タクシードライバーの推理日誌34 2015.02.11


(夜明日出夫)はい着きました〜。
1700円頂きます。
はいはい。
はい。
ありがとうございます。
出なかったのよねゆうべ1等が。
なんですか?これゆうべお店でやったんだけどねなんと1等焼き肉食べ放題お二人様ご招待!うわ〜焼き肉食べ放題っていいですねぇ。
あっ引く?これ1回200円。
ハズレがなくて5等がねこの飴ちゃん。
はい運試し!あの私クジ運ないですから。
いや〜1等がね3本残ってるはずなの。
1等さ…3本ですか?じゃ1回だけ。
よし。
よし!よっ…!5等!飴!もう1回もう1回もう1回もう1回…。
5等!飴!もう1回もう1回だけもう1回だけもう1回だけ…。
飴じゃないんだよ〜。
食べたいのは焼き肉なんだよ!もう。
世の中の人は皆自分だけはおいしい話に引っかからないって信じてる
だが当たらないクジにそそられる私のようについ乗ってしまうのが人の常だ
しかしおいしい話には必ず裏がある
これは確かだ
(小林係長)「16461646」はい16461646。
(小林)夜明さんご指名です!ありがとうございまーす。
(クラクション)
(神谷警部)夜明さん!神谷の予約なんて珍しいな。
実は今朝ですねうちのカミさんが娘4人連れて沖縄行っちゃったんですよ。
ですっごい解放感!ハハハッ。
じゃあ今夜一杯やるか?ところがですねそのカミさんから宿題を出されちゃって。
宿題?お見合いの立会人をやれと。
夜明さんも同席してください。
さあ夜明さんのアパートで準備しましょう。
立会人?
(板倉早苗)こちら夜明さんのお宅ですか?板倉さん?はい。
どうぞ。
板倉早苗です。
今日はよろしくお願いします。
彼女は元社会部記者で警視庁詰めだったんです。
ネタを取るために我が家に夜討ち朝駆けで押しかけてきてて。
その節はご迷惑おかけしました。
いやいや。
随分粘る記者だなと思ってたらいつの間にかうちのカミさんと仲良くなって一緒に夕飯食べたり。
ハハハハ…。
神谷!今着たスーツなんで脱いでんだよ!?やっぱりこっちの方がいいかなと思いまして。
時間がないだろ時間が!いえまだ大丈夫です。
私お茶入れますね。
いやいや…。
今日はあなたのお見合い。
主役ですから。
座っててください。
いえお気になさらないでください。
いつも神谷さんのところでやってますから。
その前にお手洗いをお借りします。
ああどうぞどうぞ。
ねっいい子でしょ?私が親戚のおじさんみたいな気持ちになるのがわかるでしょ?わかるけど急ごうおじさん。
(野村)へぇ〜見合いですか。
向こうさん板倉さんの事を気に入ったとしても立会人の神谷の顔が気に入らなかったりして。
この誠実味あふれる私の顔のどこがいけないんです?冗談だよ。
こんな日によくそんなくだらない…。
(野村)夜明さんはそちらの緊張をほぐそうとしてるんですよ。
ありがとうございます。
あっすいません。
そこの先で5分だけ待っててもらってもいいですか?ん?そこの事務所に母から頼まれた書類を置いてこないといけないので。

(エレベーターの到着音)
(里田由美)あ…うちへいらしたんですか?能美先生のところの方ですね。
はい。
先生お客様ですよ。
先生?
(悲鳴)うるさいよもう。
あの…大変です!はい?弁護士さんが亡くなってるんですよ!
(パトカーのサイレン)
(馬場幸男)能美健司56歳。
職業弁護士です。
(馬場)死因は腹部を鋭利な刃物で刺された事による失血死。
死亡推定時刻は午前10時から午後1時の間。
(東山秀作)室内を荒らされたというような事はないですね。
何か奪われたといったような事は?いえ何も取られてはないようです。
物取りでないとすると怨恨ですか。
(国代義明)警部これ見てください。
12時10分で止まっています。
これが犯行時刻でしょうか?うむ確かめてみる必要があるな。
はい。
これは…来客の名前か?警部今日の日付のところに「I来訪」とありますが。
これが誰なのか確認を取ってくれ。
はい。
ちょっとよろしいですか?はい。
スケジュールにあるこの「I」。
これどなたかおわかりですか?いいえ。
私たちはそれぞれの仕事の情報交換をほとんどしていなかったので先生が今日誰と会う予定だったのか私は全く知りません。
では能美弁護士の周りで最近何かトラブルはありましたか?さあ特には…。
誰かに恨まれていたといったような事は?それもよくは知らなくて…。
あっ…あの人!えっ?2日前の事ですが少し気になる人が能美先生を訪ねてきました。
(男)これを金に換えてくれませんか?現金が必要なんですよ!
(能美健司)その件については会社に聞いてもらった方が。
私ではわかりかねます。
会社へ行ったけどあいつは会ってくれないんだよ!だからここに来てんじゃねえか!
(能美)しかし…。
40代の男…ですか。
作業着を着ていた。
君は能美弁護士とはどんな関係だったのかね?能美先生は私の母の成年後見人だったんです。
成年後見人というと…判断能力が衰えた方に代わって代理で法的手続きを行う人を言うんだったよね。
必要な際には預金通帳などを預かり金銭の引き出しも引き受ける…。
私の母はまだそんな歳ではありません。
でも任意後見といって将来何かあった時にはお世話になるという事で能美先生と契約を交わしていたんです。
しかし普通は後見人というのは親族を指定するものじゃ…?私と母が少し揉めてまして。
それで母が能美先生に。
うーん…。
お母さんは確か今飛騨高山にお住まいだったね。
はい。
私と両親は東京で暮らしてましたが父が亡くなったあと私と母は高山の母の実家に戻ったんです。
能美先生も高山の生まれで1年ほど前から向こうでボランティアの法律相談所を引き受けてらっしゃいました。
では今朝の10時から夜明さんのアパートに来るまでの間どこに?11時過ぎまではうちにいました。
それから夜明さんのお宅に行き着いたのは確か12時頃だったと思います。
それ以降は我々と一緒だった。
はい。
(山崎佐和子)信じられません。
能美先生が亡くなるなんて…。
お気の毒ですが…。
であなたは半年前までその能美法律事務所で能美さんの秘書を務めてましたね?はい。
今は産休を頂いてます。
あなたが働いてる間に能美先生の事を強く恨んでるような人物が事務所に出入りしていたとかいうような事ありませんか?そんな人はいなかったかと…。
では能美さんとイソ弁の里田さんとの関係は良好でしたか?それはあんまり…。
はい?子供が生まれたお祝いに来てくれた時にも…。
(由美)私はもっと自分の可能性を試したいの。
なのに縛られて…。
もう息が詰まるわ。
(国代)息が詰まると里田由美は言ってたそうです。
どういう意味だ?そこまではわからないと。
ただ里田由美が能美の事を邪魔に感じていた事だけは確かなようです。
気になるな。
(国代)秘書はもう1人気になる人物の事を話していました。
彼女が産休に入る直前のおよそ半年前…。
(飯田敦)あんたのおかげで5億円の賠償金を支払わなきゃならんのだよ。
なんとか穴埋めする方法を考えろよ。
5億の賠償金!?
(国代)はい。
それが何かはこれから調べてみないとわかりません。
その怒鳴った男の身元は…。
はい能美が顧問を務める大手不動産会社フラシアの専務で飯田敦53歳。
飯田?はい。
ではスケジュール表に残されていた頭文字「I」はこの飯田を示してる可能性もあるんだな?はい。
(馬場)ちなみにスケジュール帳も確認したところこの「I」の文字は頻繁に出てきますね。
密接な関係にあった人物か…。
よしともかく急いでその数億円の中身を調べ飯田という男のアリバイの確認をしろ。
さらに里田由美それと能美氏に土下座していた男も捜査対象に加える。
それぞれ聞き込みに全力を挙げろ。
(3人)はい!こちらの会社の専務で飯田さんにお会いしたいんですが。
はい少々お待ちくださいませ。
あっ専務。
専務?あっすいません!警視庁捜査1課の東山といいます。
国代です。
この会社の顧問弁護士の能美健司さんが殺害されました。
ご存じですか?そうらしいな。
能美さんとはよくお会いになってたんですか?どけ。
私は忙しいんだ。
こんなものに拘束力はない!
(鐘の音)ご指名ありがとうございます。
先日はありがとうございました。
東都新聞までお願いします。
はい。
お墓参りですか?はい。
知り合いが3か月前に亡くなりまして。
そうですか…。
寂しいですとても。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
(西村あゆみ)早苗さんおかえりなさい。
ただいま。
ええっ!?お父さん!あゆみ!あゆみ…お前こんなとこで何やってんの?働いてるのよ。
先月から早苗さんの下でバイトしてるの。
お前新聞社務まるわけないじゃない。
失礼ねぇ。
そりゃあ記事は書いてないけど役には立ってるんだから。
テープ起こししたりして。
えっ夜明さんってあゆみちゃんのお父さん?でも名字が…。
あっはい。
うちの両親離婚してるんです。
イテテ…。
父は元刑事で色々あって警察を辞めて母とも別れたんです。
警察にお勤めだったんですか。
まあその時の神谷同僚なんです。
あっそれで!えっ!神谷のおじさんご存じなんですか?まるっきりさ親戚のおじさん気取りでお見合いセッティングしたりして。
えーっお見合い!?あのー…でなんてお返事を?色々事情があって結局お見合いはお流れになっちゃったの。
でも結果としてはよかったと思ってます。
私やっぱりまだ結婚は…。
いけない!お喋りしてたらデスクにしかられるわ。
夜明さん神谷さんによろしくお伝えください。
ありがとうございました。
感じいいでしょう?早苗さんは私の理想の新聞記者さんなの。
彼女評判いいね。
この写真の男性は銀行に勤務していて相続に関する問題であなたに弁護を依頼してきた。
そして裁判のあともあなた方は頻繁に会っていた。
深い仲だったんですね?そんな事説明する必要は…。
この男性には家庭がある。
その弱みに能美氏は付け込んだ。
事務所を辞めたらこの事を公にすると遠回しに脅した。
違いますか?そのとおりです。
やりたい仕事も出来ず能美の言いなりに…。
それを恨みに思って殺したんですか?違います!そんな愚かな真似はしません!では警部は里田由美はシロだとおっしゃるんですか?いくら脅されているのが苦痛だったとはいえ殺人を犯すにはリスクが大きすぎる。
法に携わる人間ならそう思って当然じゃないか?確かにそうですね。
警部実は今自分が一番引っかかっているのはこの板倉早苗です。
なんだと!?板倉早苗にはアリバイがありません。
しかも頭文字が「I」です。
おい…。
それから動機の面でも注目するべき点があります。
彼女自身が言っていた成年後見人の件です。
後見人を誰にするかを巡ってはよくトラブルが起きるといわれています。
子供が親の遺産目当てに言い争いを起こすケースがあるからです。
そこで調べてみました。
板倉早苗の母親の実家は代々続く大きなお店です。
土地も多く所有しています。
財産はかなりのものだったそうです。
早苗とその母親は揉めていたんですよね?もしそれがその財産を巡っての衝突だったとしたら母親側の人間である能美弁護士が邪魔だったとも考えられます。
東山言ったはずだぞ。
早苗ちゃんは…いや板倉君は東都新聞の元社会部記者でこの私の知人だ!しかも美人です!はぁ?何を言ってるんだ!有り得ん!彼女が殺人を犯すなんて。
ですが警部ご自身がいつも口癖のようにおっしゃってるじゃないですか。
捜査の上ではどんな人間も等しく疑ってかかれ。
それが捜査の鉄則だと。
いいだろう。
好きなだけ彼女を調べてみろ。
はい。
失礼します!警部!事件直前に能美弁護士を目撃したという人物が出てきました。
どこの誰だ?あの法律事務所の近所に店を構える蕎麦屋の店員です。
彼は事件当日のちょうど正午能美氏に頼まれて蕎麦の出前に行ったそうです。
(能美)ああそこ置いといてくれ。
はい!能美氏が返事をした!?ええはっきりと。
これで能美氏の死亡推定時刻は正午から午後1時の間となりました。
(舌打ち)東山。
板倉早苗君はその時刻は?警部と夜明さんと一緒でした。
つまり?シロという事です。
私の言葉が正しかったわけだな。
はい。
先輩。
夜明さ〜ん。
起きてくださ〜い。
朝ですよ〜。
大好物のメザシ焼けましたーっ!焼けましたーっ!うるさい…。
もうちょっと寝るもうちょっと寝る…。
国代よしいこう!よいしょーっ!あーっ!
(国代・東山)せーの!メザシ!焼けた!メザシ!焼けた…!はい!よいしょ!はいおはようございます!おはようございまーす。
もうちょっと寝る…。
どうしても聞いて頂きたい事があるんです。
10分いや5分で結構です。
聞かない。
そうですか。
あの板倉早苗に関する事なんですけど。
聞く!はい。
半年前能美弁護士を怒鳴っていた大手不動産会社フラシアの専務飯田が言っていた賠償金なんの事だかわかりました。
昨年担当した港区の土地売買の件で地主との折衝に失敗しました。
それでその場所に商業施設を建設予定だった事業体から契約不履行で賠償金を求める訴訟を起こされたんです。
その結果フラシアは5億円の賠償金を支払う事になりました。
その裁判の弁護をしたのがフラシアの顧問弁護士だった能美なんです。
億の損失です。
これはでかいですよ。
この一件で責任者だった飯田は当然会社の中での立場も非常に厳しいものになりました。
その事で能美弁護士の事を恨んでいたとも思われます。
ですから飯田は能美殺害の動機があったという事です。
じゃあそいつ連れてきて吐かせて逮捕。
一件落着。
はい飯。
はい!こちらです。
はい!
(国代)せーの!
(3人)よいしょよいしょ…。
ちょっとちょっとちょっと…!はいいこう!はいいこう!よっ!よいしょ!
(3人)せーのよいしょーっ!いただきます。
どうぞ。
ところがその飯田我々の質問に答える事なく行方をくらませたんです。
社内の人間の話によると飛騨高山へ行ったと。
飛騨高山?はい。
能美の出身地も高山です。
それとどうしても気になるんです。
板倉早苗の実家があるのも高山です。
何言ってんだよ。
彼女この事件と全く関係ないだろう。
あれ?夜明さんまで板倉早苗は清廉潔白で頭から信じてちっとも疑わないんですか!?警部と同じだ。
当たり前だろうが!だって能美が殺害された時刻彼女は俺たちと一緒にいたんだから疑いようがないだろう。
あ〜あがっかりだよこの中年コンビには。
もう相手がちょっと感じのいい女性だったらすぐ甘〜くなるんだよ。
なあ!
(国代・馬場)ですよね〜。
甘くない苦い。
うう飲めない…。
(ノック)ノック。
ノック!はいっ!はい。
すいませんお荷物です。
こちら判子お願いします。
下駄箱の中。
ああはいはい。
よいしょ。
はいどうも。
はいご苦労さーん。
ありがとうございます。
はいどうぞ!おーっと!誰から?えーっと…神谷警部です!神谷?
(ノック)はい?警部!あっ中年コンビ。
ああおはようございます!お前たちも来てたのか。
参りましたよ。
ゆうべ一人で飯食ってたらまずいのなんのって。
もう懲りました。
ですからカミさんが帰るまではここに泊まる事にしました。
あっこれ私の着替えと洗面道具ですから勝手に開けないでくださいね。
(東山・馬場・国代)マイ枕!ちょちょちょ…待てよ。
何?お前のむさい顔と一緒に俺毎日暮らすわけ?もちろんタダでとは言いません。
現在能美殺しの犯人像に最も近いのは飯田敦です。
奴は今飛騨高山にいます。
なんとしても奴の供述を取る必要があります。
夜明さんこれから高山まで連れていってもらえますか?えっ!もちろん喜んで!さすが…。
(東山・馬場・国代)ロングの夜明!
(3人)ははーっ!はい!
こうして我々は飛騨高山を目指して出発した
ああ〜。
うう〜ん!高山中央署の協力を得て飯田の居所を捜し出すんだ。
はい。
警部は?能美弁護士の関係者を当たる。
夜明さん馬場町へ行ってください。
了解。
よし。
はい。
板倉さんですね?
(板倉美喜子)はい。
覚えてらっしゃいますか?神谷です。
神谷さん!まあお久しぶりでございます。
(美喜子)早苗がいつもお世話になっていて…。
あの子神谷さんの事親戚のおじさんみたいだって。
あ…。
私も身内同然に思ってます。
フフッ…。
こちらへは観光ですか?あいえ…。
実は高山出身の弁護士能美健司さんが殺害された件で参りました。
能美弁護士とは成年後見人の契約をされていたとか。
はい。
こちらに法律相談にみえた時にそういう制度がある事を教えてもらいまして契約しました。
お先に。
不調法ですが頂きます。
能美氏はこの高山ではどう思われていたんでしょうか?どんな…。
ボランティアで法律の事を詳しく教えてくださるし地元の発展を心から祈ってらして皆さんいい方だと思ってましたよ。
恨まれるような事はなかったと。
ええ。
では少し立ち入った事を聞いてもいいですか?能美氏とはなぜ契約を?普通は少し体の自由が利かなくなったりしてから依頼するものですよね後見人を。
ええ…。
実は早苗さんがお母さんと揉めてるとこぼしてましたがそれと関係あるんじゃ…。
親子げんかをしまして。
つい早苗にいくら年を取ってもあなたの世話にだけはならないからって…。
それで能美先生と契約を。
そうでしたか。
わたくし反対したんですあの子の結婚に。
(神谷・夜明)結婚!?あの子ものすごく反発しましてね…。
神谷さん!夜明さん!どうして…?
(美喜子)今あなたの話が出てたとこよ。
結婚の。
(早苗)そんな余計な事言わないでよ…。
(携帯電話)あっ失礼。
うんうん…。
そうかわかった。
すぐ行く。
飯田の居所がわかりました。
せっかくですが行かなければならなくなりました。
これで失礼します。
こっちもか?で飯田は?
(持田刑事)あそこです。
牧場開発とは?はい。
地元有志とフラシアが協力してこの辺りを牧場にして周りに乳製品の精製工場加工工場販売店を作り一大酪農王国にしようという開発計画の事です。
ほう。
でそばにいる男がこの開発計画のために飯田が雇った高山支部長の浜中です。
飯田さんですね。
警視庁捜査1課の神谷です。
2〜3お聞きしたい事があるんですが。
暇じゃないんでね手短に。
あなたの会社は亡くなった能美弁護士と顧問契約を結んでおられましたね。
その能美さんが担当した裁判が敗訴に終わって多額の賠償金を支払わねばならなくなったと聞いたのですが事実ですか?ええまあ。
責任者であったあなたにとっては大きなダメージだったはずです。
当然能美さんに恨みを持たれたでしょうね。
ビジネス上のトラブルはしょっちゅう起きてます。
いちいち恨んでたら体がもちませんよ。
しかし半年前あなたは能美さんの事務所で怒鳴ってたそうじゃありませんか。
(飯田)忘れました。
では23日正午から午後1時の間あなたはどこにいらっしゃいました?23日…。
あなたの秘書には既に確認を取ってあります。
あなたはその日風邪だとかで会社を休んでらした。
わかってるなら聞かなきゃいいでしょう。
ええだったら一人で部屋にいましたよ。
いいですか?失礼。
浜中!
(浜中武)はいっ!
(刺す音)あなたはもう高山へは帰ってこないつもりなんじゃないかと思ったわ。
あれからお母さんも考えたわ。
少し意固地になりすぎてた。
ただねお父さんの事やあなたのそのケガの事を考えたらどうしても…。
もういいよ。
今さらそんな事話しても無駄だから。
出かけてくる。
どこ行くの?ここは?私営の老人介護施設です。
「上条グループ」…。
(吉村悟)お体はどうです?ちゃんと眠れてますか?はいありがとうございます。
はい。
(林有三)飯田さん。
いやぁ皆さんの元気な顔を見て安心しましたよ。
ええ。
もう大丈夫ですね。
今飯田と話してる男は誰ですか?ああ吉村ですね。
東海地方に20か所近く老人介護施設を展開してる上条グループの取締役です。
(国代)じゃあここもそのグループの施設なんですね。
(田宮刑事)そうです。
よくああして視察に来ているようです。
(林友彦)こいつ…。
(友彦)おい飯田!
(有三)友彦!友彦!先輩!
(有三)友彦!友彦!
(有三)友彦!よせ友彦!なんで逃げんだよ!おとなしくしろ!どうか手荒な真似はしないでください!お願いします!とりあえず署まで来てもらおうか!なんで俺が!チッ…わかったよ行くよ。
(吉村)心配しないでください。
心配しないでください。
事情を。
あの林という男はなぜあなたに殴りかかろうとしたんです?こっちが聞きたいよ。
ではなぜあなたは飛騨苑を訪ねたのです?亡くなった能美さんが上条グループの顧問弁護士もしてたんで取締役の吉村さんに能美さんの後継者について相談してたんですよ。
フラシアの飯田専務とはどういう関係なんだ?親父の見舞いに行った時何度か顔を合わせてた。
それだけの関係だよ。
なぜその飯田に乱暴を働いたんだ?腹が立ったからだよ。
なんで腹が立つんだ?俺の工房は先月不渡りを出して倒産寸前なんだよ。
なのにあいつはいい背広着ていい時計をしていつもニヤニヤ笑ってやがる。
だから殴ってやろうと思った!それだけだ。
今月21日東京にいたな。
能美弁護士の事務所だ。
頼む!このとおりだ!そこで土下座してたそうじゃないか。
能美弁護士に何頼んでたんだ?金だよ。
俺は今まとまった金が必要なんだ。
あの人は高山出身だ。
弁護士なら金持ってるだろうと思ったんだよ。
なあそんなでまかせが通用すると思ってんのか!本当だよ!嘘じゃない!
(シャッター音)
(シャッター音)何もなしか…。
腹減ったな。
もうペコペコですよ。
(早苗)婚約していたのは藤本圭太といってうちの社会部の記者でした。
私は彼の記事を読んで以前から憧れてましたし…。
(藤本圭太)こんなもの俺の書いた記事じゃありませんよ!
(早苗の声)記事に対して一切妥協しない態度も素敵だと思ってました。
藤本さん。
今朝の記事よかったです。
2日目のカレーのレシピの記事あれ参考になったよ。
ありがとう。
(早苗の声)社で何度か顔を合わせているうちに親しくなり半年前にプロポーズされました。
うん…。
(早苗)母に報告してから神谷さんにもと思ってたんですけど…。
お母さんに反対された。
ええ。
社会部の記者との結婚は賛成出来ないってはっきり言われました。
社会部がダメ…。
どうして?
(早苗)私の父は東都新聞の社会部の記者でした。
私は父に憧れて記者になりました。
でも母は嫌だったみたいです。
凶悪な事件を追いかけたり暴力団員に取材したりする記者の仕事が。
お母さんの気持ちはよくわかる。
いつ事件に巻き込まれるかわからない職場に娘を置きたくない気持ちはね。
それで社会部はダメだって?単純に寂しかったのかもしれませんけど。
母一人子一人で生きてきましたから。
そんな彼がいるのにどうしてお見合いなんか?それを先に言わなければいけませんね。
亡くなったんです彼。
3か月前に。
実は能美弁護士が亡くなったという事件の一報を聞いた時から気になってたんですけども…。
何か?4か月前でしたかこちら出身の新聞記者が署に来まして。
(持田の声)その記者の母親が法律相談に行って知り合った能美弁護士から勧められて今日行った牧場予定地の開発に際してフラシアが出資者を募集してるというんです。
1口30万と小口ではありますが1年後に倍額にして返すというものです。
倍額?はい。
そんなおいしい話はおかしいんじゃないか。
そもそも弁護士が出資を勧めるなんて認められてるのかと…。
詰め寄られましてね。
ふ〜ん新聞記者。
はい。
その女性ひょっとして東都新聞の板倉早苗じゃないですか?はい。
あら?ご存じでしたか。
じゃあ今夜東京に戻って明日すぐ出社?ええ。
取材もあるもんですから。
若いなぁ。
夜明さんにはとても出来ない芸当だ。
俺引き合いに出すなよ。
じゃあ失礼します。
運転気をつけてね。
はい。
(ニワトリの鳴き声)先輩!
(国代)夜明さん!起きてください!朝ですよ!起きてください!起きてください五平餅あります!もう。
警部!警部!起床のお時間でーす!朝です!五平餅ありますから!ああーっ!
(皿をたたく音)夜明さん大事な話があるんです!やかましいやかましい…!神谷のいびきがうるさくて寝てないんだよ!ああーっ!警部!朝ですよ!夜明さーん!大事な話があるんです!よし。
はい!よっしゃ!せーの!
(国代・東山)うりゃーっ!よいしょ!せーのよいしょ!よっしゃあ!おはようございます!おはようございます!板倉早苗やはり能美殺しに関わっていたかもしれません!えっ!?早苗の母親美喜子は能美の話に従い4口120万円出資したそうです。
それで早苗は…。
母以外にも少なくないお年寄りが出資してます。
このまま放っといてもいいんですか?念のため警察の方で内情を調べてみてもらえませんか?
(国代)しかし親族間の財産に関わる揉め事は民事に当たりますから持田さんはこちらでは対応出来ないと板倉早苗を帰らせたらしいんです。
彼女はそんな事についてはひと言も言ってなかったが…。
自分もその事が気になったので今朝一番で早苗の母親に直接会って話を聞いてきました。
その出資話勧めたのは間違いなく能美弁護士ですか?ええ。
ただ勧められて調子に乗ったわけじゃないんですよ。
介護のお手伝いをしている飛騨苑の方たちと一緒にちゃんと説明会で説明を聞いて信用出来ると思いましたから。
いいですか皆様。
総資金20億のプロジェクトです。
この飛騨高山を酪農王国にすれば…。
若者だけじゃありません。
この乳製品精製工場加工工場の社員は一度リタイアした高齢者の方々を中心に構成します。
法律相談で高山に来ていた能美を訪ね事情を聞いたそうです。
すると能美はまあ正直弁護士で出資話を勧めたのは立場上まずかったと。
それで母親の美喜子に返金したと言ったそうです。
他の老人たちは?今のところ返金されてません。
1年で倍額になるから出資しろ…。
夜明さん大手の不動産会社がそんな話しますか?詐欺の可能性が高い。
はい。
(携帯電話)あっすいません。
(携帯電話)もしもし東山。
えっ?平湯温泉の大滝で飯田の刺殺死体が発見されました!ええ!?なんだと!?
(持田)死因は鋭利な刃物で刺された事による失血死です。
死亡推定時刻は昨夜10時から深夜1時までの間。
財布と携帯がなくなってます。
凶器は?付近を捜索しましたがまだ発見されておりません。
警部申し訳ありません。
ゆうべ自分たちが目を離していなければこんな結果には…。
とにかく飯田の昨日の足取りを追うんだ。
(東山・国代)はい。
飯田氏が昨日誰と会っていたかご存じありませんか?いえ全く。
飯田氏が出資者を募っていた事についてはいかがですか?居住者の何名かが説明会に行ったと聞いてはいましたが私はここの常駐ではないので詳しくは…。
そうですか。
林友彦さんのお父さんですね?息子さんはあなたが1千万の金を牧場開発の話に出資した事を知っていたんですね?あいつの木工工房の経営は今厳しい。
だから倒産する前に金を融通してくれと…。
なのにわしは飯田さんを信用して…。
息子さんは我々にはその話を伏せてましたが…。
くどく言われたんだよ!この話は限られた人にしか話していない。
警察にも役所にも内緒にしておけと。
喋ったら返金してもらえなくなるんじゃないかと…。
だからあいつも…。
ひどいやり口だな…。
(持田)林!
(持田)待てコラ!林!
(持田)おい…!飯田は殺害される。
林友彦には逃げられる…。
失態続きじゃないか!すいません!このミスは今後の捜査で必ず取り返します。
(ため息)ここまでの被害状況の報告。
はい。
まず牧場開発の件ですがフラシアの内部の会議で今年初め議題には上がったそうです。
しかしその後立ち消えになったと。
能美と飯田の仕掛けた実態のない開発計画だったんですね。
被害の全容は?今のところ高山で被害に遭ったと思われる人物は28名。
被害総額およそ5千万円です。
ひどいな!郷土を愛する地元民の心情を逆手に取った悪辣な詐欺ですね。
つまり被害に遭った者全員に飯田や能美を殺害する動機がある事になる。
やっぱり最も怪しいのはあの林友彦じゃありませんか?警部逃走時林は相当な金額の金を所持していたんですよね?とすると林が単に詐欺に遭った被害者の息子というのでは説明がつかないんじゃありませんか?そこだ。
万が一の可能性だが林が飯田らと共犯だったという線も浮かんでくる。
すると林は仲間割れで飯田を殺害した!?ああ。
そして問題は飯田殺しと先日の能美殺しが同一犯によるものかどうかだ。
殺害方法は同じです。
同一犯の犯行と見て間違いないんじゃないでしょうか。
けど能美殺しに関しては林にはきちんとしたアリバイがあります。
警部この板倉早苗はどうでしょうか?何!?早苗は飯田が高山へ行くのと時を同じくして高山へ行っています。
それから出資した金は返してもらったと母親も早苗も供述していますがもしそれが嘘だったとしたら金を騙し取られた恨みから飯田と能美を殺害したとも考えられます。
有り得ん!そんな可能性はない!いやですが…。
いいか?板倉君は25日午後9時高山から東京へ向かうのを私と夜明さんが見送ってるんだぞ。
ですからそこになんらかのアリバイ工作が…。
東山!お前はいつからそんな妄想好きになったんだ?疑うならそれなりの根拠を示せ!はい…。
ああ気に入らないなあ…。
警部補気に入りませんか。
全く気に入らないなあ。
能美殺しの時も飯田殺しの時も板倉早苗のアリバイを証明してるの警部と夜明さんだ。
こんな偶然気に入らないなあ!ですよね〜。
少々気に入りませんね。
いや大変気に入らない…。
なんだと?コラ!行くぞ。
はい!えっ?えっ!?あっ!またまたそしてまただよ!親父に続いて娘の登場だ。
まったく…。
いつまでこの親子と付き合わなきゃならないんだ…。
まったく…。
えっ?何?私きれいになったって?
(国代・東山)言ってない。
っていうかなんであゆみちゃんがここにいるの?まさかとは思うけど新聞記者とか言うのやめてよ。
フフッ。
もちのろんバイト!
(国代・東山)似合ってる!
(拍手)板倉さん!すいません少しお時間よろしいですか?ではあなたはうちの神谷と別れたあと真っすぐ東京へ戻られたんですか?はい。
ただ疲れていたので高山市内のドライブインで仮眠をとりました。
ドライブインで。
それはどれぐらいの時間ですか?1時間弱だったと思います。
でも車から降りたのはトイレに行った時だけです。
そうですか…。
まったく東山には板倉君という女性がわかってない!彼女は優秀な記者だったんですよ。
もし詐欺が許せなければペンで訴えて戦ってるに違いないんです。
社会部時代も天性の勘がありましてね。
ささいなきっかけから特ダネをつかんだ事がよくありました。
何よりあの気持ちいいほどの正義感!神谷。
なんで俺がさお前の晩飯を作ってやってこうして食い散らかした食器を洗ってお前のくだらない演説聞いてなきゃいけないの?それはまあ私はお客さんですから。
客じゃない。
交代。
はい…。
そりゃあ確かにさ早苗さんが能美殺しとか飯田殺しの犯人だとは思ってないよ。
けどお前早苗さんにちょっと肩入れが過ぎるな。
別に…。
本当か?
(せき払い)夜明さんにはかなわないな。
わかりました白状します。
(神谷の声)5年前傷害事件の犯人がレストランに立てこもるという事件が起きました。
我々は付近一帯に非常線を敷いて対処しようとしました。
しかし思った以上に犯人の動きが素早く…。
大丈夫か!?早苗!大丈夫?大丈夫!?申し訳ありませんでした。
だから新聞記者になんてならないでってあんなに言ったのに…。
お父さんと同じ事になったらどうするの!お父さんと一緒?ええ。
その日初めて打ち明けてくれたんですが東都新聞の記者だった早苗ちゃんの父親も彼女が10歳の時…。
(刺す音)
(板倉誠)うっ…。
刺し殺された?ええ。
犯人は組員だったそうです。
板倉君の父親は暴力団撲滅のキャンペーン記事を書いてました。
それで恨まれて…。
そういう事があったのか…。
ええ。
結婚相手に社会部の記者じゃ困るっていうお母さんの気持ちわかるな。
ええ。
そんな事もあって板倉君は文化部に異動になって…。
でもその後も気丈に社会部に復帰願いを出してました。
やはりペンで戦いたいという気持ちが強かったんです。
だが彼女が戻る椅子はなかった。
その藤本さんっていう社会部の記者に憧れた気持ちわかるね。
自分の夢を重ねた…。
複雑ですよ。
あの事件の現場を指揮していたのは私ですから。
ただでさえ幼い頃のトラウマと闘いながら生きていた彼女にまた恐ろしい経験をさせてしまい夢まで奪ってしまった。
仕事がダメならせめて幸せな結婚をと思ったんですが…。
婚約者に死なれていたとは…。
不憫だね。
ええ。
辞めようと思ってるとか?うーん…迷ってるところ。
食べていかなきゃいけないしね。
そこにつけ込むかな…。
ん?結婚しないか?俺を支えてほしい。
どう?わたくし結婚には反対です!待ってください!せめてお父さんのご仏前に線香をあげさせてください。
(鈴の音)あの時…これを…。
ハンカチ持った?忘れ物ないね?なんか恋女房みたいな事を言ってる自分が気持ち悪いよ。
私は気分がいいですがね。
じゃあいってきまーす!あっとととと…!忘れ物!ああ…。
いってらっしゃーい!林友彦だな?待て!さあここからどう動くかだ…。
(国代)ですよね。
ドライブインの映像か?おお…びっくりした!お前はまだ疑ってるのか?板倉君を!いえ…一度浮かんだ疑問をそのままにしておけないタチなものですから。
わかった。
見せろ。
はい。
これが板倉君の車だな?はい。
彼女はここで小一時間ほど仮眠をとったと言っています。
しかしこの間に平湯に行けば飯田殺害は可能です。
あっ見えなくなった…。
時間!
(国代)はい。
(国代)10秒…。
20秒…。
変化はない。
東京方面へ向かいました。
(ため息)つまり板倉君は犯行現場へは行ってない。
そうだな?東山。
はいそのとおりです。
(電話)はい捜査1課。
はい。
そうですかわかりました。
警部林友彦が奥飛騨温泉郷で身柄を確保されたそうです。
戻りました。
(小林)「いいですか?」「挨拶ははっきりと」「“ありがとうございました”は丁寧に」どうしたの?
(潮美)係長ぎっくり腰で休んでるんですけど…。
(小池)どうしても訓示したいんだって。
携帯で?スピーカーホンにしたらみんなに聞こえるだろって。
バカじゃないの。
(小林)「“バカじゃない”と言ったのは夜明さんですね!?」「なんたる暴言!許しませんよ!」すげえ感度いいんだな。
ワアーッ!
(小林)「ああ…!」指名ありがとうございます。
法明寺までお願いします。
はい。
1970円です。
はい。
ありがとうございます。
あの…藤本さんの墓参りですか?ええ。
もしよろしかったら私もいいですか?はい。
早苗さん!これが届いてました。
ありがとう。
これ圭太さんの…。
取材ノートが出てきたんだって?うん。
ケーキ食べようかな〜!ちょっとちょっと…。
ちゃんと喋れよ。
ほら時間がないんだから。
だから高山の家で見つかったんだって。
婚約者だった藤本さんのノートが。
早苗さんすっごい驚いてて…。
私も横からのぞいちゃった!「シニアマネーがターゲット」とかって書いてあった。
シニアマネー?お前ひょっとしてすごい取材能力持ってるかもしれない。
いいか?これ3つまでだぞ。
それ以上はダメだぞ。
はい。
えっ…。
気前よすぎる…。
不気味〜!これはなんだ?工房が倒産寸前なのになんで300万もの現金がカバンの中にあるんだ?25日の夜飯田専務と会ったんだろ?そこで金の事で言い争いになり飯田を殺した!違うか!?林友彦は犯行を否認し続けてるようですがそう長くはもたないでしょう。
じきに自供するに違いありません。
神谷そこに座れ。
は?はい。
早苗さんのところに届いた藤本さんの取材ノートによるとシニアマネーっていう言葉が書かれてたらしい。
え?もしかしたら早苗さんは牧場詐欺について調べ上げた事を全て藤本さんに話してたんじゃないのかな?そして藤本さんも調べ上げた。
というと?藤本さんもその牧場詐欺の内情をほとんどつかんだ。
そうなると能美とか飯田にとって藤本さんの存在は邪魔だろ?金が手に入る寸前に詐欺で告発されたら…。
もしかしたらさ藤本さん事故死じゃないんじゃないのかな。
なんですって!?では…。
事故死じゃなくて…他殺。
藤本さんが他殺だとすると飯田能美殺しの動機早苗さんも持つ事になる。
まさか…。
老人を騙して金を取るだけでも犯罪なのにまして婚約者が殺されたとなると…。
待ってください!藤本圭太が殺害されたという確かな証拠はあるんですか?いやない。
そうですよね。
論理が飛躍しすぎてます!それに百歩譲って藤本圭太が殺されていたとしても板倉君が殺人を犯した可能性はありません。
能美殺害時彼女は我々と一緒だった。
飯田が殺害された時刻にはドライブインにいてその後東京へ向かっている。
それを証明する防犯カメラの映像も残ってるんです。
そのアリバイが崩れない限り俺の推測は外れだな。
外れも外れ大外れですよ!私は夜明さんという人の人格を疑います!ああ!こんなところにいるのはもうごめんだ。
私はうちに帰ります。
荷物は…取りに来ますあとで。
神谷お前にとって早苗さんどれほど大切な人か知らない。
だけどお前の目が曇ったら刑事として終わりだよ。
夜明さん私はもう一度高山へ行ってきます。
しかしあくまで板倉君を信じた上でです。
今鑑識から報告が上がってきてなこの札には飯田専務の指紋がべっとり付いてるそうだ。
これどういう事なんだ?俺は…俺は…。
やっぱりお前は飯田と会ってたんだろ!あいつが訪ねてきたんだ。
とりあえず300万。
これで何も知らない事にしておいてほしい。
親父さんにはそのうち残りの金は返す。
しかし他の老人たちに返金する気はない。
俺にみんなを裏切れって言うのか!林さん私はこの牧場開発の仕事をあなたに手伝ってもらってもいいと思ってるんだ。
実入りがいいのはわかってるな?どちらが得な選択肢かよく考えてください。
警部!
(国代)いらしてたんですか?ああ。
林は?たった今飯田殺害当夜飯田と会っていた事を自供しました。
しかしその日は工房から一歩も出ていないと。
殺してはいないと言い張ってます。
うん…。
持田さん。
はい?
(田宮)これらが死亡時の藤本圭太です。
彼は新穂高の展望台に行きその帰り道誤って地獄平の砂防橋から落ちて死亡したんですね?
(持田)はい。
山岳救助隊が死体を新穂高の登山口の派出所に運び救急隊が死亡を確認するのを私の部下が見ておりました。
彼は登山の装備はしてなかったんですか?ええ。
このとおりスーツ姿だったそうです。
靴は革靴…。
ロープウエーを見て急に登る気にでもなったんですかね?死因は頭部強打による頭蓋骨陥没でしたね?はい。
本当に事故と断定出来るんですか?万が一ですが何者かに橋から突き落とされたとは考えられませんか?殺人だと!?警部!愛知県警岐阜県警から連絡が入りました。
飯田たちから牧場開発の話を聞き出資した人間が現在確認出来る限りで70名を超えるそうです。
被害総額はおよそ15億。
15億!?やはりかなり集めていたな。
これが被害者の氏名と年齢のリストです。
いやしかしこれ78808284って…ほとんどが老人ですね。
おいこの辺りの被害者の住所が皆同じになってるのはなぜだ?ああここにも同じ住所の固まりがありますね。
その人たちは恐らく同じ老人介護施設に住んでるんじゃないですかね?そうか介護施設に入っている老人たちを対象に投資話を持ちかければそれは随分と手間が省けるな。
はい。
ましてグループ経営の施設だとしたら勧誘出来る老人の数が桁外れに増える。
しかしそれにはそのグループの中心にいる人物の協力が絶対に必要ですね。
飯田能美に繋がる人物で介護施設グループの関係者…。
(野村)夜明さん。
はい。
これいいでしょ?時計買ったの?年代物なんですよ。
値段はまあまあなんですけどね。
年代物って何年前?1964年オリンピックの年ですね。
これねぜんまい式なんですよ。
だから一日一回ねじを巻いてやらないと止まっちゃうんです。
そこがかわいいんですよね〜。
あの時計が指してたのが能美の死亡時刻でなかったとしたら…
あの時間既に能美弁護士が殺害されていたとしたら…

(小林)「“ありがとうございました”は丁寧に」
そもそも警察が正午から午後1時までを死亡推定時刻にした事自体に間違いがあったとしたら…
すいません。
ちょっとお聞きしたい事がありまして。
ああ…あの時の…。
能美弁護士の腕時計についてなんですが…。
早苗さん休むって電話があったとこ。
休む?
(あゆみ)うん。
神谷に電話して。
えっ?あっもしもし?サンキューサンキュー…。
もしもし神谷?ああ夜明さん。
大至急調べてほしい事がある。
早苗さんが仮眠をとったドライブイン。
えっ?まさか…はい。
わかりました調べます。
こちらでもいくつかの事実が…。
だったらもう大至急急いだ方がいいな。
早苗さんは恐らく高山へ向かってる。
え?こっちもそっちへ向かう。
(あゆみ)そっちってどっちよ!?
(携帯電話)はい神谷です。
藤本圭太を新穂高の展望台で目撃したという情報をつかみました。
藤本さんは1人でしたか?いやそれが…。
誰かと一緒だったんですね!?
(クラクション)夜明さん!早苗さん来てます?いいえ!今買い物から戻ったら留守番電話が残っていてお母さん元気でねって…。
なんだか思い詰めたような声で…。
だから心配で…。
お母さん乗って!
(美喜子)ええ!私に取材というと?ええ。
介護施設の運営に携わってらっしゃる方の福祉に対するご意見をお伺いしたいと思いまして。
車で来てます。
場所を変えてお話しさせてもらえませんか?
(車の走行音)神谷。
夜明さん!早苗さんは?警部!吉村は板倉早苗と一緒に出ていったそうです。
2人が大変な事になる前に確保しよう!乗って乗って!
(サイレン)こんなところで取材ですか?ここの近くの橋の下で私の婚約者が亡くなりました。
彼はあなたが関わっていた牧場開発の取材をしていたせいで殺されたんです。
唐突になんですか?私が関わってたとは?私の婚約者は東都新聞社会部記者藤本圭太です。
彼の取材ノートを私は全部読みました。
申し訳ない。
話がわからないんだが。

(早苗)彼は牧場開発への出資の名目で集められていたお金の動きを全て調べ上げたんです。
その結果15億近い金額がフラシアの飯田とあなたの口座に流れてるのを知った。
私の?バカな…。
詐欺の主犯はあなたですね?どうにも見覚えのない事ですなあ。
何かの誤解だ。
とぼけたいならご勝手に。
私はあなた方のような人たちを許せない!老後に不安を抱えたお年寄りの心許ない気持ちにつけ込んで大事なお金を奪うような人たち。
大事な人の大事な命を簡単に奪う人たち。
血を流すのが平気な人たち。
もうたくさんなのよ!何を…。
ああ〜。
そう簡単にあなたの思うようにはなりませんよ!確かに私は詐欺に関わってましたよ。
でもあなた以外誰も知らない。
あなたにはここから恋人のあとを追って飛び降りてもらいますよ。
やめろ!吉村!うわ…ちょっと…。
板倉君大丈夫かね?この女が俺を殺そうとしたんだよ!おい!早くしろコラ!あの男を殺したあとあなたも死のうと思ってたでしょ?能美弁護士を殺害したのも飯田専務を殺害したのもあなたでしょ?夜明さん説明してください。
まず能美殺しから。
警察は出前に来た蕎麦屋の店員の証言から殺害時間を12時から1時の間と断定した。
それは間違ってる。
(早苗)能美さんあなたは新穂高に行かれてますよね?もういいもういい。
能美さん。
なんだよ。
うう…。
恐らくは午前10時前後にあなたは事務所で能美弁護士を殺害しスピーカー機能にした携帯電話を通話状態にしたままテーブルに置いて立ち去った。
そして12時に出前が届くように頼んだ。
その時刻私のアパートにいたあなたはそこで携帯が拾う声に耳を澄ませていた。
(店員)「藪助です!」
(能美の声)「ああそこ置いといてくれ」
(店員)「はい!」携帯からは録音してあった能美弁護士の声が流れた。
それを聞いた店員は能美弁護士は生きてると思い込んだ。
先生?
(悲鳴)締めくくりとしてあなたは死体が発見された時隙を見て携帯を回収したんです。
それは夜明さんの推測なんじゃ…?違います。
この推測が正しい事は能美弁護士の腕時計が証明しています。
12時10分で止まってた。
それは犯行時刻なんじゃ…?能美さんの腕時計は旧式のぜんまい時計です。
イソ弁の里田さんが毎朝10時に能美さんがぜんまいを巻いてたと証言してます。
その時計が12時10分に止まってた。
という事は10時に巻かなかった。
あるいは巻く事が出来なかった。
つまり既に殺されてた。
飯田の場合も周到な計算がなされてました。
藤本さんの死後あなたは牧場詐欺の実態を調べるために何度も高山を訪ねていたはずです。
その途中で何度もあのドライブインで休憩した。
そして気づいたんです。
決まってその場所に夜の9時以降度々トラックが来て止まる事に。
あなたはその場所を利用出来ないかと考えた。
そしてあの日前もってドライブインに行きあなたが車を止める場所の隣にレンタカーを停車させておいたんです。
我々と別れたあとそこに来て車を止めたあなたは…。
トラックが停車するとすぐ隣のレンタカーに乗り移りそのレンタカーで飯田の殺害現場である平湯へと向かった。
(車の走行音)そこで飯田を殺害し…。
あっ…ああ…。
再びドライブインに戻ったあなたはまたトラックが来るのを待ち…。
今度は自分の車に乗り移って東京へ戻った。
これが真実です。
そんな…。
板倉君なぜ…?4か月前あの牧場開発のパンフレットを見ました。
(早苗の声)私はちょうどその時高山に法律相談に来ていた能美弁護士を訪ねて事情を聞いてみる事にしました。
能美は私が新聞社の人間だと知り警戒した様子でした。
飯田専務も少しオーバーな言い方をしてしまったかもしれないとおっしゃってます。
お母さんから預かったお金は全額返金するとの事でした。
(早苗の声)能美はそれで済まそうとしましたが私はまだ他に出資をした老人が何人もいる事が気がかりで警察に行きました。
けれど対応は鈍いものでした。
東京に戻った私は圭太さんにその事を相談しました。
この出資話を信じてお金を出したお年寄りはどうなるのよ?みんなどんな思いでためたお金だと思うの?わかったよ。
時間ひねり出してなんとかするよ。
圭太ならきっとなんとかしてくれる。
そう信じてました。
それから2週間ほど経った時に…。
(早苗の声)ああ圭太は調べてくれるんだそう思ってホッとしていたら翌日の朝…。
(携帯電話)はい板倉です。
「こちら高山中央署です」「藤本圭太さんのお知り合いの方ですね?」ええ。
藤本圭太さんが新穂高で事故に遭われて残念ながら亡くなられました。

(早苗)どうして…。
圭太…圭太!圭太…!やだ…。
私は混乱してどうしようもなかった。
でも初七日が終わった頃疑問が湧いてきたんです。
なぜ圭太は新穂高へ行ったのか?牧場開発の話はどうなったのか?じっとしていられなくなって…。
(早苗の声)まず飯田に会おうとしました。
でも警戒して会ってはくれませんでした。
次に牧場開発に携わっているスタッフに何度か接触。
実は工事が始まるめどが全く立っていない事を突き止めました。
同時に圭太が積極的にフラシアと能美弁護士を取材していた事も聞き出しました。
藤本?東都新聞の社会部の記者です。
知りませんねえ。
(早苗)そんなはずありません!あなたが関わっている牧場開発の話フラシア内部で立ち消えになってるというじゃありませんか。
集めたお金はどこへやったんですか?藤本記者も同じ質問をしたはずです。
知りませんねえ。
(ドアの開く音)
(店員)藪助です!ああそこ置いといてくれ。
(店員)はい!とにかく私はそんな新聞記者なんかとは無関係だからね。
(早苗の声)もしかしたら…と思いました。
わかりました。
お手間を取らせました。

(早苗の声)やっぱり…と思った。
圭太はあの男に殺された。
恐らく飯田の指示で。
今日は全部話してくれるんですね?ええ。
開発計画を最初に考えた方にも会ってもらいますよ。

(藤本)うわっ…。
(早苗)私が頼んだからです。
調べてって言ったから…。
そのせいで圭太は命を落としたんです。
じゃああのノートは…。
藤本さん自分の身にもしもの事があったら…と思って残していったんでしょう。
早苗さんはそれを藤本さんの遺言として捉え吉村を殺そうとした。
板倉君私は今でも信じられないよ。
ナイフで復讐するぐらいならペンで訴えて戦うそれが板倉早苗という女性じゃなかったのかね?思い出したんです。
圭太の遺体を見た時に…。
(早苗の声)父が殺された時の事を…。
命が消えていく時の無力さとやるせなさ…。
心が死ぬんです。
何も感じなくなる…。
今度も同じ。
もうペンなんかに頼ってちゃダメ。
暴力は暴力で。
でないとボロ布のように殺された父と圭太さんがかわいそうすぎる。
だから…。
違う!板倉君それは違うぞ!神谷の言うようにあなた暴力に頼ったらあなたが嫌ってた最悪の人間に成り下がってしまう。
お父さんも藤本さんもそんな事は望んでなかったはずだ。
でも…。
いや神谷の言うようにどんなに苦しくてもペンで戦うべきでした。
藤本さんのためにもお父さんのためにもあそこにいるお母さんのためにも。
早苗!私はあなたを許さないわよ。
許さないわよ!
(刺す音)神谷さん。
夜明さん。
娘に代わってお詫び申し上げます!板倉君私はね…。
本当に見たかったんだよ君の花嫁姿を。
バージンロードはこの私が並んで歩くつもりでいたのに…。
残念だ…。
ごめんなさい…。
(早苗)ごめんなさい…。
ごめんなさい…ごめんなさい…。
ごめんなさい…。
(泣き声)「あなたを許さない」…。
まさしく親の言葉だね。
悔しいです。
彼女がそこまで追い込まれているのを見抜けなかった自分が。
親しい人間は自分の感情が邪魔して見えなくなる事がある。
刑事失格です。
ですが今回改めて思いました。
悪しき心を持った悪人だけが罪を犯すのではないと。
早苗さんはよき心を持った正義の人だった。
それゆえに罪を許せず凶行に走った。
ある意味ではさ早苗さん一番の被害者かもしれないな。
ええ…。
待とうと思います。
板倉君が…早苗ちゃんが罪を償ってもう一度真っ白い気持ちで私の前に現れる時を。
親戚のおじさんだもんな。
じゃあ神谷のおじさん奥さんとお嬢さんたち帰ってきたんだ?うるさくてたまんないですよって言いながらニタニタニタニタして帰っていったよ。
あっ!お父さんうらやましいんだ!えっ?家庭の味。
ねえお父さんこそさ今度さお見合いしたら?バカ言うな!お前さ本当に親からかうようになったね。
もう帰るよ。
それそれそういうとこ。
そういうすぐすねるとこがお父さんのねチャームポイント。
ねえそれさお見合いでアピールしちゃおう!私ついていくから。
よしじゃあ明るい老後のために焼き肉へゴー!何がアピールだよ!何が焼き肉だよ!食べ放題は焼き肉じゃないの。
飴なの飴。
飴!2015/02/11(水) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
タクシードライバーの推理日誌34[再][字]

飛騨高山〜殺人スクープの女!!1年で倍返し!?疑惑の投資詐欺で連続殺人!!死者が頼んだ出前トリックの謎!?

詳細情報
◇番組内容
渡瀬恒彦主演の人気シリーズ第34作!神谷警部が“娘”のように思っていた女性記者に、殺人の嫌疑が!?彼女の無実を信じる神谷と夜明が対立!?小京都・飛騨高山で大ロケーション!!
◇出演者
渡瀬恒彦、平田満、酒井美紀、梶芽衣子、寺島進、風見しんご、小林健、春田純一、徳井優、林美穂

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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