(ひかり)私は昔…。
人を殺しました。
人を殺した犯罪者です。
(久保田作太郎)どういうことだ?
(久保田正純)泊めてくれないか?
(愛)はい私あなたを好きになりましたから。
うわっあっ!あ〜痛っ!すいません大丈夫ですか?何すんだよ!っていうか何でだよ?今俺のこと好きって…。
あ…すいません。
でもあの…私決めたんです!これからは結婚を前提とした人としか付き合わないって。
もしかして不倫経験とかあんの?もうあんな苦しい思いするの嫌なんです。
自分がどんどんやな女になるし。
でもほら俺の場合は契約結婚してるってだけで正式に籍に入ってるわけじゃないし。
でもそんなこと世間には公表できませんよね?ってことは私と付き合っても誰にも言えませんよね?第一奥さんと別れられますか?今すぐ。
奥さんのこと愛してないって言えますか!?そんなポンポン責めんなよ。
すいません悪い癖なんですこういう喋り方になるの。
いや別に謝んなくてもいいけど。
それに奥さんの久保田さんへの愛って何かものすごい覚悟っていうか底知れない強さみたいなものを感じるから。
でも私は久保田さんのことが好きです。
あなたが私だけを愛してくれるようになったらいつでも付き合いますそうなるまでずっと待ってます。
ダメですか?それじゃ。
(作太郎)分かった。
今聞いたことは墓場まで持ってってやる。
でもどうする?もし本当のことが分かって正純があんたと別れると言ったら。
覚悟はできてます。
つらいぞ愛を諦めるのは。
俺みたいになってもいいのか?うぅ…。
両手を組ませてくれ。
あぁ…。
(作太郎)あぁ。
はぁ…。
祈ってやる。
正純とず〜っといられるように。
お義父さん?お義父さん!しっかりしてくださいお義父さん!
(ナースコール:呼び出し音)
(ナースコール:看護師)どうされました?すいませんお願いします義父がアレストです!
(ナースコール:看護師)分かりましたすぐ行きます。
ダメですお義父さん!正純さん達に本当の気持ち伝えなきゃ!このままじゃ誤解されたままですよ!それでもいいんですか!?お義父さん!お義父さん!!こんばんは久保田正純です。
(女性)本物?そこのステキな女性達!
(女性)違うでしょ本物はもっとカッコいいでしょ。
今から僕と愛の生中継してみませんか?
(女性達)キモ〜い!お〜い見捨てないでくれニャン。
妻にも彼女にもフラれて行くとこニャいんだよ俺。
ん〜フフフフ…。
おっ!うぅ…。
あ〜痛て。
痛ぇなこの野郎!
(振動音)あぁ…。
(振動音)
(振動音)しつこいんだよお前は。
ったく…。
(振動音)だからしつけぇんだよ。
(振動音)あれ?
(河西美登利)遅いわよあんた。
でお医者さんは何て?
(美登利)心臓が弱ってるからもう持たないって。
今度何かあったら覚悟するようにって。
そう…。
(美登利)今度もひかりさんがいてくれたから助かったんだってお父さん。
(久保田実結)それが良かったのか悪かったのか。
ちょっとやめなさいよ。
ひかり。
でも何してたんだよそんな時間に。
(美登利)そういえば面会時間とっくに終わってたわよね?すいません。
何だかお義父さんの顔を見たくて。
とか言ってこっそり変なことしてないわよね?お父さんに遺書書いてくれとか?やめろよそういうこと言うの。
(実結)だってミステリーだと一番いい人そうなのが犯人じゃない。
ねぇ何企んでるの?ひかりさん。
いいかげんにしろよ実結姉ちゃん。
(実結)取材よ取材!私今度小説書こうと思ってるからさミステリー賞に出す。
そんなことよりこれからどうするか相談しないと。
ねぇお母さん。
どうしたの?お母さん。
(久保田仁美)何だか穏やかな顔してるわねおとうさん。
(実結)そう言われれば…。
ひかりさん。
はい。
私はどうすればいいの?夜も眠れないしこのままだと気が変になりそうで…。
教えてちょうだい。
一体何を聞いたの?おとうさんから。
(泣き声)
(仁美)ひかりさん。
お義母さん。
(仁美の泣き声)お前さ何でそんな強情なんだよ。
別にいいだろ?あんな人の秘密喋ったって。
みんなもそろそろ我慢の限界だってことぐらい分かんないのかよ。
ごめん。
まっしょうがないか。
しょせん俺とあなたは他人だし。
契約結婚してるだけで。
勘違いすんなよ俺は安心しろって言ってんだよ。
昔お前に何があったのかもう調べる気ないから。
ホント?そんなことしてる暇があったら契約結婚をもっと楽しまなきゃな。
昨日お前が言ってた通り俺が今のまま変わらなきゃ何をやっても自由なんだろ?はい。
よかったじゃないか全部お前の望み通りになって。
そうだコンビニあったからさ下ろしといたよ契約金。
足りない分は後で渡すからさ。
領収書もらえるかな?どうでもいいかそんなこと。
あ〜あ眠い!あ〜仕事に行く前にひと眠りするから昼すぎに起こしてくれますか?契約妻さん。
分かった。
(岸)ということでスポーツコーナーと特集の所で視聴者からのツイートをテロップで出せばダイレクトな反応も分かるし視聴者と一緒に番組を作って行けると思うんですけど。
(板垣)うんいいね。
(岸)どうですか?久保田さん。
えっ何が?
(岸)いやですから番組の後半に視聴者からのツイートを画面の下に出したらどうかなと思ってるんですけど。
小っさくでいいんで。
何かさぁ他局でもやってるけど見てて疲れないか?こっちの言うことにも集中できないし視聴者も。
(板垣)何言ってるんですか久保田さんの言うことはいちいちインパクトがあるし全然問題ないですよ。
なぁみんな!
(スタッフ達)はい。
調子のいいことばっか言ってるけど結局数字が欲しいだけだろ?自分のつぶやきがテレビに出るんじゃないかって番組を見る奴が増えれば数字が上がるかもしれないし。
いや別に僕はそういう意味で言ってるんじゃ…。
そういう小手先のことばっか考えないでもっと視聴者の胸に突き刺さるような番組を作ろうよ。
俺達にしか作れない報道番組を作るんだって自負と矜持を持てよ!何か間違ってること言ってるか!?俺。
熱っ!熱っち!大丈夫ですか?久保田さん。
あ〜!う〜ん何てことないよこんなの。
えっと何だっけな。
だから俺が言いたいのは!はぁ…。
熱っち!熱っち!こんな熱いの飲めるかよ!知ってんだろ?俺が猫舌なの!
(橙子)すいません。
すいません久保田さん。
ちょっと休憩しましょうねっみんな休憩に…。
大丈夫だよ俺は!いやでもちょっとお疲れみたいだし。
あっもしかしてまた奥さんとケンカでもしました?いや〜実は俺もまたカミさんに怒鳴られ…。
いいんだよ!そんなくだらない話は!!お前さこの頃上や視聴者の顔色ばっかりうかがって俺達が『NEWSLIFE』を作った原点とか忘れてないか?板垣!いや僕はそんな…。
最近お前が提案するもの聞くたびにがっかりするんだよ。
コンプライアンスと数字のことばっかりで。
少しは番組の先頭に立って毎日神経すり減らしてるこっちの身にもなってくれよ!キャスターのモチベーション上げて気持ち良く番組をやれるようにするのがプロデューサーの仕事じゃないのか!?それとも何か?俺と同じぐらいの真剣さをお前に求めちゃいけないのか!?すいません。
これからはうちの女房の話もしないでくれるか?お前のカミさんの愚痴ももう聞き飽きたんだよ!言っとくけどこれは命令じゃないから。
「お願い」だからなっ!あの…。
ちょっと言い過ぎじゃないですか?久保田さん。
えっ?
(愛)提案の内容はともかく板垣さんは番組を良くしようと頑張ってるんだし…。
何だと?生意気言ってすいません。
でも板垣さんは『NEWSLIFE』を一緒に引っ張って来た掛け替えのない相棒なんだしそんな人にさっきみたいなこと言うの聞きたくないんですスタッフとしては。
(三木)本番5分前です!
(愛)あの…。
さっきはすいませんでしたでもスタッフはみんな久保田さんのこと尊敬してるんです。
俺も悪かったよ。
ちょっと寝不足でさイライラしちゃって。
だったらそんなに落ち込まないでください。
しょうがないだろ純粋過ぎるって疲れんだよ。
でもちょっとかわいいです2人とも。
何だか子供みたいで。
えっ?板垣さんもさっきから久保田さんに話し掛けたいのに散々迷ってるみたいだし。
番組終わったらお酒でも誘ってあげてください。
安心しますから板垣さん。
分かった。
しかしさっきのVTRの仮設住宅で一人暮らししている渋谷さんっておばあちゃん私達には想像もできないようなご苦労をして来たのにホントに凛としてステキでしたね。
ええ私も年を取ったらあんな方になりたいと思いました。
それでは次のニュースです。
えっ?何?すいませんここで訂正が。
先ほどの仮設住宅に暮らしている女性のお名前渋谷さんではなく渋谷さんでした訂正してお詫びいたします。
これは明らかに僕の間違いですね。
本当にすいませんでした渋谷さん。
それではCMです。
(鈴の音)う〜んいい匂い。
これ何の匂い?
(おばあちゃん)それはね…。
(男の子)♪〜潤清香コンビニでも買えるよ!こんなもんもう書かなくていいや♪〜ある日森の中♪〜熊さんに出会った♪〜花咲く奥さんのマネしたら渡れちゃいました。
そうみたいですね。
もしかして願いかなうのかな?何を願ったんですか?それは…。
言ったらかないませんから。
そうですよね。
あの…お話って?えっと…。
誤解があったらいけないのではっきりしときたいんですけどこの前久保田さんが家にいらした時私達何もありませんでしたから。
そうですか。
でも…私久保田さんを好きになってしまいました。
奥さんと別れない限り付き合うことはできないって久保田さんにも言いました。
すいません陰でコソコソしたくないんで。
あなたは…。
真っすぐな人ですね。
ついでに言わせてもらえばあなたがこのまま契約結婚を続けるのなんて無理だと思います。
久保田さんと一緒にいたいなら昔何があったのか言うしかないと思います。
おせっかいですけど。
話はそれだけです失礼します。
(着信音)もしもし。
(美登利)もしもしひかりさん?すぐ病院へ来てくれない!?あっもしかしてお義父さんに何か?
(美登利)意識が戻ったの!お医者さんもあんまり時間がないって言ってるから。
分かりました。
(河西成美)ひかりちゃん!2人ともどうしたの?
(河西大輝)な〜んか中にいるとこっちが死にたくなるから。
おじいちゃんがまた叔母さんとしか話さないとか言い出して雰囲気最悪。
遅くなりました。
ひかりさん悪いんだけどお父さんにあなたから言ってやってくんない?私達とちゃんと話すように。
まったくいつまで迷惑掛けりゃ気が済むのよ。
何ですか?お義父さん話って。
(美登利)いいかげん私達にも教えてよ。
お前達は何にも知らないとか言ってたけどどういう意味なのよあれ!何だって?お父さん。
「美登利お前はいつもうるさい」。
何よ!それ。
何よ今度は私に文句じゃないでしょうね?正純さんに話があるそうです。
はぁ〜。
俺はいい。
えっ?あの人に伝えてくれ。
「あんたと話すことなんかない」って。
ちょっと!何言ってんのよ正純。
そうよ。
死んじゃったらもう聞けないのよお父さんが何隠してたのか。
(作太郎)分かった。
迷惑を掛けて悪かったな。
お義父さんそんなこと言わないでください。
もう疲れた…。
ダメです!このままじゃ。
そうよ何か言いたいことないわけ?私達には。
せめて死ぬ前に謝んなさいよ昔したことを。
(美登利)聞いてるんでしょ?このままじゃ納得行かないわよこっちは!
(実結)ホントは秘密なんかないんじゃないの?後ろめたいもんだからいいかげんなこと言って。
目開けなさいよ!お父さん!!
(成美の泣き声)お義母さんお願いします!えっ?全部話してください!おい何言ってんだよひかり。
お義母さんの本当の気持ちお義父さんは全部分かってます。
それに何年も苦しんで来たんです。
お義父さんすいません。
私言うなって言われたのに少し喋ってます。
でもこのままじゃ嫌なんです!つらいと思うけどお義母さんに話してほしいんです。
正純さん達が知らないことを。
お義母さんしかいないんですお願いします!
(仁美)おとうさん。
ごめんなさい!
(仁美の泣き声)今でも覚えてます。
正純が生まれたばかりで毎日子育てに追われてた時あなた「疲れてないか?」って肩をもんでくれようとしたの。
でも私は思わずその手を振り払ってしまった。
そしたらあなたの言葉が背中に突き刺さって来た。
(仁美)「お前は結婚してから一度も俺を愛したことがない」って。
それで何て答えたの?お母さん。
もちろん「そんなことない」って。
そしたらその後おとうさん目を離さないで私のことをじっと見てた。
「本当にそうか?」って責めるように。
でも私は…。
目をそらしてしまった。
もうおとうさんを見られなくなった。
それからなのおとうさんが暴力を振るうようになったのは。
ごめんねホントは私のせいなのあなた達がつらい思いしたのは。
ごめんなさい。
ごめん!ごめん…。
お…お義父さんはお義母さん達を殴りながらいつも思ってたそうです。
「こんなことしてはいけないこんなことしてはいけない」って。
でも毎日毎日自分に背を向けて子供達を愛しているお義母さんを見たら自分を抑えることができなかった。
お義母さんが正純さん達に愛されれば愛されるほど何だか自分だけが悪者にされてるみたいでやりきれなくてますます暴力を振るってしまった。
でもお義父さんは心の中でずっと叫んでたんです。
「俺はお前達のお母さんを心から愛してるのに向こうは俺の顔も見たくないんだ。
おかあさんの世界の全てはお前達だけなんだ。
俺はそれがたまらないんだ」って。
ごめんなさいおとうさん!おとうさん…。
(泣き声)
(泣き声)
(美登利)お母さん。
(泣き声)
(作太郎)正純。
何?ひかりさんの正体を教えてやる。
えっ?この人はな…。
心からお前を愛してる。
だから何があっても手放すな。
ひかりさんから目をそらすな。
(作太郎)俺はお前らに愛されることは諦めたが俺と同じ間違いはするな。
(作太郎)正純。
何?
(作太郎)ダメだもうお前の顔が見えない。
ここにいるよ。
温かいんだなぁお前の手は。
父さん。
悪かったな正純。
父さん!美登利や実結にも謝っといてくれ。
父さん!かあさんに伝えてくれ。
「あなたを愛しています」。
父さん。
父さん?父さん!父さん!父さん!父さん!父さん!!父さん…。
父さん!
(読経)
(板垣)久保田さん。
じゃ僕達はそろそろ。
いろいろありがとな。
あぁいえ。
あの…明日からホントに大丈夫ですか?番組のほう。
これくらいのことで休んでたら親父に怒られるから。
あの私にできることがあったら何でも言ってください。
全力でフォローしますから。
ありがとう。
(板垣)あっ奥さん!ちょっといいですか?あの〜こんな時なんですけど最近久保田さん何かイラついてるっていうか仕事中もずっと悩んでるみたいで。
すいません。
あぁいやいや奥さんが謝ることじゃ…。
ただ何かご存じないかなと思って。
久保田さんが何を悩んでるのか。
すいません私には…。
あぁいやこちらこそすいません。
僕はただ久保田さんに今まで通り全力で仕事してほしいだけで。
この頃ちょっと久保田さんのあまりの純粋さっていうか情熱に参っちゃう時もあるんですけど。
でも『NEWSLIFE』を続けて行くためにこれからも全身全霊でサポートして行くつもりなんで。
ありがとうございます。
(板垣)いえ。
じゃあ失礼します。
私もこれで失礼します。
ありがとうございます。
・すいませんビールもらえます?・はい。
(井納千春)よっ。
いる?やめてくださいこんな所で。
せっかく黒いの見つけて来たのに。
何かヤダね人が死ぬって。
あんたのお父さんの時のこと思い出したよ。
あの時は向こうの親族とかに散々責められたよね。
母親は淫乱で娘は人殺しかって。
何であなたはいつもそうなんですか?ひとが聞きたくないようなことわざわざ言ったりひとをからかうようなこと平気でしたり!この前も正純さんにとんでもないことを言ったらしいですね。
私の秘密が知りたかったら自分と寝ろとか!あ〜だからさそのおかげでもう詮索しなくなっただろ?あんたのこと。
その代わり大っぴらに浮気するって言ってます。
妻公認だからって。
あ〜そっち行っちゃったか。
ホント小っちゃいね男って。
もしかして相手さっきの若い局アナじゃない?ほら旦那と一緒にテレビに出てる。
当たりだ。
爽やかな顔しながらあんたへの敵対オーラガンガン出してたもんね。
ひょっとしてもうデキてるとか?ねぇどうするの?ねぇこのままだとトンビに油揚げさらわれちゃうよ。
別にそういう契約だし。
はぁホントにいいの?今までの6年が水の泡になってもさ。
契約結婚とかしてまで頑張って来たのはあの男に心の底からほれ抜いて死ぬまでそばにいたくて。
でも自分のせいであいつに迷惑掛けんの死んでも嫌だからだろ?だけどさもうそれも限界だってあんた分かってんだからさもうお開きにしたほうがいいって。
この世に終わらないパーティーなんてないんだからさ。
自分がやってしまったこと彼に全部話してさねっ。
そんなことできるわけ…。
何ビビってんの?ねぇ!あんたのお父さんならきっと許してくれるよ。
私がプロポーズした時みたいに。
知らなかったろ?私のほうから結婚申し込んだなんて。
あんたのお父さんならと思って勇気を出して全部正直に打ち明けたの。
「私は心はあなたにささげても体はきっと他の男を求めてしまう。
今までも抑えようとしたけれどもどうしても自分の体にウソをついて生きて行けない。
だから結婚なんて絶対できないと思ってたしこんな気持ちになるなんて夢にも思ってなかったんだけれどもでも私はあなたと結婚してあなたとあなたの子供が産みたい」って。
そしたらあんたのお父さんこんなどうしようもない私のこと全部受け止めてくれた。
だからあんたを産むことができた。
契約旦那もあんたがこうと決めた男なんだろ?あんたが大好きなおとうさんに負けないぐらいいい男なんだろ?だったら賭けてみれば?あいつの勇気と優しさに。
あ〜ドラマの母親みたいなこと言ったら何か疲れちゃった。
正純さんにお悔やみ言っといて。
正純さん。
ん?お前も座れ。
はい。
親父が死んでからずっと考えたんだ。
しょせんどんな人間も心の中に誰にも言えない闇を抱えて生きてるんだって。
俺はずっと親父みたいな人間にだけはなりたくないと思ってた。
親父みたいに暴力を振るうのが怖くて子供をつくるのも嫌だった。
だからお前が契約結婚のこと言い出して子供はつくらないって言われた時本当は…ちょっとホッとした。
この前子供をつくろうとか言ってお前にひどいことをした時も正式に結婚してくれないお前にいら立って自分を抑えられなかっただけで…。
でも今は心から俺達の子供をつくりたいんだ。
もう親父のせいにして逃げてる場合じゃないって。
こんな気持ちになれたのはお前のおかげだ。
お前が親父とちゃんと話すよう言ってくれたから。
お前が6年間支えてくれなかったら俺がここまで来られなかったのも分かってる。
もうお前がいないと生きて行けないんだ。
死ぬまでそばにいてほしいんだ。
今まで通り番組の感想を書いて俺のこと叱咤激励してほしいんだ。
正式な夫婦になってお前に俺の子供を産んでほしいんだ。
お前言ったな?本当のこと言ったら俺達は別れることになるって。
今のこの幸せが壊れるって。
そんなこと俺が絶対にさせない!お前にどんなひどい過去があっても目をそらさない必ず受け止めてみせる!だから教えてくれよ。
お前の胸に抱えてる苦しみを。
母さん達みたいにお互いの気持ちを隠したまま生きるなんてそんな最悪な夫婦になりたくないんだよ俺は!お前は俺にとって完璧な妻だ。
でも…一つだけ足りないものがある。
えっ?俺はお前が心から笑ったのを見たことがない。
お前の本当の笑顔が見たいんだ。
いや!俺がそうさせてやる!お前が何のためらいもなく心の底から笑えるような。
だから俺のこと信じてくれ。
ひかり?初めて会った時のこと覚えてる?もちろん俺が入院した時お前が看護師で。
それは2回目。
えっ?その前に会ってるの私達。
どういうことだ?同じ病院でその5年前…。
私は22歳でまだ看護師じゃなくただの入院患者だった。
お前やっぱり何か重い病気だったのか?死のうとしたけどできなかったの。
自殺未遂ってことか?
(ひかりの声)その頃私は食事にも手を付けず誰とも口を利かなかった。
そうしたらあなたが夢のように現れた。
食べない?えっ?その時あなたが言ったの。
「お見舞いでもらったんだけどさ俺嫌いなんだよかじると寒気がして」って。
(ひかりの声)私はまるで不思議な力に誘われるみたいにあなたが差し出したリンゴを受け取ってた。
(ひかりの声)リンゴをかじる私を見ながらあなたは自分が取材で骨折した話を面白おかしく聞かせてくれた。
私はこの人は一体何なんだろう?って思いながら目が離せなくていつまでもあなたを見つめてた。
はぁ…。
ごめん全然覚えてない。
あなたはそうやって他の入院患者の人にも励ますようなこといっぱいしてたから。
だからあなたが退院するって聞いてもう会えないのかと思うと怖くて仕方なかった。
そしたらあなたが最後に言ったの。
「君は人を助ける仕事が向いてるんじゃないかな。
例えば看護師とか。
君みたいな人がいたらまたここに入院したいし俺」。
だから思ったの。
この病院で働いてたらまたあなたに会えるんじゃないかって。
それでホントに看護師になったのか?
(ひかりの声)あなたに会いたい一心で生きてたから5年たって再会できた時夢を見てるのかと思った。
その後あなたがプロポーズしてくれた時もまた何度も頬をつねった。
でもすぐ思い直したの。
この人はこれから一生光を浴び続けて行く人だ。
私なんかと結婚したら必ず不幸になるって。
だから契約結婚にしてくれって…?あなたと少しでも長く一緒にいられてあなたに迷惑掛けないためにはそれしかないと思ったから。
一体何があったんだ?その高校の先輩と。
お前が自殺未遂したのもそのせいなんだろ?高校の時その人と駆け落ちみたいに家出したの。
私は彼以外誰も愛さないって決めてたし彼も私のこと永遠に愛してくれるって言ってくれたから。
でも妊娠したって分かったらあの人は急におじけづいた。
まだ18歳で父親になる勇気がなくて親に説得されたら私を置いてあっけなく家に帰って行った。
でも私は意地でも産んで自分一人でも育ててみせるって思った。
アルバイトして必死で病院代稼いだ。
そして何とか子供を産んだ。
でも生まれて来た赤ん坊はなぜか私に懐いてくれなかった。
私を責めるみたいに毎日毎日泣き続けた。
いくらあやしてもダメだった。
狭いアパートだったから隣の人や大家さんに怒鳴られるし役所や病院に相談しても助けてくれなかった。
そのうちお金もなくなってもうどうしていいか分からなくなった。
エアコンもないうだるような部屋でずっとあの子の泣き声に耳をふさぎながら「誰か助けて誰か助けて!」って心の中で叫んだけど誰も助けてくれなかった私は独りぼっちだった。
だから…だから私は逃げた。
あの子を部屋に置いたまま逃げたの!何時間街をさまよったか分からない。
知らない人に誘われて浴びるほどお酒を飲んだ。
クラブで狂ったように踊り続けた。
街を歩きながら訳の分からないこと何度も何度も叫んだ。
いつの間にか朝になってて自分がしたことの大変さに気付いた。
慌ててアパートに戻った。
心臓が破裂するぐらい必死で走って走ってアパートに飛び込んだ時…。
あ…あの子の体は…。
すっかり冷たくなってた。
あんなに暑い部屋にいるのにまるで氷を抱いてるみたいに冷たくて。
こうやっていくら温めてもちっとも温かくならなかった。
保護責任者遺棄致死。
少年院から出て来たら私をかわいがってくれた父が自殺してた。
母はさっさと他に男をつくってた。
好きだった人とは連絡も取れなくなった。
私はまた独りぼっちになった。
だから死のうと思った。
けど死に切れなくてあの病院に運ばれてあなたに会った。
そして真っ赤なリンゴと生きる希望をもらった。
こんな女でもいいなら…。
私と結婚してください。
お願いします。
はぁ…。
今日は…。
お互いもう疲れたから寝よう。
はい。
明日ゆっくり話しよう。
これからのこと。
はい。
おやすみ。
おやすみなさい。
2015/02/11(水) 22:00〜23:00
読売テレビ1
○○妻 #5[字][デ]
「私は、昔、人を殺しました」ひかり(柴咲コウ)の衝撃の告白に、驚きを隠せない作太郎(平泉成)。そしてついに、ひかりは自らの過去について語り始める…。
詳細情報
番組内容
「私は、昔、人を殺しました」
ひかり(柴咲コウ)の告白に、驚きを隠せない作太郎(平泉成)だったが、ひかりの秘密は墓場まで持っていくと誓う。しかし、作太郎の容態が急変、危篤状態に陥る。朦朧とした意識の中、作太郎は正純(東山紀之)を呼び出し、久保田家の「秘密」を語り、息を引き取る。作太郎の葬儀の後、正純はひかりに「正式に結婚して子供を作りたい」と訴える。そして遂にひかりも自らの「秘密」を語り始める…!
出演者
柴咲コウ
黒木瞳
城田優
蓮佛美沙子
奥貫薫
渡辺真起子
岩本多代
平泉成
東山紀之
原作・脚本
【脚本】
遊川和彦
監督・演出
【演出】
猪股隆一
音楽
池頼広
制作
【チーフプロデューサー】
伊藤響
【プロデューサー】
大平太
福井宏
太田雅晴
【制作協力】
5年D組
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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