きょうの健康 胃がん 最新情報「治すための手術」 2015.02.11


(テーマ音楽)知っておきたい健康情報を分かりやすくお伝えしましょう。
「きょうの健康」です。
今週は…まず今日はこんな例からご覧下さい。
こちらですね。
これまで特に胃の不調も感じず元気に過ごしていたAさん。
ところがある日早期の胃がんと診断されました。
幸い早期で見つかったためAさんが希望したのは内視鏡治療。
しかし主治医からはリンパ節転移の可能性があり手術を勧められたんです。
早期で見つかったんですがね。
内視鏡ができない事もあるんですね。
そうなんです。
そこで今日のテーマはこちら。
胃の機能を残す最新の手術についてお伝えしていきます。
今日も専門家をお迎えしております。
分かりやすく教えて頂きましょう。
それではご紹介致します。
胃がんの手術と栄養療法がご専門でございます。
今日はどうぞよろしくお願い致します。
Aさんは早期の胃がんですから早く見つかってよかったと思うんですが内視鏡でなんとかならないのかなと思いますが…。
早期胃がんって聞きますと全ての早期胃がんが内視鏡で取れてしまうんじゃないかと皆さん思われがちなんですが例えばリンパ節転移があった場合というものも存在しますのでその場合はやはり手術が必要になる訳です。
リンパ節に転移があるかどうかという事は治療の前に調べる事ができるのですか?このAさんの場合は粘膜下層まで恐らくがんが行っていたというか浸潤していたケースなのでその場合約5人に1人はリンパ節転移がある訳なんですがこの5人に1人を検査で知る事はなかなか難しいんです。
最新鋭のCTもしくはPETスキャンを使ってもなかなかこれを診断する事は難しいんです。
そうしますと転移のリスクがあるという事と胃がんの進行の段階とは大きく関係があって治療の戦略にも関係するという事なんですね?そのとおりです。
ここにありますように胃がんがここにあります。
周りにリンパ節というものがあるんですがこのリンパ節に転移がない場合もしくはその他の転移がない場合この胃がんだけを取り除く手術を恐らく内視鏡とかもしくは局所を切除するとかそういった手術でこのがんは治ってしまいます。
一方リンパ節です。
リンパ節に転移した場合それも胃の近くにここに赤で示してありますが胃の近くにあるリンパ節に転移した場合はこの胃がんとリンパ節を取るつまり先ほど申し上げたように手術で胃がんのある胃壁とリンパ節を取る手術でこの治療が行われる訳です。
更に転移が進んだ場合ですね。
ご説明頂きましょう。
遠隔転移といいますが例えば肝臓への転移。
血に乗って肝臓に転移したりあとは腹膜。
胃がんが直接ここに種をまくように腹膜に転移した場合この場合は遠隔転移といって手術ではなくて抗がん剤によって治療が行われる訳です。
今日は胃がんの手術の方法について詳しく伺っていく訳なんですが胃がんの手術最近では腹くう鏡手術という方法も耳にしますよね。
これは内視鏡の手術とはどう違うんですか?腹くう鏡と内視鏡の違いはよく混同されるんですが内視鏡というのはいわゆる一般に言うところの胃カメラと昔言われてたもので胃の中に内視鏡を挿入してその内視鏡によってこの胃がんの粘膜ごと剥ぎ取るといった手術。
この手術です。
ここの部分です。
内視鏡によってここを剥ぎ取るといったものが内視鏡治療。
ところが腹くう鏡というのはおなかの中にガスを入れてそのガスで膨らました結果ここにいろんな器具を入れて胃がんを胃壁ごと切り取って更にリンパ節を取るという事をする手術。
これを腹くう鏡手術といいます。
全く違うものだと理解しなきゃいけませんね。
腹くう鏡手術の特徴を教えて頂きたいんですがいわゆる開腹…おなかを大きく切り開く手術と比べてどういうふうな特徴がございましょうかね?まず特徴的なものは傷が小さいです。
美容面に優れているという事です。
更に出血が非常に少ない。
非常に少ない出血で手術ができるので体に負担が少なかったりとか回復が早いともいわれてます。
いい点がありますよね。
はい。
傷が小さいとおっしゃいましたがどれぐらいの傷でございましょうか?この絵にありますようにここがみぞおちになってますがみぞおちからおへそまで約25センチぐらいの傷小さくても20センチぐらいの傷を作って手術をしますが腹くう鏡の場合は1センチから5ミリの孔をここにありますように5つ5か所開けて手術をするのでだいぶ傷の大きさは変わります。
やる事は開腹手術と同じという事なんですね。
全くおなかの中で開腹手術と同じ事をやってますので手術としては同じクオリティーという事になります。
メリットについて見てきましたがデメリットというのもあるんですか?直接手で手術する訳ではないので手術時間が長くかかったりあとは高い技術が必要になると。
非常に難しい手術であるという事があります。
医師の高い技術という事ですがそれを知る目安はございますか?腹くう鏡の技術認定医という資格があって内視鏡外科学会という学会が認定する資格なんですがこの資格を持ってるか持ってないかという事が非常に重要なポイントかと思います。
その技術認定医の資格を持っている医師の下で手術をした方がよいという事になりますね。
できたらその方がいいかと思います。
そういったドクターがどこにいるのかという事はどうやって調べればいいんですか?内視鏡外科学会のホームページを見ますとそこで調べる事はできるのでそこをご覧になるといいかと思います。
分かりました。
それではお話を進めていくにあたってそもそも胃はどういう働きをしてるのかというところをちょっと押さえておきましょう。
久田さん。
はい。
ではこちらで見ていきましょう。
胃は食べ物を蓄える袋のような臓器です。
そして食べ物を胃酸でペースト状にして少しずつ十二指腸へ送り出す働きをしています。
こうした胃の働きをスムーズに行う上で大切なのが噴門と呼ばれる胃の入り口と幽門と呼ばれる出口です。
胃に食べ物が入ってきますとこの噴門はギュッと締まって食べ物や胃酸が食道に逆流するのを防ぐ働きをします。
一方こちらの幽門は胃にたまった食べ物がいっぺんに十二指腸に流れ込まないように調節したり十二指腸からの逆流を防いだりする働きをしています。
更に胃の上の方この部分からは食欲を刺激したり味覚に関係するグレリンというホルモンが出るんです。
このホルモンの働きによってただ食べるだけではなく私たちはおいしく食べる事ができるんです。
大切な働きをしてくれてる胃なんですがしかし手術で取らなきゃいけないという事になった場合どういう方法が今とられているんですか?一般的に標準手術というのはここに例えばがんがありますと胃の下2/3をこのように切り取って更に周りのリンパ節を切り取ると。
廓清といいますがリンパ節を取るという手術が標準的です。
更にがんが大きかったりしますと胃全摘といって胃を全部取ってしまうという手術も必要になります。
このように胃を全部取ってしまうとどんな事が起こりますか?胃を取りますと例えば噴門を取ると食道への逆流先ほどご説明ありましたが胸焼けしたり高齢者では肺炎になってしまいます。
胃酸とかそういったものを肺に吸い込んで肺炎になってしまって致命的になってしまったり…。
こういう逆流ですね。
あと上部が無くなるという事でここには先ほどご説明ありましたグレリンといったホルモンが分泌されますので食欲不振や味覚異常そしてごはんが楽しくないもしくはおいしくないといった事になってしまいます。
次に幽門という場所です。
胃の出口なんですがこれも非常に重要な場所で胃にたまったごはんをゆっくりゆっくり腸に運ぶという弁の役割をしてるんですがこの弁が無くなってしまいますとここから一気にごはんが小腸もしくは十二指腸に墜落する症状という事が起きます。
これはあたかもトラックもしくはダンプカーが砂利を落とすがごとくごはんが小腸に落ちるのでダンピング症候群というんです。
この言葉ですね。
そういった事によってこれらの症状例えば下痢とかめまいとか腹痛そういったものが起きたり冷や汗かいたりしばらくしてから低血糖になってバタンと倒れてしまう気を失うといった事もあるんです。
非常に危険です。
一気に食べ物がドサッとここに入り込むというようなイメージで…?はい。
そういう事でこれが起こる訳ですね。
やはり胃を全摘しますとこういったさまざまな影響が出てしまうという事でできれば全摘したくないと思いますが避ける方法はないのでしょうか?早期胃がんの場合で転移のリスクが低い場合に限るんですが例えばこちらの方に早期がんがあったとします。
その早期がんがあると胃全摘だろうかというふうに考える訳ですが胃全摘ではなくて胃のほんの一部分この上部の部分だけでも残そうかという事を計画する手術方法があります。
この方法は胃亜全摘という名前になるんですがちょうどこの部分を残す事によって非常にいい事が起きます。
例えばこれは術前にここの部分を切ると計画してこちらは術後の写真なんですがちょっとお分かりになりにくいかと思うんですがここに椎骨という背骨があってこれは大体5×3センチのブロックみたいなものになっていて…。
それでここに残っているこの部分。
これが胃なんですが僅か5×3センチよりも小さいですよね。
ギョーザの大きさぐらいしか残ってないんですよ。
このちっちゃな胃が大事な役割を示すんです。
これが残っている事で先ほどの食欲とか…?食欲とかおいしさ食を楽しむような事ができるようになるという訳です。
たったこれだけしか残っていないのに…。
この方は手術のあとの食事はどういう状況になったんですか?これは入院中の食事量を100%つまり入院食を100%としますと胃を全部取ってしまうと大体退院が決定するのが8日目ぐらいなんですが8日目には約7割の食事しかとれないでおうちにお帰りになられるという事になります。
こちらの…。
胃全摘です。
紫の線になりますが。
ただ胃を少し残す亜全摘という術式では8日目には約9割もしくは9割以上の食事を食べてお帰りになると。
だいぶ違う訳です。
大きな差ですね。
では続いて胃の出口の方ですが幽門の機能を残すという事はできないのでしょうか?胃の出口も非常に重要なのでできれば残してあげたいんですが限られた人にしか残せないんです。
通常はこのように胃の下2/3を切り取る手術と先ほど説明しましたがこのように幽門を残すという手術の場合は病変がこのように胃のど真ん中にある事そして早期胃がんである事という事が必要になるんですがこの胃の出口を残す事によって先ほどご説明したダンピング症候群が最小限に抑えられるというか起こりにくくなります。
この手法ですと食生活はその後どうなりますか?退院した場合約1年もすればほとんど術前と変わらない食事ができる人が多いですし中には「先生ダイエットしたいんだけど」と言って…。
…という事は太られた?はい。
そういう方も結構おられるんですよ。
大したもんですね。
やはりそうしますと胃の機能はできるだけ残したいと。
なるべく縮小で手術したいなというふうに思いますよね?そうですね。
誰しもがやっぱり胃の機能を残したいなと思うんですが必ずしも全ての病変が適用になる訳ではないので個々の病変をよくご確認されるためには専門医に確認して専門医に「この術式はできますか?」という事をしっかり確認してやられる事がいいかと思います。
それぞれのがんの状態がどういう状態かによってこれができるかできないかはやはり専門的な判断が必要だという事になりますよね。
そのとおりです。
それでは今日のお話ポイントをまとめて頂きましょう。
最後になりますがここにありますように機能と美容を残すような手術つまり美容は腹くう鏡手術とかロボット手術になりますがそういった手術がどんどんどんどん盛んになってきます。
そして先ほどから説明しておりました機能を残すような手術をできたら皆さんお受けになりたいと思いますが一番重要なのはこの命になります。
この命がなくては駄目なのでできたら機能美容の前に命を重要視して手術方法を選んで頂くという事が重要になります。
本当に自分のがんをしっかり治すために命を守るためにどういう手術方法が大事なのかという事をしっかりご相談しなきゃいけないという事ですね。
そうですね。
どうもありがとうございました。
(2人)ありがとうございました。
2015/02/11(水) 13:35〜13:50
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 胃がん 最新情報「治すための手術」[解][字]

胃がんの転移の可能性がある場合は手術で胃とリンパ節を切除する。最近、注目されているがんを確実に切除しつつ、できるだけ胃の大切な機能は残す手術方法について紹介。

詳細情報
番組内容
胃がんは確実に切除したいけれど、胃がなくなることへの不安は大きい。しかし、胃がんの転移があったり、転移の可能性がある場合は、手術で胃とリンパ節を切除する必要がある。最近、特に注目されているのが、従来より胃を切る範囲を小さくし、体の負担を減らし、術後の食生活まで考えた胃の機能を残す手術法だ。胃のどの部分を失ったらどんな不調が起こるのか、腹くう鏡手術と外科手術との違いも含め、胃がん手術の最前線を解説。
出演者
【講師】がん研有明病院 消化器外科胃担当部長…比企直樹,【キャスター】濱中博久,久田直子

ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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日本語(解説)
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