18)と、共栄学園高校の辻村りこ主将(17)は「歴史ある球技場で最後の試合ができてよかった。東京五輪の舞台に立てるように頑張りたい」と意気込んだ。

 解体される屋内球技場は東京五輪開催の約半年前、駒沢オリンピック公園に完成した。これまで大規模な改修工事は行っていなかったため、外壁のひび割れや雨漏り、配水管の詰まりなどの老朽化が目立つようになった。空調施設も整備されておらず、特に夏場は熱中症が懸念されていた。

 東京都は7月にも取り壊し工事を始め、平成29年に新たな球技場が完成する予定。ただ6年後の東京五輪では、バレーボール競技は江東区に新設される有明アリーナで行われる予定で、新球技場は使われない。

 屋内球技場の取り壊しに伴い、球技場に隣接し、前回の東京五輪でホッケー会場となった第一球技場も改築工事が行われる。

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