離婚や借金などを巡るさまざまなトラブルを法律で解決する漫画が今人気です。
実力行使で貸借人を追い出すなんて場合によっては住居侵入罪で警察に訴えられる立派な犯罪ですよ!漫画は次々にテレビドラマにもなり大ヒット。
ストーリーを手がけているのは広島県呉市に住む…実はもう一つの顔を持っています。
お世話になります。
おはようございます。
商業登記簿謄本1通お願いします。
はい。
田島さんは本人に代わって公的な書類を作る…現役の法律家としても活躍しています。
瀬戸内海に面した港町…造船を中心にものづくりが盛んなこの町で田島さんは生まれ育ちました。
住宅地の一角に田島さんの事務所はあります。
どうぞ。
はい。
汚い所ですが。
お邪魔します。
はいどうぞ。
うわ〜!こんな感じなんです。
でもやはりこういう「内容証明の文例集」とか結構法律関係の書類がいっぱいなんですね?やっぱり行政書士の実務で法律書っていうのはやっぱり絶対必要になりますし。
また漫画を描く時に僕らの漫画はリアリティーにこだわってて出てきた書類が読めるように。
本物という事になるとやっぱりここら辺から作画資料を作って漫画家さんに渡すと。
田島さんが作ったそのストーリーをちょっと見せて頂けますか?ああ原作ですか?いいですよ。
はい。
え〜っとこれが「びったれ」で来たばっかりなんですけどね。
ああ〜。
原作なんです。
随分せりふが書いてあるんですね。
そうなんですト書きとか。
この辺りト書きっていいまして情景描写ですね。
今まさにパソコンに出てますよ?はい。
漫画家さんからこういう下書きが来るんですよ。
この下書きに対して構図を切り返した方が見やすいんじゃないかとかまあそんな事を電話で延々打ち合わせるんですよ。
結構漫画のストーリーを書くっていう…漫画のストーリーを書くっていう作業の中で映像が浮かんでる?そうなんです。
漫画の原作…まあテレビでいうと脚本ですよね。
書くんですけれど漫画は当然ページが決まってますからどういうコマで収めるのか更にそのコマを割るごとにリズム決まりますからそれに合わせてせりふのテンポも考えないといいものにならないんです。
そうすると自然に映像が浮かんでくる。
浮かんできた映像と今度脚本を渡した漫画家との勝負になるんですよ。
漫画家が僕の脚本を解釈してこうやって送ってくる。
僕の浮かべた映像よりもいいものになってたらそれは漫画家に「いい絵をありがとう。
これでいこう」なんてなるんですけど逆にまあ「ここ考えてないな」と「別の所気い取られてこのコマおろそかになってるな」と思うと「そこは俺のイメージこうなんだけどどう?」みたいな。
法律家と3本の連載を持つ売れっ子漫画原作者という二足のわらじを履く田島さん。
しかし長年にわたりどん底の中でもがき続けてきました。
昭和43年田島さんは3人兄弟の長男として生まれました。
小さな喫茶店を父親が経営していましたがうまくいかず家計はいつも火の車でした。
店の経営自体はどういう状態だったんですか?まあ父親がやってたんですけれどやっぱりお客さんが来ない。
お客さんが来ないという事はまあ変な話たまに来たお金だけで暮らすようになる訳ですよね。
要はためる事ができない訳ですから。
まあ平たく言うとその日暮らしなんですよ。
そのお金を父親が母親にまだ渡せばいい方で渡さない時は父親が勝手に使っちゃう。
母親が「子どもたちのごはんどうするか?」って「なんとかせえ」なんていう感じで結局食べるものが無くなっていく。
僕たちのごはんも「お金がないから」って言う。
水とん…晩ごはんが水とんだったりもっとひどければ乾パン。
非常食ですよね。
あれ食べろとか。
まあそんな感じになってく訳です。
それでも母親は父親の店手伝いに行かないといけない訳ですよ。
どんどんどんどんすさんでいく。
そんな感じでしたね。
ご家族はどんな様子だったんですか?やっぱりすさんだ生活ですから普通の家みたいに夫婦仲がいい訳じゃないんですよ。
やっぱり僕が今でも覚えてるのは夜父親が母親を物差しで顔面殴ってるんですね。
母親は父親に殴られ蹴られした体横たえて肩で息してる。
そしてそのあと始まるのがまあ母親と僕らが目が合っちゃうともう今度僕たちが殴られるんですね母親に。
物差しとか靴べらとか。
延々30分1時間たたかれる。
そうすると最後の方は「うわ〜」と文句言ってるんですね母親が。
「お父さんだけじゃなくあんたらまでうちを苦しめて」って。
「産まにゃよかった」とかって「うわ〜」と言ってベシンベシン。
また「うわ〜」と言ってベシンベシン。
まあそういうすさんだ今でいうDV。
そんな家庭でしたね。
ありとあらゆる所にやっぱり逃げ場がなかった訳なんですよね?なかったですね。
これは今にして思えば結果論なんですけどすごく僕の人生を変えた一つの出来事のうちになるんでしょうけれど本屋さん行くんです。
学校終わってもう帰らなきゃいけない時間のギリギリまで本屋行って漫画をずっと読むんですよ。
漫画を読んでるとそこにはすごい希望があるんですよ。
希望もあるし今度自分の知らない人間関係も学べるんです。
ほんのささいな事でもいいんですよ。
あの〜友情とかそういうものがあるとすごく希望があって今僕はこうだけど将来僕も友達できるかもしれないとか母親なんかがいつかは優しくなるかもしれないなんて思いましたし。
何より自分の頭の上を覆ってるどす黒い雲みたいなのが漫画を読む事でパ〜ッと消えていくんですよ。
もうそれがうれしくてうれしくて。
貧しいという事をどう感じてましたか?理不尽だとは当時思いましたし何で自分がこんな目にと。
親が中2の時に離婚する際に夜中に僕を起こして「ちょっと来い」って言われたんですね。
離婚届見せられて「離婚する事になった」と。
「あんたどっちについていきたい?」と言われたんですよ。
父親と母親いましたけど。
その時僕は「どっちでもいい」って言ってそのままそれひと言言ってそのまままた元に戻ったんです。
それ以上話もしなかった。
布団の中潜ってぶっちゃけ涙流しながら毒づいてましたよ。
「何で俺ら子どもばっかこんな目に遭わにゃいけんのんか」と。
「どっちについてったって普通の生活じゃないじゃろう」と。
「何で俺らばっかり」と。
「何でこんな親のもとに生まれたんだろう」と。
その後も経済的な理由で高校は1年余りで中退。
田島さんは家を出て働き始めます。
気が付くとたどりついたのは広島市内の新幹線の高架下でした。
借金が重なり車の中での生活を余儀なくされたのです。
二十歳の頃でした。
大体この辺りとか…。
この辺りそうですね〜。
まあ多少ずれてたのかもしれないですけどこの辺りに車歩道に乗り上げて駐車違反のマークがまさに正面に見えるのにもかかわらず違法駐車して寝泊まりしたとかしてましたね。
当時は本当にまだ下に落ちるんじゃないんかっていう。
当時一番怖かったのは軽自動車ですら無くす可能性もあった訳で。
維持できなくなって。
そしたらどこで寝泊まりしようなんて頭の中で考えちゃうんですね。
もしもっとお金が無くなって軽自動車すら手放したらここの高架のどこだったら雨がしのげるかなとかどこだったら寒くないんだろうかなんて頭でついつい考えちゃうんですね。
その考えるのがもうすごく嫌で…怖くて嫌で実現しちゃいそうなんですよ考えてると。
だから考えないようにして。
田島さんはなんとか貧しさから抜け出そうとその後もおよそ30の職を転々としていました。
代行運転のアルバイトをしていたある日社長から突然クビを告げられそれまで働いた分の給料ももらえないという事態に直面します。
たまたま市役所に勧められて訪れた労働基準監督署。
そこで田島さんは法律の力を目の当たりにしました。
「法律に基づいて給料を受け取る正統な権利がある」。
言われるがままに書類を書いて送ると社長は給料を払ってくれたのです。
本当に法律との出会いっていうのは?それまで自分はどうやって生きていくんだろう手に職つける事も駄目学歴もない就職する事も駄目もう暗雲が本当に広がってたんですね。
将来を考える事は怖い事でしかなかったのにその暗雲がスパッと晴れてってそこからスルスルスルッてクモの糸が…お釈様のクモの糸が下りてきたような感じだったんです。
「あっ大人のケンカってこれなんだ」って。
それまで僕理屈で物事が世の中通るって思わなかったんです。
いろんな理不尽な目遭ってましたから理屈というか抗議しておかしいじゃないかと言っても理不尽なのが当たり前だと思ってたんですよ。
でも正しい理論武装をして正しい権利を身につければそれはちゃんと世の中に通用するんだ。
それは法律なんだと。
勉強一生懸命頑張って法律職に就ければそれはちゃんと自分の居場所を見つけれるんじゃないか。
しかも理不尽な思いをしなくていい。
それで後先も考えずに勉強やってみようなんて思っちゃったんです。
でもそれを実際につかみ取るまでというのはこれは難しかったんですか?そうですね。
もうまずどうしていいか分かんなかったんでとにかく本を買ってきてその当時夕方の5時ぐらいまでビルの清掃をしてあと5時半ぐらいから立体駐車場の管理人を夜中の2時3時までやったりとか。
駐車場の管理人室ではねず〜っと本を読んでとにかく暗記。
まあ勉強方法としてはね暗記だけじゃどうしようもないんですけれどでもまあ…暗記から。
500ページぐらいの本をそらで言えるようにもしたんですけどね。
仕事の合間を縫ってコツコツ勉強を続けた田島さん。
行政書士の資格を取ったのは28歳の時でした。
合格された時の喜びってどうでした?国家が僕を法律職として認めてくれたんだと思いましたよ。
それまで僕は本当に人に「助けて下さい。
助けてくれよ!」なんて叫んでた側だったんですよ。
それなのに僕が僕なりに苦労して覚えた法律知識を…法律知識を使って「そういう場合はこうしたらいいですよ。
こういうふうにしたらお金が少しでもかからずに許可取れますよ」とかいろいろアドバイスしたら「先生ありがとうございました。
助かりました」なんて言われるんです。
「あっ人様に頼りにされたんだ。
助けてもらう側だったのが助けれるんだ」なんて思ったんですね。
本当にその時に僕…どう言うんだろう?生きててよかったと言うとおおぎょうなのかもしれないんですけどこの道で正しかったんだなんてね本当思えたんです。
法律家としての経験を積みながら田島さんは31歳の時幼い頃に勇気をくれた漫画の世界に飛び込む決意をします。
僕は漫画に救われたと思ってるんですね。
幼い頃つらかった時に漫画を立ち読みしてそこで物語読んで絶望的な気分に希望を持てるようになった。
その漫画をいろいろ読んでいく中には学習漫画もあったんですよ。
「地球の秘密」とか「昆虫の秘密」とかね。
僕は幼い頃人一倍勉強できませんでした。
する環境にもなかったんですけれどその分漫画で知識を学んだんです。
そうすると漫画の中で知識を吸収するっていうのもすごく大事な事だと僕思ってるんです。
つまり漫画で何かを伝える事ができる。
もちろん感動とか苦しみとか悲しみも伝えれますけどそれだけじゃない世の中の仕組みの溝にはまった人にとってそこから出るにはこういう出方もありますよなんていうのも漫画でちゃんと伝える事ができるんじゃないかなんてね思った事もあるんです。
大好きな漫画でも人の役に立てると思った田島さん。
デビュー以来借金や離婚不倫相続などを巡るさまざまなトラブルを法律で解決するストーリーを書き続けてきました。
これまで手がけた4つのシリーズは全てドラマ化されるなどヒットが続いています。
これあの前回こういうふうに直そうやいう事でコマ構図変えたんじゃけど…。
田島さんが今見つめているのは格差や貧困労働問題など多くの人が直面している厳しい現実です。
割増賃金不払いの労働基準法違反で逮捕します!ブラック企業と闘う労働基準監督官が主人公の作品はおととしドラマにもなり話題となりました。
条件は労働者と使用者が対等の立場において決定すべきものである。
田島さんはつらい思い出が詰まった呉市に戻り住み続けています。
この町でこそ描けるものがあると感じているからです。
うわ〜!この辺ですね。
呉の町が一望できますね。
はい。
この町で苦しみの中にある人々にかつての自分を重ね少しでも寄り添っていきたいと考えているのです。
今の世の中は田島さんの目にどう見えるんですか?格差とか貧困とか言われてますけど…。
まあはっきり言わせてもらえれば弱肉強食の社会になっちゃってると思うんです。
強い者が弱い者を食べる。
で食べられる側が抵抗できなくなっちゃってるんじゃないかと思うんですよ。
会社の中でリストラされていく人は増えましたし更に学校を卒業してもいわゆるちゃんとした仕事に就けない。
場合によってはその場しのぎの仕事で短いサイクルでその日その日の生活をしないといけない。
そういう立場の人たちがすごく増えてると思うんですよね。
どうして弱者に寄り添うんですか?やっぱり昔の自分と重なっちゃうんですよね。
自分の能力とかそういったところと関係ないところで決まっていってしまう運命。
これってすごく残酷なんだと思うんですよ。
そういう運命に翻弄されている人たちが昔の自分と重なって見えちゃってで僕自身もやっぱりつらくなっちゃう。
そうすると思うのが自分の過去は変えれないですけど目の前の依頼者の今後ってほらつらい思いさせない事もできるかもしれないじゃないですか。
少しでも力になる事で依頼者がつらい思いをしないで済むようになるかもしれない。
そう思うと居ても立ってもいられなくなるんですね。
やはりその部分を作品にも込めている?はい。
作品は目の前にいる相談者のように読者さんの顔は見えないんですけどでも僕の事務所に来れない所で同じように「俺は独りだ」なんて思ってる読者さんだっていると思うんです。
僕は小学校時代に漫画を見てねその独りのさみしさっていうものをまああの…なんとか乗り越えてきたんですよ。
なら同じ漫画と…今度送り手側で漫画という手段を持ってる訳じゃないですか。
なら生の人間が横に立ってそばにいるよって言ってもらえない人たちにもそばにいるよって言えるんですよ今の僕は。
それは変な話昔の僕に対して肩をたたくのと同じなんですよ。
そういう痛みのある人弱い人にどんどん寄り添っていきたい?作品を通じて?そうですね。
作品を書いていく時にそういう…社会の中で本当に四方を囲まれてしまった環境にいる人に漫画というものを通じて本当に一筋の光明と言うと偉そうですけどほんの少しでもいいんで希望を持ってもらいたい。
そしてその希望を持ってもらえるものを書いていきたいって思ってます。
2015/02/11(水) 06:30〜06:53
NHK総合1・神戸
インタビュー ここから「指南します“大人のケンカ”漫画原作者 田島隆」[字]
漫画「カバチタレ!」「ダンダリン」の原作者で行政書士の田島隆さん。自らの半生や法律の実務をもとに生み出される「自分にしか描けない世界」とは何か、その思いに迫る。
詳細情報
番組内容
「カバチタレ!」「ダンダリン」など法律をテーマにした大ヒット漫画の原作者、田島隆さん。トラブルに巻き込まれた弱者を法律で救うストーリーを手がけるかたわら、行政書士・海事代理士としても活躍する日々を送る。自らの半生や法律家としての経験から「弱者に寄り添い、幸せを求めてあがく姿を応援する」ため、ふるさと・広島県呉市から発信し続ける。「自分にしか描けない世界」とは何か、その思いに迫る。
出演者
【出演】田島隆,【きき手】後藤康之
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – インタビュー・討論
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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